謁見の準備
第三十一話 謁見の準備
大聖堂から宿に戻ったレナは、他のメンバーを集め、リランダからの伝言を伝えた。
「領主様が、私たちに謁見を望んでおられる」
レナの言葉に、ナツキが目を丸くする。
「えっ、あの領主様に? すごいじゃん!」
エリカも緊張した面持ちで、レナの言葉に耳を傾けている。クロエは、黙って事の次第を見守っていた。
「私たちは、冒険者として領主様にお目通りする。今回の功績は、私たちだけの力ではない。特に、ヴィーナさんの力が大きかった」
レナはそう言うと、皆の顔を見回した。
「領主様への謁見は、私たちパーティー全員の信頼に関わることだ。各自、自己紹介をしっかりとするように」
「分かった。明日の朝、ギルドの馬車で城に向かうそうだ」
レナは、皆にそう告げ、謁見に備えて身だしなみを整えるように指示した。
その夜、宿の一室は、かつてないほどの慌ただしさに包まれていた。
「えー、どうしよう! 私、服、これしかないよー!」
ナツキが、着古したレザーアーマーを前に頭を抱えている。
「大丈夫だよ、ナツキさん。きっと、向こうで貸してもらえるよ」
エリカが慰めるが、彼女自身も、いつもの魔法使いのローブしかない。
「貸してもらえるわけないでしょ! 領主様にお目通りするんだから、ちゃんとした正装がいるの!」
レナが、呆れたようにため息をつく。しかし、彼女自身も、これまでの旅で着古した服しかない。
「……ま、今から街に買いに行っても、開いてる店はないか」
クロエが、窓から外を眺めながら呟いた。
「じゃあ、どうするの、レナ? このままだと、私たち、すごく失礼になっちゃうんじゃ…」
エリカが、不安そうにレナを見つめる。
レナは、静かに考えを巡らせていた。その時、彼女の視界に、ヴィーナの姿が映った。ヴィーナは、いつも身につけている白いローブを着て、静かに座っている。そのローブは、他のメンバーの服とは違い、汚れ一つなく、神聖な光を放っているように見えた。
「ヴィーナさん。そのローブは、あなたの故郷のものか?」
レナの問いに、ヴィーナは小さく頷いた。
「このローブは、父がくれたものです。大切に、ずっと着ていました」
その言葉に、レナは、一つの打開策を思いついた。
「よし! 決めた! ナツキ、エリカ! 私たち、この格好で謁見に臨むわ! そして、この旅で得た、ありのままの私たちを、領主様にお見せするのよ!」
レナの言葉に、ナツキは目を丸くし、エリカは戸惑った表情を浮かべた。しかし、レナの決意に満ちた瞳を見て、彼女たちは静かに頷いた。
翌朝、四人は、いつもの冒険者の格好で、領主の城へと向かった。彼らの足取りは、もはや躊躇のないものだった。




