街の灯
第二十八話 街の灯
一行がフォルネリウスの街に帰還すると、その日のうちに冒険者ギルドへと向かった。ギルドの受付には、依頼を待つ冒険者たちが列をなしており、活気に満ちていた。レナは、受付の女性に依頼完了の報告書と、採取した**『白銀の葉』**を提出する。
「これは……すごいわね! こんなに大量の**『白銀の葉』**を、しかもこんなに早く! ギルドの歴史でも類を見ない成果よ!」
受付嬢は、鑑定書を確認し、驚きの声を上げた。彼女の声に、周囲にいた冒険者たちの視線が一斉に一行に集まる。彼らは、霧の森から生きて帰還した一行に、尊敬と羨望の眼差しを向けていた。
「すごい! みんな、すごいよ!」
エリカは、その視線に少し気恥ずかしさを感じながらも、仲間たちの偉業を誇らしげに見ていた。
「まさか、こんなに早く帰ってこれるなんてね! いやー、やっぱり私の勘は当たるんだよなぁ!」
ナツキは、得意げに胸を張る。彼女の言葉に、レナとクロエは小さく微笑んだ。
報酬を受け取ると、一行は、久しぶりの街の賑わいを楽しむことにした。ナツキは、早速美味しい料理を求めてレストランへ、エリカとヴィーナは、旅の疲れを癒すため、宿に戻ることを選んだ。
「じゃあ、私たちは先に帰ってるね。また後で」
エリカが、ナツキに手を振る。
「うん! 今日の夕飯は、私が奢ってあげるからね!」
ナツキは、上機嫌で応じた。
宿に戻ったエリカとヴィーナは、温かいお風呂に浸かり、旅の疲れを洗い流した。湯船に浸かりながら、エリカがポツリと口を開く。
「ヴィーナさん…本当に、色々とあったね」
エリカの言葉に、ヴィーナは静かに頷く。霧の森での出来事は、彼女たちにとって、深い記憶として心に刻まれていた。恐怖と対峙し、仲間と力を合わせ、無事に戻ることができた。それは、決して忘れられない、大切な旅の痕跡だった。
「うん。でも、みんなと一緒だったから、乗り越えられた」
ヴィーナの言葉に、エリカは微笑んだ。
「私も、みんなと一緒だったから、頑張れた。ありがとう、ヴィーナさん」
二人は、温かい湯気の中で、静かに語り合った。それぞれの心に芽生えた、新たな決意。それは、この旅で得た、何よりも大切なものだった。
その夜、四人は街の小さなレストランに集まった。ナツキが豪勢な料理を注文し、皆でこれまでの旅を振り返る。剣士、盾使い、斥候、そして聖魔法使い。それぞれの力が、一つになったからこそ、今回の依頼は成功したのだ。
「この旅で、私たちは強くなった。そして、さらに強くなる」
レナが、静かに言った。その言葉に、皆は静かに頷いた。
遠い故郷の星空ではなく、街の賑やかな灯りが、彼女たちの新たな道を照らしていた。