父の居場所
第三十四話 父の居場所
ヴィーナの「父は…」という言葉に、謁見の間は静まり返った。ナツキ、エリカ、クロエ、そしてレナも、固唾をのんでヴィーナの言葉を待っていた。リランダは、その瞳をじっとヴィーナに向け、その真実を求めていた。
ヴィーナは、深呼吸を一つすると、落ち着いた声で語り始めた。
「父は、イシュタリア商業連邦にいました。ですが、数ヶ月前に、エルディナ聖王国へと旅に出ました」
その言葉に、リランダは驚きに目を見開いた。レイクスが、この街から遠く離れたイシュタリアにいたこと、そして、すでに旅立っていたことに、リランダはショックを受けていた。
「分かりません。父は、私に故郷や過去のことを何も話してくれませんでした。ただ、彼は私に聖魔法を教えてくれましたが、その使い方を、決して人前で使わないようにと、何度も言われました」
ヴィーナの言葉に、リランダは目を閉じた。そして、遠い昔の記憶を辿るように、静かに語り始めた。
「レイクスは、魔王の残党との戦いで、多大な力を消耗した。彼は、力がなくなったわけではない。彼が、聖魔法を人前で使うことを避けたのは、彼が、自らの力で何でも解決することに意味がないと考えたからです」
リランダの言葉は、ヴィーナの知らない、レイクスの過去を語っていた。
領主は、ヴィーナの言葉を静かに聞いていたが、ここで口を開いた。
「ヴィーナ=ヴァルトニア。君に、一つ頼みがある。君の父、レイクス=ヴァルトニアに、この地へ戻ってくるように伝えてほしい」
その言葉に、ヴィーナは戸惑いの表情を浮かべた。
「領主様。父は…」
「分かっている」
領主は、静かに頷いた。
「だが、今、この国は、新たな脅威に直面している。この街を守る結界は、日に日に弱まり、いずれは破られてしまうだろう。リランダの力でも、それを修復することは難しい。君の父の力が必要なのだ」
領主の言葉は、重く、そして真実味を帯びていた。
ヴィーナは、その言葉に、何も答えることができなかった。




