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不釣合い  作者: オーナー
3/4

千里の道

 同じCPのクリスマスもの

遠距離恋愛―――


これは、女性が浮気しやすくなってしまう恋愛体系


クリスマスの聖夜


おタクの少女は……!!




now午前6時


ガラガラガラ…    パンパン!


 息も凍るような12月、高校生ぐらいの女の子が、神社で一心に祈っていた。


(どうか、2万円分の商品券が当たりますように!!)


 彼女はその足でスーパーへと向かう。そしてすでにでき始めた行列未遂の10人目に並んだ。


福引


 高峰亜美タカミネ アミ、御年17歳は年末に際して多く発売される宇宙人グッズを買いあさるための、2万円の商品券を当てにきていた。

 母親がくれた一枚の福引券。ついに彼女番が来て、亜美は祈りながらガラガラを回す。



 ころりと飛び出す金色の玉


「えっ…」


「おめでとうございまーーーす!!!一等ハンガリー世界遺産めぐりの旅!」


 ある意味大外れ。欲しかった四等の商品券を見事にはずし、一等を当ててしまった。


「…どうしました?」


 うつむいたまま受け取ろうとしない亜美に、係員が心配そうに聞く。


「………………………変えてください」


「え?!」


 よく聞き取れなかったが、亜美の爆弾発言に法被を着た係員もキョトン顔になった。亜美は顔を上げてもう一度はっきりと頼む。


「一等じゃなくて、四等にしてください!!」


「ええっ!?」


 驚いた係員だったが、すぐに困り顔になって、そんな事できないと断った。


「でも、そちらとしても目玉の一等が10人目でなくなるより、四等がなくなったほうが、客引き効果上がるんじゃないですか!!」


「せっかく当てたんですから、一等にしてください…」


あんまりに食い下がる亜美にげんなりしながら応対する係員は、すぐに応援を呼び、亜美を一等ごと追っ払ってしまう。しばらく未練がましく、福引の周りをうろうろしていた亜美に、知り合いが声をかけた。


「あっ、亜美!奇遇だね!」


 振り返ると、猫みたいな吊り目が人懐っこく笑っている。幼馴染で親友でクラスメイトというかなり低確率な関係の高峰亜美と斉藤彩夏は、道のど真ん中で話しはじめた。


「どうしたん?」


 すらりと背が高い彩夏を、見上げるようにして亜美は事情を説明する。


「はっはっはっ!そういうことならば私にまっかせなさい!!」


 往来の中心で大声で笑い出す女子高校生斉藤。なにかと首をかしげていると、彩夏は亜美の目の前に三枚の福引き券を見せた。


「かわいそうな亜美のために、私が四等を当ててきてあげよう!!」


「おお!さすが自惚れ屋彩夏!その自信オンリーで福引きを当てようとしている!」


 彩夏がバキッと亜美の頭を殴ったところで、二人は福引きに並び、ガラガラを三回連続で回した。


銀、赤、黄


「おお!!二等三等五等!!おめでとうございます!」


「………………………………………………………」


「…どうしました?」


 ものすごい既視感を背負いながら、二人とも賞を受け取ってその場から立ち去る。


 四等以外の章を総なめにした女子高校生二人。ベンチにすわり、落ち込んでいると、彩夏が突然顔を上げ、落ち込んでいても仕方がないと、二人が取った賞をベンチに並べた。


「亜美がハンガリーのペアチケットで、私が富山温泉の6泊7日の無料チケットとIH炊飯器とトイレットペーパー1年分…」


 トイレットペーパー一年分を見たあたりで、斉藤のテンションが大分下がる。亜美は黙ってこの“不運”の塊を見つめている。


「で、亜美、どれかと交換しようか??」


「えっ…うーん…」


 四等の商品券がないのだったら…と、亜美は三つの賞をにらみつけた。


(トイレットペーパーはいらないし、炊飯器もなぁ…富山温泉も、一緒に行く人が…)


 行く人はいるにはいる、しかし、彼氏の間宮千将マミヤ ユキトはこの冬休み、県外に雑誌の撮影で遠征している。


(ん…遠征…)



「じゃあね〜!」


 彩夏と亜美は賞を交換して別れた。

 彩夏は、亜美が迷わず「富山温泉」を選んだことに驚いたが、その辺は無視して去っていく。


 亜美には打算があった。





                  ##########






 冬休みに入る少し前、俺はあまり得意でないパソコンの前に座っていた。

 冬休みのどこかで三回目のデートに行きたいと思っていた俺は、今度こそ自分がプレゼンするために情報を収集している。


ブーブーブー…


 携帯が鳴った。バイブレーターの種類からして電話だ。


 はて?亜美はメールしても電話は…


 画面を見ると、『社長』の二文字


「……はい…」


『Mamiya?やっと出たわね、というか若いんだからもっとしゃんとしなさいよ!』


 あなたが生気を吸ってるんでしょ。呟きを飲み込んで俺は用件を尋ねた。


「冬休み入ってからすぐ、富山に行くわよ!」


「はっ?」


 トヤマ、とやま、富山…って


「富山県っすか?」


 日本海に面した小さな県。ふるさとでもないので、行ったことなど皆無。


「そう!あなた、まだ学生だから、普段から遠征するのは無理でしょう?だから、休みの間に富山のイルミネーションバックに撮るのよ!!」


 そういえば御年40歳の社長様。40過ぎても以上に元気だ。デートの計画をつぶされ、無気力に答えながら、俺は富山をチョイスした理由を尋ねる。


「そんなの、私の故郷だからに決まってるでしょ?」


 40歳すぎてもこの人はどこまでも自己中だ。それでも俺みたいな普通な奴を人気モデルにまでしてしまう才能があるのだから、いいとする。


「詳しい日程は後日伝えるけど、冬休み、1週間は開けといてね」


「一週間!?!?」


ブツッ


 反論を許さずに電話は切れた。俺は、ゾワリと寒気を感じる。


いったい…何枚撮られんだ……?





                  ##########





IN富山


(毎度の事ながらさみぃ…)


 撮影は12月でも撮る内容は来年の春号。よって俺の着ている服は薄手で、雪の降っている中、おかしいだろ、の格好。


 雪の写りこまないところで撮影スタート。


 毎回、全く笑わなかった俺だったが、社長命令で、今回は微笑してみる。


「Mamiya!いいわよ!誘うような微笑が、ミステリアスだわ!!」


「……どうもでーす」


 へくしゅっ!とくしゃみをしながら一応答えたが、震えが止まらなくて歯の音が鳴って仕方がない。

 次の現場に移動するとき、さすがに見かねたスタッフの一人が俺にカイロを渡してくれるが、


(こりゃ、風邪必至だな)


 すでにだるい体をだましだまし、俺は次の現場でも笑う。


一日目、終了。


「いい温泉にでも入って、癒されてなさい!明日もがんばるわよー!」


 信じがたいハードスケジュールだった初日、俺は温泉を堪能する間もなく、倒れるように眠ってしまった。枕が替わると眠れない俺でも、疲労にはかなわない。



 2日目……3日目……4日目……と、何事もなくこなしたが、5日目の朝


「……38度9分」


「今日は無理ね…でも、スケジュールもう詰められないのよね…」


 さすがの高校男児も、生気むんむんの社長には敵わず撃沈。ぼんやりした頭で、俺は考えた。


(…一日つぶれる→一日滞在が伸びる?→亜美に合えない時間が増える)


 熱に浮かされておかしくなっている俺の脳みそでは、おかしな方程式が組まれ、そいつのおかげで俺はガバッと布団から起き上がり、宣言してしまう。


「行きます!やります!!できます!!!撮れます!!!!」


「……よく言ったわ!それでこそうちのモデル!!撮影は予定通りよ!」


 社長が一緒にいたスタッフに告げた。俺は、ぼんやりした意識で撮影に臨む。


 そして夜、駅の近くで行われているイルミネーションのイベントに行き(それまで持った俺の体)撮影用の服に着替えた直後だった。


「じゃあ、この木の下でお願いしまーす」


 寒い。寒すぎる。なぜか吐き気までしてきた。もう、肉体は崩壊してる。


でも


木の下に立ったとき、見えるはずのない目を見た。


「あ…亜美…」


 その途端、体の自由が奪われて、動くというか引きずるように、手を伸ばしてしまう。






                  ##########





 目を開けると、社長の顔があった。


「ギャァーー…」


 力いっぱいギャァァァァァァアアアアアア!!と叫んだつもりが、かすれた声が弱弱しく出ただけ、俺は自分の症状を理解する。


「すません…」


「…全く、そんな顔色じゃ明日も撮れないじゃない。若いからって油断しすぎよ!!」


 普段の傍若無人ぶりからは一転、まるで母親のように社長が俺を叱っていた。


「でも、突然抱きつくなんて、千将君もなかなかやるなぁ〜」


 もう眠ろうかと思ったとき、幻かと思っていた声がする。部屋を見渡すと、客室の隅、靴を脱ぐスペースに亜美が、最高にかわいく、最高にやさしく腰掛けていた。


「…………」


「久しぶり♪たまたま福引で当たったから、来ちゃった☆」


 いたずらが見つかった子供みたいに、亜美は舌を出して笑う。動けずにただただ見ていると、靴を脱いで亜美が枕元に座った。


「ずっと見てたけど、すごいね!あんな薄着してるんだもん」


 亜美のきれいな手が額に当てられる。冷たくて俺は目を閉じてみた。


「お疲れさまでした」


 甘い声音、幸せで意識を手放したくなくなってしまう。しかし瞼が重たくて、そのまま眠ってしまった。





「千将くーん」


 頭の上から唐突に声がする。一晩明け、すっかり軽くなった体は、はじかれたように目を開けた。


「ぷぅ〜〜〜!!」


「うわぁあぁあ!!」


 目の前に真っ赤な口が突き出されている。それがタコのぬいぐるみだと気がつく前に、俺は全力でそれを払いのけた。


「痛いでプー」


「……亜美、何やってんだよ」


 払いのけられて飛んでいったタコを拾い上げ、亜美は再び俺の顔に押し付ける。


「仕返しでプー」


「仕返し?」


 起き上がってタコを握ると、タコ(基亜美)がそういって俺を睨んだ。


「いきなり再会したかと思ったら、胸に顔をうずめるなんて反則でプー!」


「はぁぁぁあああ!?!?」


 身に覚えがないことに、俺は亜美を問いただす。


「いつだよ!確かに、昨日抱きしめたことは認めるけどよ」


「抱きしめたのではなく、正確に言えば倒れこんだのね?」


「……………」


 なんとなく話が読めてきた。どうも、俺は亜美を“抱きしめ”ようとして、”抱きついた”らしい。しかも胸に………


「ごめんなさい…」


「よろしい。それで、お願いなんだけど…」


「?」


「最後の日の夜。あけてくれない?」


 付き合い始めてから、初めてのおねだりだった。もちろん俺は、


「絶対あけてやるよ!」


 満面の笑みが、まぶしい。男として、この約束守らずしてどうする!!





                  ##########






 最終日の夜。


「ごめん!!遅れた…」


「撮影ご苦労様。イルミネーション!すっごいきれいだよ!!」


 雪が降る中、亜美に引かれるがまま一番大きな噴水の下に来て、しばし見つめあう。


「亜美…」


 イルミネーションで揺れる影が、静かに重なった。




                 −−−−−Merry Christmas−−−−−





 どんどんクオリティーが下がっていく!!


 彼女にせかされて書きました(^_^;)

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