光の街を目指して
光の街を目指して
砦を発つ朝。
空気はひりつくように冷たく、兵士たちの顔は疲労と緊張に覆われていた。
その中で、ヴィーナたち一行はゼノの護衛を受け、街道へと馬車を進めていた。
◇
「……リュミナ、か」
ナツキが地図を眺めながら呟く。
「名前は聞いたことあるけど、行くのは初めてだな」
「光の街。大聖堂があり、学問と祈りの中心地」
レナが答える。
「でも今は前線に近い。安全とは言えないわ」
「それでも行くしかない」
クロエは冷静に言った。
「情報が集まるのはそこだから」
◇
エリカは少し不安そうに馬車の窓から外を見た。
「ゴブリンが二十万も動いてるのに……本当に大丈夫かな」
ゼノの低い声が後ろから響いた。
「大丈夫だ。私がいる」
短く、揺るぎのない一言。
その響きに、エリカの肩から少し力が抜けた。
◇
ヴィーナは静かに空を仰ぐ。
淡い陽光が金の髪を照らし、胸元のローブの裾が風に揺れた。
――アルディアを覆う戦乱。
父の名を巡る謎。
そして、自分の進むべき道。
すべての答えが、まだ遠い。
それでも今、彼女は仲間たちと共に歩いている。
◇
こうして一行は、光と祈りの街――リュミナを目指し、新たな旅路を進み始めた。
そこには、予想もしない出会いと、試練が待っている。
昼下がり、街道を抜けた一行の視界に、白い光を放つ街が広がった。
「……あれが、リュミナ」
ゼノが馬上で低く告げる。
◇
街は丘の上に築かれ、白石の城壁が陽光を反射して輝いていた。
高く伸びる尖塔は空に向かって光を放ち、その根元には大聖堂の巨大なドームがそびえている。
城壁の外周には運河が巡り、水面がきらめきながら街を囲んでいた。
「わぁ……きれい……!」
エリカが窓から身を乗り出し、目を輝かせる。
「これが“光の街”の由来か」
ナツキは目を細める。
「白い石と、光に照らされる水……まるで別の世界だな」
レナは冷静に観察しながらも、声にわずかな敬意をにじませた。
「城壁の厚みも十分。砦というより聖域ね」
クロエは小さく呟く。
「……祈りと戦が同じ場所に並んでいる」
◇
門前には巡礼者や行商人が列をなし、衛兵が一人ひとりを検めていた。
街へ入る者は皆、自然と背筋を伸ばす。
光に照らされた城門の前では、粗野な言葉すら控えられるようだった。
ゼノが馬を進め、門兵に声をかける。
「マルターレス家の客人を通す」
兵たちは敬礼し、すぐに道を開いた。
◇
街に足を踏み入れた瞬間、ヴィーナは思わず息を呑んだ。
白石の街路は陽光を受けて淡く輝き、両脇には花を飾る家々が整然と並んでいる。
鐘楼の音が風に乗り、遠くから祈りの歌声が響いてきた。
「……本当に、光の街だ……」
ヴィーナの声は自然と震えていた。
仲間たちも、それぞれに言葉を失いながら、その美しさを見渡していた。
◇
こうして一行は、祈りと光に包まれたリュミナの街へ足を踏み入れた。
しかし、この美しい街の奥にも――新たな波乱が潜んでいることを、まだ誰も知らなかった。




