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レイクス戦記  作者: ゆう
戦乱の幕開け
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レイクスの演説

レイクスの演説


 烈火竜の剣が赤く脈動するように光り、広間の空気は熱を帯びていた。

 その場に集うヴァルトニア騎士団の将兵が、固唾を呑んで主を見つめている。


 レイクスは静かに歩を進め、騎士団を見渡した。

 黒い瞳が一人ひとりを射抜くように巡り、広間の空気を震わせる。


「――ヴァルトニア騎士団」


 低い声が広間を満たした瞬間、騎士たちは一斉に膝を折り、胸に拳を当てる。


「二百年前、我らは雷と炎で聖戦を退けた。

 そして今、再び国は刃を突きつけられている」


 その言葉は過去と現在を繋ぎ、騎士たちの心を縛り上げる。


「だが恐れるな。我らは数で劣ろうとも、剣を以て敵を超えてきた。

 我が命じる――明朝、敵の第一陣を撃ち砕け。烈火竜の剣を掲げ、ヴァルトニアの名に誓い、一歩も退くな」


 赤熱する刃が掲げられ、熱気が広間に広がる。

 騎士団の胸に刻まれた紋章――指輪と香草袋が、炎に照らされて煌めいた。


「王国のためではない。女王のためだけでもない。

 この旗の下に集った者すべての誇りのために、我らは剣を振るう!」


 瞬間、広間に雷鳴のような咆哮が轟いた。

 「ヴァルトニア!」

 「ヴァルトニア!」


 騎士たちの声は天井を震わせ、夜を突き破る。


 その光景を見つめながら、フィアナの胸は打ち震えていた。

(……これが、ヴァルトニア騎士団……! 国を支える柱と呼ばれる所以……!)


 レイクスは片手を掲げ、その声を再び落とす。


「明朝、我らは伝説を新たに刻む。

 ――ヴァルトニアの雷と炎を、敵に思い知らせよ」


 騎士団は剣を掲げ、炎のような声で応じた。

 その誓いが夜空を焦がし、戦乱の幕開けを告げていた。


演説騎士団の鬨の声が収まり、広間に再び静けさが戻った。

 レイクスは振り返り、フィアナを見据える。


「……フィアナ」


 呼ばれた名に、第一騎士団長は姿勢を正す。


「第一騎士団より、騎士を二名借りたい」


 フィアナは目を瞬いた。

「……二名、でございますか?」


「セリスの護衛に充てたい」


 その名を告げられた瞬間、フィアナの心に驚愕が走る。

 あの廊下で出会った少女。セバスですら雰囲気を変えた存在。


「ヴァルトニア卿……その者は、一体……」


 レイクスは答えず、ただ黒い瞳でまっすぐに彼女を見返した。

 それ以上の言葉はなく、だが拒むこともできない重みがそこにあった。


 フィアナは胸に手を当て、深く一礼する。

「……承知いたしました。責任をもって手配いたします」


翌日、第一騎士団長フィアナは王城へ戻り、玉座の間で女王セレーナに拝謁した。


「女王陛下。ヴァルトニア卿は……烈火竜の剣をアルトミュラーに託し、明朝の戦で敵第一陣を殲滅せよと命じられました」


 廷臣たちが息を呑み、広間にざわめきが広がる。


「さらに……」フィアナは一拍置き、言葉を継いだ。

「第一騎士団より騎士二名を借り受けたいとのご要望がございました。護衛対象は……“セリス”という少女。館で偶然、私も拝見しました。ですが……」


 フィアナの声には迷いが滲んだ。

「その少女の存在は、ただの客人とは思えません。執事セバスでさえ態度を変えるほどで……。一体何者なのか……」


 女王セレーナは静かに目を細め、廷臣を見渡す。

「……セリス、という名か」


 その声音は柔らかく、しかし確かな探究の光を帯びていた。

「よい。二名の派遣を許す。だが同時に、その者が何者であるか……余自身も確かめる必要があるだろう」


 広間に静かな緊張が走る。

 フィアナは胸に拳を当て、深く頭を垂れた。


(セリス……あの少女を護ることが、この戦の鍵になるのかもしれない……)



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