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レイクス戦記  作者: ゆう
戦乱の幕開け
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灰燼の空を翔けて

灰燼の空を翔けて


夜明け前の空を、数頭のペガサスが翔けていた。

銀のたてがみを風に流し、白い翼を大きく広げる。

その背に跨る騎士たちは、皆、硬い表情を浮かべていた。


「本隊は二万と聞く……」

「八千が一夜にして消えた今、真実をこの目で確かめるのだ」


冷気を切り裂く蹄音が、空に響いた。



やがて視界の先に、広大な荒野が広がる。

本来なら整然と陣を敷く軍勢の旗が林立しているはずだった。


だが――そこにあったのは、黒く焦げた地表と、まだ燻る煙だけだった。


「な……に、これは……」

「軍はどこへ……?」


騎士の声は震えていた。

整然たる列も、陣幕も、旗もない。

ただ、灰と影だけが風に舞っていた。



「……二万が……影も形もない……」

「こんな……ことが……」


ペガサスの翼がはためくたび、灰が宙に散り、炎の残り香が鼻を刺す。

それは敗北の痕跡ではなかった。

――存在そのものが消し去られた戦場だった。



騎士隊長は震える手で拳を握りしめた。

「……急ぎ、王城へ報告を! この光景を見たこと、そのまま伝えねば……!」


ペガサスたちは再び大きく翼を広げ、夜明けの空を駆けた。

その背にあるのは、恐怖と、理解を超えた畏怖の記憶。



――後に彼らが語ったのはただひとつ。

「戦場には軍などなく、灰燼と炎だけが残っていた」と。


王城の広間に、蹄の音が急ぎ駆け込んだ。

翼を持つ騎獣から飛び降りた騎士たちは、まだ灰をまとい、息を荒げていた。


「報告! レクシア本隊二万――壊滅ッ!」


その声が響いた瞬間、広間の空気が爆ぜた。


「二万が……?」

「そんな馬鹿な!」

「伝令の誤報では……」


重臣たちは互いに声を荒らげ、ざわめきは嵐のように広がる。



ペガサス隊長は膝をつき、絞り出すように続けた。

「確かにこの目で見ました。

 陣幕も旗もなく……ただ、灰と炎の跡が残っているだけ。

 まるで“軍”というものが存在しなかったかのように」


その言葉に広間が凍りつく。

誰もが信じたくない真実を、確かな証言が突きつけた。



セレーナは玉座の上で静かに瞳を閉じた。

「……やはり、あの方が」


フィアナが息を呑み、女王を見上げる。

だがセレーナは何も続けず、ただ静かに言葉を紡いだ。


「よかろう。全軍に伝えよ――

 “この戦は終わった”と」



広間は再びざわめきに包まれる。

しかしそれは動揺ではなく、長い緊張から解き放たれた歓喜と安堵の入り混じった声だった。


だがフィアナだけは、心の奥でひとつの問いを抱えていた。


(……あの人は、いったい……何者なのか)


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