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レイクス戦記  作者: ゆう
ゴブリンの襲来
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秘密の打ち明け話

秘密の打ち明け話


リュミナの街路は白石の壁が光を返し、窓辺に咲いた花々が彩りを添えていた。

参道には巡礼者と行商人が行き交い、祈りと笑いが混ざる活気に満ちている。



「ねぇ、ヴィーナ」

セリスが隣で微笑む。

「今日が初めてなのに、なんだかずっと前から知ってる気がする」


「……わかる。私もそう」

ヴィーナは頬を緩めて答える。

「一緒に歩いてると、不思議と安心するんだ」


二人は露店で並んで焼き菓子を選び、笑い合いながら街を巡った。

まるで昔からの友達のように自然に。



「……ねえ、ヴィーナ。内緒の話、してもいい?」

セリスが足を止め、少し赤い顔で問いかけた。


「うん、もちろん」


「私、好きな人がいるの」


「ほんと!? わぁ……素敵だね!」

ヴィーナが思わず声を弾ませる。


セリスは両手を胸に当て、恥じらいながら続けた。

「もし一緒になれたらいいなって思ってる。

 だから……その人のお屋敷で暮らしてるの」



「えぇぇ!?」

エリカが両手で頬を押さえる。

「すごい! セリスちゃんの恋バナ!」


「おいおい、急に爆弾投下だな」

ナツキが肩をすくめ、レナは「……青春ね」と呟く。


クロエは短く「いいことだ」と言い、

ヴィーナは目を輝かせてセリスの手を握った。

「セリスがそう思えるなら、きっとその人も大事にしてくれるよ!」


リュミナの広場は、白石の噴水と色鮮やかな花々で彩られていた。

セリスが通るたびに、子どもたちが「セリスお姉ちゃん!」と駆け寄り、笑顔で手を振る。


「すごいね、セリス」

ヴィーナは目を丸くした。

「みんなに慕われてるんだ」


「ただ、一緒に遊んだり、勉強を手伝ったりしてるだけだよ」

セリスは照れくさそうに笑う。



後ろで仲間たちが小声で囁く。


「ほんとに姉妹みたいだな」ナツキ。

「……ヴィーナがあんな顔するの、珍しいわね」レナ。

「見ててほっこりする」エリカ。

クロエは無言で頷くだけ。


街の花壇の前で立ち止まったセリスが、当たり前のように口にした。


「私、ずっとヴァルトニアのお屋敷で暮らしてるの。」



「……えっ!?」

ヴィーナは足を止め、驚きの声をあげた。

「この国にヴァルトニアのお屋敷があるの?」


「ちょ、ちょっと待て!」

ナツキが真っ先に声を張り上げる。

「それってつまり……セリス、お前は“あのヴァルトニア”に住んでるってことか!?」


「えぇぇ!? 本当に!?」

エリカは飛び上がらんばかりに叫び、両手をばたばたさせる。

「すごい……セリスちゃん、そんなすごい所に!?」


レナとクロエは一瞬黙り込み、静かに言葉を落とす。

「……事実ならただ事じゃないわ」



セリスはきょとんとした笑みを浮かべ、小首を傾げる。

「え? 普通のことじゃないの?」


仲間たちは一斉に頭を抱え、場の空気は一気に混乱へと傾いた。


大聖堂を出て少し歩いた後。

仲間たちは露店で買い物をすると言い残し、ヴィーナとセリスを二人きりにしてくれた。


街の小さな庭園。

白いベンチに並んで腰を下ろすと、陽光に照らされた花々の香りが優しく風に乗った。



「さっきは……ごめんね。みんな、すごく驚いてたから」

ヴィーナが頬を赤らめながら切り出す。


セリスはくすりと笑い、首を振った。

「大丈夫。私にとっては本当に“普通”だから。

 その人のお屋敷で過ごすのが、当たり前の日常なんだもの」


「……普通、か」

ヴィーナは少し目を伏せた。

「私なんて……ヴァルトニアのこと、名前しか知らなかった。

 お父さんも、ずっと帰ってなかったし」



セリスは小さく髪飾りを撫で、柔らかく微笑んだ。

「でも……その人と一緒にいるとね、不思議と安心するの。

 そばにいるだけで、心が穏やかになる。

 ……だから“好き”って言葉しか浮かばなかったの」


「……!」

ヴィーナは一瞬言葉を失った。

(やっぱり……セリスにとって“その人”は……)



けれど次の瞬間、セリスが照れくさそうに笑いかけてきた。

「ヴィーナもきっと、その人に守られてきたんだよね。

 だから……私たち、似てるのかもしれない」


「……そうだね」

ヴィーナの胸にじんわりと温かさが広がる。

「私、お父さんに拾われて……ずっと、溺愛されてきたから」


「ふふ、いいなぁ」

セリスは小さく身を寄せ、肩を軽く触れさせてきた。

「大切にされるのって、すごく幸せなことだよね」



二人は花々の香りに包まれながら、ただ並んで笑い合った。

まるで光そのものが二人を抱きしめているように、穏やかで甘い時間が流れていった。


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