セリスの朝
幕間 セリスの朝
目を覚ますと、白いカーテン越しに柔らかな陽光が差し込んでいた。
孤児院の小部屋や巡礼宿舎とはまるで違う。広く静かな部屋、羽毛のベッド。
胸の香草袋に触れると、昨日の出来事が夢ではないと実感できた。
同じ館には、レイクス様がいる――。
そう思うだけで安心するのに、会えばきっと緊張でうまく話せない。
扉をノックする音がして、セバスの落ち着いた声が響く。
「セリス様、朝食のご用意が整っております」
食堂に入ると、長いテーブルの端にレイクスが座っていた。
黒の外套姿で椅子に腰掛けているだけなのに、場の空気が自然と引き締まる。
セバスが優雅に椅子を引き、セリスの席を示した。
「こちらへどうぞ」
恐る恐る腰を下ろすと、温かなパンと香草を添えたスープが目の前に置かれる。
緊張で手が止まりかけたそのとき、隣から声がした。
「遠慮はいらない。口に合うかどうか、俺も気になる」
驚いて顔を上げると、レイクスが静かに微笑んでいた。
セリスは慌ててパンをちぎり、スープに浸して口に運ぶ。
「……おいしい……」
小さくつぶやくと、レイクスは少し笑った。
「なら良かった。ここは香草をよく使うから、慣れないかと思っていた」
セリスの胸に、じんわりと温かさが広がる。
「……気にかけてくださって……ありがとうございます」
「これからは、この館がお前の暮らす場所だ。気にするのは当然だろう」
その言葉に、孤児として過ごしてきた日々では得られなかった「居場所」を感じ、胸が熱くなる。
胸元の香草袋をそっと握りしめながら、セリスは小さく笑みを返した。




