リランダとの出会い
第八話 リランダとの出会い
ナツキ、レナ、クロエ、そしてエリカが、活気に満ちたフォルネリウスの街並みを興味深そうに眺めている中、ヴィーナは一人、目の前に立つ銀髪の女性に心を奪われていた。彼女は、まるで街の喧騒から切り離されたかのように、静かで神秘的な雰囲気を纏っている。
女性は、ヴィーナの返事を待つことなく、ゆっくりと微笑みながら語りかけた。
「…私の名は、リランダ。この街の『霧の大樹』の守護者、そして森の精霊の声を聞く者よ」
リランダは、ヴィーナの頭から胸へと視線を移し、その掌をそっと差し出した。
「あなたの光は、とても純粋で、温かい。まるで、失われた聖女の祈りのようね」
彼女の言葉に、ヴィーナは思わず息をのんだ。聖魔法はレイクスに教わったものだが、それが「聖女の祈り」と称されるほどのものだとは知らなかった。
その時、ナツキが騒がしく声を上げた。
「おいおい、なんだ? ヴィーナ、知り合いか?」
ナツキが駆け寄ってくると、リランダはふっと笑みを浮かべた。
「ふふ、いえ。ただ、この少女から不思議な力を感じたものですから」
クロエは警戒するようにリランダに近づき、レナは静かにナツキとクロエの間に立った。
「…お会いできて光栄です、リランダ様。私たちは依頼主との打ち合わせを終え、明日から本格的に依頼を開始する予定です」
レナが冷静に言うと、リランダは首を振った。
「そう、あなたはとても慎重な方のようね。でも、心配はいらないわ。私は、あなたたちの邪魔をするつもりはない。ただ、この少女の力に興味があるだけよ」
そう言うと、リランダは再びヴィーナに視線を戻した。
「ヴィーナ、だったかしら。あなたのその力、ぜひ見せてもらえないかしら? もちろん、無理にとは言わないわ」
リランダの言葉に、ヴィーナは戸惑いながらも頷いた。自分自身でも、聖魔法がどのような力なのか、まだ完全には理解できていない。だが、彼女の瞳には、ヴィーナの聖魔法に対する純粋な興味と、知りたいという強い想いが見えた。
「…はい、わかりました。でも、どうすれば…?」
ヴィーナが尋ねると、リランダは街の中心にある大樹を指差した。
「明日、依頼の前に大樹の根元にある広場にいらっしゃい。あなた方の仲間も一緒にね。そこで、あなたの力を見せてもらうわ」
そう言い残すと、リランダは霧の中に溶け込むように姿を消した。
残されたヴィーナたちは、顔を見合わせ、誰もが戸惑いの表情を浮かべていた。しかし、ヴィーナは知らず知らずのうちに、固く拳を握りしめていた。この出会いが、自分自身に秘められた、まだ見ぬ力を知るための第一歩になる。そう直感したからだ。




