謁見
第三十二話 謁見
翌朝、四人はギルドの馬車に乗り込み、領主の城へと向かった。
馬車の中は、出発前の慌ただしさが嘘のように静まり返っていた。ナツキは緊張した面持ちで、窓の外を眺めている。エリカは、自分のローブの袖を何度もつまみ、落ち着かない様子だった。クロエは、いつものように冷静を装っているが、その瞳の奥には、かすかな好奇心が宿っている。
レナは、そんな仲間たちに、静かに語りかけた。
「緊張しているようね」
「そりゃそうだよ! 領主様だよ、領主様! 私、こんなに立派な人に会うの、生まれて初めてだもん!」
ナツキが、大げさに身振り手振りを交えながら言った。
「私も、少し…怖いです」
エリカが、不安そうにヴィーナを見つめる。
ヴィーナは、そんなエリカの手をそっと握り、微笑んだ。
「大丈夫です。私たちが、私たちである限り、怖くありません」
その言葉に、エリカは安堵の表情を浮かべた。
馬車は、やがて巨大な城門をくぐり、城の内部へと進んでいく。石畳の道は、まるで鏡のように磨かれており、兵士たちは、皆、引き締まった顔で、微動だにせず警備にあたっていた。
城の中心に位置する謁見の間は、広大で、天井は遥か高く、美しいレリーフで飾られていた。謁見の間の奥には、玉座が置かれており、そこに、一人の威厳ある男性が座っていた。フォルネリア辺境侯、レオンハルト・フォルネリアだ。そして、その横には、白銀の髪を持つリランダの姿があった。
レナは、他のメンバーに目配せし、一歩前に進み出た。
「フォルネリア辺境侯、殿下。冒険者パーティー『暁の星』のリーダー、レナと申します。この度は、お呼びいただき、光栄に存じます」
レナの言葉に、領主は静かに頷いた。
「面を上げよ、冒険者たちよ。君たちの功績は、この街に住む者、すべてに感謝されるべきものだ。まずは、各自、名乗ってもらおうか」
その言葉に、四人は、それぞれ名乗った。
「ナツキと申します!」
ナツキが、明るく元気な声で名乗りを上げた。
「エリカです…」
エリカが、少しだけ震える声で名乗った。
「クロエ」
クロエは、簡潔に自分の名を告げた。
そして、最後にヴィーナが名乗る番だった。
ヴィーナは、一歩前に進み出ると、深々と一礼し、静かに、しかし、はっきりと自分の名を告げた。
「ヴィーナ=ヴァルトニア、と言います」
その言葉を聞いた領主は、静かに目を閉じた。そして、隣に立つリランダは、驚きと安堵の混じった表情で、ヴィーナを見つめていた。




