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オープン・ワールド  作者: 梯子
ワールド2
17/22

2-5

「こんなものを見つけた。あなたは今日からコレを解析して。」

 現在はヨーコの火を吐くメカニズムを研究し、それを他に活かす準備をしています。調べたところによると、やっぱり炎の燃え方があちらとは違うみたい。

「来るべき時はまだ来ない。私にはわかる。はい、コレ。」ガシャン。

 あー、せっかくの図面が…。

 設計は勿論だけど、用紙やインクは貴重品なのに。

 こんな土に塗れた機械で汚して。

 …って、これ!

「アンティキテラの機械。知ってる?」

「知ってるも何も! 時計じゃん! 超正確な、遺産レベルのものじゃん!」

「落ちてた。」

「落ちて!?」

「正確にはそれではないと思うわ。あれはオモテのものだし。だから、そうね。キテラの機械?」

「え!? や、でも! あ、でもそうか。」

 確かにあれはオモテのモノで、しかも厳重に保管されているものだ。こんなところに、しかもウラの世界に落ちているわけはない。

「でもなにかを記すものだと思うのよ。ここの模様とか。」

 時計でいう時刻を示す数字の場所に、数字ではない模様が彫られている。もしかしたら数字なのか、ウラの世界の。

「なんでそう思う?」

「勘。」

「勘!?」

「そう、勘。」

 ……。

 セレナって。

「セレナってたまにそういう、なんていうの天性の…。いや、いいや。」

 今日はざっくりモードらしい。

「これを解析して。」

「これ、を。」

「もちろん他のものもやって構わない。でも、できるだけこれを優先してくれる?」

「ん、…うん。わかった。」

 我ながら、あっさり引き受ける。

 興味はすごくあるし、引き受けない限り進まない。調査、開発は僕の仕事だ。

 それにしてもなんていうもの拾って来るんだよ。

「私じゃなく、ヨーコ。」

 ヨーコか。なんとなくわかるかも。

 あいつならこのレベルの発見は毎日してそうだ。

「そうそう。インク切れたからそれもお願い。」

 ……。

 ま、いいや。


 …。

 あ、ここ動くな。ここを押して…。

 …。あ。

 こっちが引っ込んだ。逆にこっちを押したら、やっぱそっちが出るか…。こっちも押せるし、そっちも出るな。連動して動いたり、動かなかったり。

 …。…。

 お、ずれた。ここは結構動くな。このまま限界までずらして。や、だめか。じゃあ、これを押しながら…。

 カコン。

 …。なんかはまった? さっきずらしたのが動かなくなったぞ。でもあれ? どうやって戻すんだ!? 全然びくともしないぞ!? わああああ、どうしよう。

 …。そっか。ここを押して引っ込めればいいんだな。段々複雑になってきたぞ。これは記号とか数字とか振っておかないと元に戻せなくなるな。あのインクなら植物性だし、多分洗えば消えるだろ。

 …。インクないんだっけ。

 精製しますか。


 機織小屋では今日もカタンカタンと、イデアが布作りに精を出している。

 そのお陰でボク達の服は1週間に1着ずつ増えている。5人いるわけだから1週間で5着。性別も個体差も関係なく、あらゆるものを作ってくれている。

 何が増えるかはイデア任せで、こちらからの要望は基本的に通らない。(要望を聞くことは聞いてくれるが、自分の作りたい服の後になるので、結果として通らない。)ボクとヨーコは2週に1回は半ズボンが増える。

 この機織小屋の裏に、マリによって採取されたインクの材料になる植物が集められている。

 よくこんなに集めたな…。コレ全部インクにしたら相当の量になるけど、これをボク一人で…。

 インクの製造工程×材料のストック量×(1/製作に関わる人数)=途方もない。

 はぁ…。

 ちょっと考えるのを休もう。

 …。

 カタン。

 ……。

 カタンカタン。

 ボクはこの音が好きだ。

 素朴で、安心できる。心のささくれが取れていく気がする。

 織機開発の思わぬ副産物だ。

 イデアが毎日機を織ってくれているお陰で、いつでも聞くことができるし。

 カタン。

 カタンカタン…。

 …。

 ふぁ…。

 インクどうしよ…。

 キテラの機械…。

 うとうと。

 …。

 すー、すー。


「あら~、こんなとこで寝てる~。食べちゃうぞ~。」

「…。反応なし。お疲れだ~。」

「うんしょ。となり、しつれいしま~す…。」

 

 さむッ。

 もう日が落ちかけている。

 どんだけ寝てたんだ、ボク。

「あ、いたいた。ジジ、メシだぞ。」

 マリ。

「ありがと。あ、そうだ。マリ、頼みたいことがあるんだけど。」

「なんだ?」

「インクをボクの代わりに精製してほしいんだけど…。」

「セイセイ?」

「作って欲しいんだよ。」

「そういうことか。わかった。」

「ほんと? 助かった~。ボク一人じゃ色々手が回らなくなってきててさ。」

「確かにこの頃忙しそうだな。でも、オレはその、セイセイの仕方がわからない。」

「うん、ちゃんとやり方教える。最初はボクと一緒にやってくれるだけでいいよ。」

「そうか。明日からやるか?」

「うん、おねがいしたいな。」

「よし。じゃあ、お前は今日はメシ食って寝ろ。今日はその方がいい。」

「え? 大丈夫だよ。さっきまで寝てたし。」

「オレだけじゃない、みんな同じ意見だ。みんな心配してる。」

 みんな。そっか、心配してくれてるのか。

 無理、してたのかな。

 体力的にはそうかも。オモテにいたときとは比べ物にならないほど働いている。

 しかも無給で。

 考えられないことだ。

「今日はハンモックを使ってもいいって言ってる。」

「え!? ハンモックいいの!?」

 なんということだ。

今日は何かの日か? 誰かの誕生日か?

 ひゃっはー! ハンモック解禁だー!! 

「だから今日は食って寝ろ。いいな。」

 ぐぬぬ。

 ま、まあそこまで言うならしかたない。

 ハンモックを使ってやるか。

 うわぁ、何しよ。何しよ。

 揺らしてもらおうかな。揺らしてもらっちゃおうかな。

 ぐふふ。

 今日は休もう! 記念すべきハンモックデーなのだから!


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