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レイクス戦記  作者: ゆう
戦乱の幕開け
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新たなる報せ

新たなる報せ


砦に束の間の安堵が漂い始めた、その瞬間だった。

伝令の蹄音が石畳を響かせ、泥まみれの兵が駆け込んでくる。


「報告! ゴブリン領より二十万の軍勢が――アルディアへ侵攻中!」


広間が一気に凍りついた。


「に、二十万……!?」

「桁が違う……どうやって止めるんだ……」

「人の数をはるかに超えているぞ……!」


兵士たちは顔を青ざめさせ、互いにしがみつくように声を荒げた。



「二十万……」

ナツキは背筋を壁に預け、声を失う。

「八千どころじゃねえ……国ごと押し潰される規模じゃねえか」


レナは唇を噛みしめる。

「これは“侵略”じゃなくて“殲滅”。戦略そのものが変わるわ」


エリカは怯え、ヴィーナの腕に縋った。

「ゴブリンって……そんなに……」


クロエは低い声で言った。

「数だけで国を呑み込む軍勢……普通なら抗うすべはない」


ゼノは目を閉じ、短く言い放つ。

「……この国が生き残れるかは、上に立つ“絶対者”の裁断次第だ」


その言葉に、仲間たちは息を呑む。

ヴィーナの胸は大きく鳴った。

父の名と重なるその響き――

「ヴァルトニア」という言葉を、誰も軽々しく口にできない理由を、改めて思い知らされた。


砦に駆け込んだマルターレス騎士団の将校が声を張る。


「全軍に通達! 本拠アルカディアへ急ぎ帰還する!」


ざわめきが広がった。

「マルターレス騎士団まで戻るのか……?」

「国の心臓を守るためか……」



ゼノは黙って命を聞き、そして一行の前に立つ。


「……私は残ります」


「えっ!?」

ヴィーナが驚きの声を上げた。


「ゼノさん、それって……」

ナツキも目を見開く。


ゼノはまっすぐにヴィーナを見据えた。

「あなたを守る役目を、私は命じられています。

 本隊が戻ろうとも、その誓いは揺るがない」


「わ、わたしなんて……!」

ヴィーナは慌てて首を振る。


だがゼノは微動だにしなかった。

「マルターレス家の誓いにかけて、私はあなたを護る。それが私の戦場です」



「心強いわね」

レナが小さく笑い、

「……頼もしい」とクロエが続ける。


エリカはきらきらと目を輝かせた。

「ね、ヴィーナ! よかったね!」


「ちょ、ちょっと……! わたし、そんな特別じゃないから!」

真っ赤になって慌てるヴィーナを見て、皆が笑った。


ゼノだけは、静かに微笑んでいた。

その瞳に宿るのは誇りと覚悟。

――己が命を賭してでも、護るという不動の誓いだった。



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