表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レイクス戦記  作者: ゆう
旅立ち
4/99

霧の中の決戦

第四話 霧の中の決戦

翌日も馬車での旅は続いた。順調に進んでいた一行だったが、午後になると空模様が変わり始める。空は鉛色に曇り、辺りに冷たい風が吹き始めた。

「まずいな、これは…」

御者が手綱を強く握り締め、眉をひそめた。その言葉通り、数分後にはあたり一面が白い霧に包まれた。

「うわ、すごい霧だ…前が全然見えない」

ナツキが窓から顔を出し、驚きの声を上げる。フォルネリアへ続くこの街道は、この時期、極稀に濃い霧に覆われることがあった。それは、遠く離れた**『霧の森』の瘴気**が街道にまで流れ出してくる現象で、この霧の中には幻覚を見せるキノコの胞子や、それに引き寄せられた魔物が潜んでいることがあった。

馬車の外の景色は、すべてがぼんやりと霞んで見える。エリカは、馬車の隅で不安そうに身を縮めていた。

「…なんだか、人がたくさんいるみたい…」

エリカが震える声で呟くと、ヴィーナは驚いて彼女の顔をのぞき込んだ。エリカの瞳は、ヴィーナには見えない何かを捉えていた。それは、幻覚を見せるキノコの胞子を吸い込んだことによる症状だった。

「エリカ、落ち着いて!大丈夫だよ、私たちがいるから」

ナツキが力強く声をかけるが、エリカは耳を塞ぎ、怯えるように頭を振る。

その時、レナが冷静に声を上げた。

「御者、馬車を止めろ! 魔物だ!」

レナの言葉に、御者は慌てて馬車を止めた。霧の中から、複数の影がにじみ出るように現れた。それは、巨大な牙を持つオオカミのような魔物だった。

「ヴィーナ、エリカを頼む。クロエ、ナツキ、行くぞ!」

レナが巨大な盾を構え、馬車から飛び出す。その瞬間、魔物が一斉に襲いかかってきた。

レナは盾を突き出し、馬車に迫る魔物の突進を正面から受け止める。凄まじい衝撃が轟き、彼女の足元の地面がわずかに沈んだ。だが、レナはびくともしない。彼女の背後で、ナツキが大きく剣を振りかぶった。

「どけ、レナ!一撃で仕留める!」

ナツキの力強い一撃が魔物の頭部を狙う。だが、霧の中の魔物は俊敏だった。ナツキの攻撃を紙一重でかわし、反撃に転じようと牙を剥く。

その時、一瞬の隙を突いて、クロエが素早く馬車から飛び出した。彼女は双剣を交差させ、霧の中を駆け抜ける。まるで風のようになめらかな動きで、魔物の足元を切り裂いた。

「グゥン!」

魔物が苦痛の唸り声を上げ、バランスを崩す。その隙を見逃さず、ナツキが再び剣を振り下ろした。今度の一撃は、魔物の肉を深く切り裂き、鮮血が霧の中に飛び散った。

しかし、魔物はまだ生きている。再び襲いかかろうと身構えたその時、別の魔物が霧の中から現れ、レナの背後から襲いかかった。ナツキとクロエは、最初の魔物との戦闘で手一杯だ。

「レナさん!」

ヴィーナが叫ぶ。馬車の中では、エリカが恐怖に震え、身を硬くしていた。ヴィーナは、エリカに声をかける。

「エリカちゃん、大丈夫。怖くないよ。私たち、きっと勝てるから!」

ヴィーナの言葉に、エリカは顔を上げた。彼女の瞳はまだ揺れていたが、ヴィーナの優しさに、わずかな光が灯る。

「エリカ、今だよ!」

ナツキの叫びに、エリカは我に返ると、震えながらも魔法を唱えた。彼女の指先から放たれた炎が、馬車に迫る魔物に向かって一直線に飛んでいく。

ドオォォン!

魔物は爆発とともに霧の中に消え、森に再び静寂が訪れた。ナツキとクロエが、残った魔物の息の根を止める。レナは、無事に全ての魔物を倒し終えると、馬車へと戻ってきた。

「…ごめんなさい、私…足手まといで…」

エリカが顔を伏せると、ナツキが彼女の肩を強く叩いた。

「何言ってんだよ!エリカのおかげで助かったんだぜ!それに、ヴィーナもな!」

その言葉に、エリカは驚いて顔を上げる。クロエも頷き、レナは静かに微笑んでいた。

「…ありがとう」

ヴィーナとエリカは顔を見合わせ、二人とも微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ