依頼、そして森へ
第十二話 依頼、そして森へ
リランダとの不思議な出会いを終えた後、一行は改めて依頼主であるマクシムの元へと向かった。昨日の出来事を話すか迷ったが、レナの「不必要な情報は口にしない方がいい」という忠告に従い、マクシムには何も話さなかった。
マクシムは、一行が約束通りにやってきたことに安堵した表情を見せた。
「いやあ、無事でなによりです。フォルネリウスの街は穏やかですが、その一歩外に出れば魔物の危険がありますからな」
マクシムはそう言うと、一行に薬草採取の詳しい手順を説明し始めた。今回の目的である**『白銀の葉』**は、街から北へ進んだ森の奥地に自生しているという。
「ただし、その森は『霧の森』と呼ばれる場所です。常に霧が深く、方向感覚を失いやすい。それに、幻覚を見せるキノコの胞子が漂っているため、魔術師にとっては特に危険な場所です」
マクシムの言葉に、エリカが顔を青ざめさせた。
「あの…幻覚のキノコ、ですか…?」
マクシムは、エリカの反応に気づき、申し訳なさそうに頭を下げた。
「ええ。ですが、この街の住民は慣れていますし、冒険者の方々も対策を講じています。それに、皆さんはベテランのパーティーと聞いています。きっと大丈夫でしょう」
ヴィーナは、エリカの肩にそっと手を置いた。
「大丈夫だよ、エリカちゃん。私がいるから」
ヴィーナの言葉に、エリカは少しだけ安心したように微笑んだ。
「そうか、よし! それじゃあ、早速行こうぜ! さっさと片付けて、街でうまいもん食おうぜ!」
ナツキが意気揚々と声を上げると、レナが冷静に言った。
「落ち着け、ナツキ。まずは準備だ。地図と、携帯用の浄水ポーション。そして、幻覚を防ぐための薬草も多めに用意しておこう」
レナの言葉に、ナツキは不満げな顔をしたが、クロエが黙って必要なものを揃え始めたのを見て、ようやく落ち着いた。
すべての準備を整えた一行は、マクシムに見送られ、フォルネリウスの北門から森へと足を踏み入れた。門を出ると、すぐに木々が鬱蒼と生い茂る森が広がる。風もなく、どこからか湿った空気が漂ってくる。
レナが警戒しながら進むよう指示すると、ヴィーナは一人、リランダの言葉を思い出していた。
『大樹の奥には、精霊たちが住む「精霊の森」がある。あなたの光は、精霊たちにとって、とても心地よいものに違いないわ』
この森が、リランダの言う「精霊の森」なのだろうか。