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レイクス戦記  作者: ゆう
戦乱の幕開け
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夜半の狩り

夜半の狩り


レクシア軍本陣。

焚き火がちらつき、兵の眠気と疲労を照らし出す。

砦への攻めは昼から続き、勝利を疑わぬ将兵たちは粗末な食をとりながら休んでいた。

――その夜半、荒野の闇を切り裂く三つの影が動いた。



「久しいな。こうして三人で並ぶのは」

セバスが杖を肩に担ぎ、風を弄ぶように呟いた。


レイクスは口元に笑みを浮かべる。

「……あの時は北の山で狼狩りだったな。ゼフィールが獲物を追い詰めすぎて、俺たちの出番がなくなった」


「……事実を言わなくてもいい」

ゼフィールが低く返す。その声に、セバスが小さく笑った。

「獲物を狩り尽くすのは昔も今も変わらんさ」


炎の光を遠くに見据えながら、レイクスが剣を軽く振る。

「……さて、今夜の獲物は二万か。久々に体が温まる」


三人の足取りは、まるで散歩のように軽やかだった。



最初に風が裂けた。

セバスの杖剣が振り抜かれると同時に、地を割る土壁が敵兵を分断し、突風が焚き火を吹き消す。

暗闇に呑まれた列は、悲鳴を上げる間もなく崩れた。


次いで影が揺らぐ。

ゼフィールの姿が消えたかと思うと、敵将の背後から短剣が閃き、指揮官の喉が音もなく裂けた。

「な、何者だ――!?」

幻影が敵の目を惑わせ、味方同士が剣を振るう。


そして最後に、剣が走る。

レイクスの剣筋はただの一撃で列を断ち割り、振り下ろすたびに兵の群れが崩れる。

炎も雷もない。

ただ一振りの剣だけで、二万の軍勢が脅威を悟った。


「馬鹿な……数では優っているのに……!」

「斬られる……速すぎて見えない……!」


絶叫は次第に悲鳴へ、やがて沈黙へと変わっていった。



「ふむ……やはり狩りと同じだな」

セバスが土煙の中で杖剣を払う。


ゼフィールは短く息を吐き、返す。

「……獲物が多すぎるだけ」


レイクスは笑みを浮かべ、剣を鞘に収めた。

「いや、たまには悪くない。夜の散歩には丁度いい運動だった」


そして二人を見やり、少し声を落とした。

「……アルトミュラーはどうだ? 任せてから、少しは強くなったか?」


セバスとゼフィールは顔を見合わせ、小さく笑う。

その笑みは――まだ答えを出すには早い、と言っているかのようだった。



その夜、レクシア本陣は炎に包まれ、完全に沈黙した。

ただ、「三人の影が夜を狩った」という噂だけが、恐怖と共に戦場を駆け抜けていった。



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