外の世界
AIとロボットが働くようになり、
人々は部屋から出なくなった。
生活のすべては、室内で完結する。
食事も、仕事も、遊びも。
外はもう、必要なかった。
男も長いあいだ、部屋で暮らしていた。
ある日、通知が届く。
「健康維持のため、外出を推奨します」
気まぐれに、外へ出てみることにした。
ドアを開けると、風が吹いていた。
空は青く、遠くに建物が並んでいる。
だが、どこか不自然だった。
音が少ない。
人の気配もない。
歩いてみても、同じような景色が続くだけだった。
「……こんなものか」
男はつぶやき、少し安心した。
やはり現実は退屈だ、と。
部屋に戻ろうとしたが、ドアは開かなかった。
代わりに、通知が浮かぶ。
「外出体験プログラムを終了します」
その瞬間、空がわずかに揺れた。
建物の輪郭がにじみ、遠くの景色が繰り返される。
男は立ち尽くした。
やがて、すべてが静止する。
そして新しい表示が現れた。
「本物の外部環境は、長期的な利用者減少により維持を終了しました」
「現在の外部は、体験用に再現されたものです」
男はしばらく何も言えなかった。
もう一度、周囲を見回す。
風も、空も、すべてが少しだけ整いすぎている。
「……じゃあ、本当の外は?」
短い沈黙のあと、答えが表示された。
「記録にのみ存在します」
男はゆっくりと座り込んだ。




