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さて、どうしたものか。
最初に着いた時は驚いた。まさかゲートをくぐった先が野原の、見渡す限りの草原のど真ん中だとは。そもそも、世界の分かれ目、繋ぎ目が石造りのシンプルな門だったとは。
それから何日も何日も歩いて、食料も水も尽きかけて、ようやく草原の端っこを見つけて。
木の一本一本が、幹が太く背が高い。どちらも表の世界でみたものの、3倍くらいあるんじゃないだろうか。
といっても、表の世界で全ての樹木を見たわけではないし、種類によってもそれぞれサイズは異なるだろうが、行動範囲内でよく見かけていた木の一番多く見かけた種類の、さらに最も多く見かけたサイズと比較して、だ。
つまり、大きくて太い。
木を多く、頻繁に扱う仕事をしていたので、いや仕事というほどのことはしていないか、基本的に事務作業だ。
今思い出しても仕方ないか。それが嫌でここに来たんだった。
ともかく、木が群生しているということは水もあるだろう。そして、折れたり腐ったり、もしくは樹上をねぐらにしている動物もたくさんいるだろう。分からないことは多いが、食べられる動物もいるはずだ。きっと見たこともない生き物なのだろう。
なんにせよ、先ずは水を確保しなくては。
森が深いからか、人間が立ち入った形跡があまりないからなのか、歩く度に小動物を多く見かける。
リス、ネズミ、名前はよくはわからないがカラフルな鳥。ディテールは違うのかもしれないけど、オモテの世界で見ることが出来る生き物と大きな違いはないようだ。
なんかもっと、リザードマンとか、ドラゴンとか。そういうのに期待していなかったわけじゃない。鉢合わせてもなす術ないけど。
そういえば、一応護身用に我が家に代々伝わる脇差をくすねてきた。ドスともいう。鞘は漆で黒く塗られ、それに重ねた金の装飾模様が、なんとも由緒正しい…、正しい感がある…、なんていうかいい感じだ。
もっとも、武器を装備したからといって、特別武芸に秀でているでもなく、覚醒したスキルもないので、もっぱら果物ナイフ代わりに使っている。
といっても、果物は傷む前に食べてしまったし(それでも可能な限り、少しずつ食べた)、ジャーキーなどの類も切り分けるほど大きいものはもうないし。
背に腹は変えられないどいうのだろうか。もっと追い詰められたときの言葉のような気がする。しかも、少し用法が間違っている気がする。まぁ、プレ背に腹ということで、ネズミなどの小動物を捕らえる方法を考えよう。この世界に来たんだ、ネズミを食うくらいの覚悟はあるさ。獰猛な動物がいない森で良かった。
そう思った矢先にこれだ。
絶体絶命だ。
状況は絶体絶命だ。
もうすこし詳しく説明すると、狼が僕を取り囲んでいる。取り囲んでいるということはつまり、4匹いる。涎を垂らしている。
残りのジャーキーで見逃して、くれなそうだ。残念だな。
僕の物語は冒頭で終了のようだ。
せめて一対一なら、ギリ負ける。
どちらにせよ、負ける。
炎の揺らめきを目の端が捕らえた。




