霧の森の攻防
第十四話 霧の森の攻防
ヴィーナの掌から溢れ出た光は、瘴気に満ちた森の空気に触れると、パチパチと音を立てて輝きを増した。その光は、周囲の霧をわずかに晴らし、魔物たちの姿を鮮明に映し出した。その姿は、腐敗した肉体から骨が露出し、赤く濁った眼が禍々しい光を放っていた。
「くそっ、瘴気にやられてやがるな!」
ナツキが叫び、剣を構えた。先頭に立つレナは、巨大な盾を地面に突き立て、魔物の突進に備える。
「ヴィーナ、エリカ、援護を!」
レナの声に、ヴィーナは頷いた。彼女は、癒しの光を掌に集め、仲間たちを包むように放つ。その光は、瘴気による精神的な圧迫を和らげ、皆の動きを軽くした。
「すごい…!」
ナツキは驚きの声を上げた。彼の剣に力が漲り、魔物の一体に一撃を食らわせる。
「グアァァッ!」
魔物は苦痛の叫びを上げ、ナツキに飛びかかった。しかし、ナツキは冷静に剣を振り抜き、魔物の頭部を切り裂いた。
その間に、クロエが霧の中を素早く駆け抜ける。彼女は、まるで霧そのものになったかのように、音もなく魔物の背後に回り込み、双剣を突き立てる。魔物は、クロエの素早い攻撃に反応する間もなく、その場で崩れ落ちた。
しかし、魔物は数が多い。次から次へと霧の中から現れ、一行に襲いかかる。
「くそっ、キリがねぇ! エリカ、頼む!」
ナツキの言葉に、エリカは震えながらも魔法を唱えた。
「燃え盛る炎よ、我が身を焦がし、敵を滅ぼせ! フレイム・バースト!」
エリカの指先から放たれた炎が、魔物の群れに向かって飛んでいく。
ドオォォン!
炎は爆発し、魔物を焼き尽くした。しかし、その爆発音に引き寄せられるように、さらに多くの魔物が霧の中から現れる。
「ヴィーナさん、私…もう、だめ…」
エリカが顔を青ざめさせ、その場にへたり込んだ。彼女の精神力は、すでに限界を超えていた。ヴィーナは、そんなエリカに駆け寄る。
「大丈夫だよ、エリカちゃん。私が…私が守るから!」
ヴィーナは、エリカを抱きしめ、自分の聖魔法を注ぎ込む。その光は、エリカの心に安らぎを与え、彼女の疲弊した精神を癒していった。ヴィーナの聖魔法は、無意識のうちにエリカの心を包み込み、彼女の恐怖を鎮めていた。