プロローグ
人生が道だとするならば、その道が途切れた僕は一度死んだことになるのでしょうか?
その道の幅や凹凸を再現するものが記憶だとするならば、はじめからの一切を持っていない僕は、しかし死んではいないということなのかな?
どちらにせよ、僕はいま呼吸をしているのだから死に続けてはいないみたい。
記憶を失くしはしましたが、言葉をなくすことがなくて本当に良かったです。そのあたりは神か設定に感謝せよ、だそうです。
でも、記憶喪失がデメリットに直結することは多くはなかったんじゃないかな?
聞いた話ですが、この世界は発見されたばかりで、まだ見つかっていないモノがたくさんあるらしい。見るもの全てが新しいのです。
明らかになっていない場所も、見つけていない宝物もたくさんある世界。
まっさらな状態で望むことのできる僕を、下手に今までの常識と比較しないことがうらやましいという人もいます。
みんなスタートは一緒です。
オモテから来た人達はこの世界のことを「ウラの世界」とか「開かれた世界」とか呼びます。
ともかく、ここは新しい世界。
これは僕たちの、この世界でのお話。




