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レイクス戦記  作者: ゆう
戦乱の幕開け
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烈火の突撃

第11話 烈火の突撃


日中、ベルディア砦。

荒野を埋め尽くすようにレクシア軍の先行部隊八千が押し寄せた。

矢の雨、投石、そして破城槌。

分厚い石壁は耐えてはいたが、砦の外郭はすでに傷だらけとなっていた。


「持ちこたえろ! この砦こそ、王都を守る盾だ!」

第2騎士団の団長の怒号が響く。

兵たちは必死に防いだ。だが――攻撃は途切れることがなかった。



夕刻から夜半にかけても、攻撃は続いた。

休む間もなく矢が降り、砦を囲む炎の光はまるで昼のように明るかった。


「もう限界だ……」

「敵の数が多すぎる……!」


疲労と恐怖に、兵たちの顔色は青ざめていく。

誰もが崩れ落ちるのは時間の問題だと思っていた。



――その時だった。


闇を裂く角笛の音が響き渡る。

荒野の奥から轟く蹄の音。


「……なにが起きてる……?」

「敵の後列が……崩れていく……」


砦の見張り台から見えるのは、闇に揺らめく炎だけ。

赤黒い光が一瞬ごとに走り、その度に敵陣が裂けて消えていく。


「……人の戦いなのか、あれは……?」

「わからない……ただ、敵が壊れていく……」



その炎の明滅の中、ひときわ鮮烈に浮かび上がったものがあった。


翻る旗。

そこに刻まれていたのは――

銀の輝きを返す指輪と、風に揺れる香草袋を模した意匠。


誰もが一瞬、それを見たと確信した。

次の瞬間にはまた闇に溶け、炎と悲鳴だけが荒野を満たした。



夜明けを待たず、戦場は沈黙した。

八千の軍勢は炎と突撃に呑まれ、灰燼と化す。


残された者たちは、ただ呆然と夜空を見上げるだけだった。

――それが何者であったのか、確かに見た者はいない。

だが、旗に刻まれた意匠の記憶だけが、戦場に生き残った兵の心を震わせていた。



夜明けが近づく頃、荒野の奥に設けられた司令幕。

ひとりの騎士が跪き、低く声を響かせた。


「報告いたします――レクシア軍先行部隊八千、殲滅。

 被害は……ありません」


静まり返る幕内。

アルトミュラーは目を閉じ、短く息を吐いた。


「……当然だな」


その声音には誇りと共に、なお消えぬ緊張が漂っていた。

彼らが恐れるのは敵ではなく、命を賭して戦うその者たちの存在そのものだった。


アルトミュラーはゆるやかに立ち上がる。

「進軍を継続せよ。ヴァルトニアの旗は主の為に!」



戦場に残るのは、炎に照らされた灰燼と――

風に翻る旗印。

指輪と香草袋を織り込んだその意匠は、闇を裂き、見た者すべての心に畏敬を刻みつけていた。



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