決意の行方
第三十六話 決意の行方
ヴィーナの言葉に、謁見の間は再び静まり返った。その場にいた誰もが、彼女の言葉に耳を疑っていた。リランダの顔は、驚きと失望の色に染まり、領主の表情は、困惑と落胆を物語っていた。
「…ヴィーナ=ヴァルトニア。君の父の聖魔法は、この国、いや、世界を救う力だ。その力を君が受け継いでいるのなら、それは君の使命だ。その使命から逃げるつもりか?」
領主の言葉は、ヴィーナの心に突き刺さった。しかし、ヴィーナは、その言葉に怯むことなく、静かに答えた。
「私は、逃げているわけではありません。ただ、私には、できないことがあるのです」
ヴィーナは、そう言うと、レナたちに視線を向けた。
「父が持つ聖魔法が、世界を救う力があるのかどうか、私は知りません。父からは、できる範囲のことを教えられただけです。父は、私に聖魔法の才能はないから、水魔法の道を極めるようにと、何度も言いました」
彼女の言葉に、リランダは、静かに目を閉じた。彼女は、ヴィーナの言葉が、レイクスが彼女に伝えたかった真実であることを、理解したのだ。
ヴィーナは、さらに言葉を続けた。
「今回、瘴気を払うことはできましたが、それは、私一人でできたことではありません。それに、瘴気の一部は、私が浄化できないほど濃いものでした。父が言ったように、私は聖魔法の道には向いていないのです」
その言葉に、領主は、静かに頷いた。
「…そうか。君が、そう言うのなら、私がとやかく言うべきことではない」
領主は、そう言うと、静かに玉座へと戻っていった。
「今回の功績、感謝する。報酬は、ギルドを通して支払う。…君たちの旅が、幸多からんことを願う」
領主の言葉は、静かだったが、その中に、彼なりの敬意が込められていることを、誰もが感じ取っていた。
謁見の間を出た一行は、再びギルドの馬車に乗り込んだ。外は、すでに夜の帳が下りていた。
「ヴィーナ…本当に、よかったのか?」
レナが、心配そうにヴィーナに尋ねた。
「うん」
ヴィーナは、静かに頷いた。




