表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レイクス戦記  作者: ゆう
旅立ち
39/99

騎士の礼と共に歩む者たち

第五十話 騎士の礼と共に歩む者たち


ヴィーナの返答――「行きます」という言葉が、静かに訓練場の空気を変えた。


だが、その場にいたマルターレス騎士団副団長・アンドロ・ラースは、さらに一歩を踏み出す。


彼の視線は、ヴィーナの背後へ。

レナ、クロエ、ナツキ、エリカ――少女の旅路を共に歩んできた仲間たちへ。


そして、アンドロは何も言わず――


片膝を地に落とし、右拳を胸に当てた。


騎士の最上級の礼が、四人に等しく捧げられる。


***


「えっ!? ちょ、ちょっと待って!?」

ナツキが飛び退くように両手を振る。


「わ、わたしたち、そんな立場じゃないですからっ!」

エリカは顔を真っ赤にして慌てふためく。


「副団長……これは……?」

レナは困惑しながらも冷静を装い、視線を鋭くする。


クロエは額に手を当て、小さくため息をついた。

「……やっかいね。けど……あの人たち、本気よ」


「な、なんでこうなるのよ……!」

パーティーメンバーの狼狽は、訓練場の空気を大きく揺らした。


***


その光景を目にした若い騎士見習いたちは――ただ、言葉を失った。


「副団長が……旅人に跪いている……?」

「どういう……ことだ……?」


誰も笑わなかった。

それは驚愕であり、畏怖であり、

“騎士とは何か”を問い直される瞬間だった。


一人の見習いが、息を呑みながら呟く。


「……これが、“ヴァルトニア”という名の重さ……なのか……」


もう一人は、拳を握りしめて顔を伏せた。


「いや……違う。名だけじゃない。

彼女を支えた“仲間”にまで敬意を払う……

――それが、この国の騎士の誇りなんだ」


ざわめきは、次第に静かな決意へと変わっていった。


***


アンドロは、何も語らない。

ただ立ち上がり、胸に拳を当てて深く一礼する。


言葉よりも雄弁なその行動が――

仲間たちに対する最大限の敬意を示していた。


「……これ、もう引き返せないわね」

レナがため息まじりに肩を竦める。


「だな。もうここまで来たら、最後まで付き合うしかないっしょ」

ナツキが苦笑し、エリカが「が、がんばろうね……!」と必死に頷く。


クロエは静かに前に出て、騎士団に向けて一礼した。


「案内を、頼むわ」


アンドロは無言で頷き、騎士団の者たちが道を開く。


傾き始めた太陽が、石畳に長い影を落とす。


その中を、一行はゆっくりと歩き出した。


そして、それを目にした若き騎士たちの胸には――

新たな“誓い”が芽生え始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ