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8 必殺技

必ず殺すと書いて必殺です。

 休憩時間に神の町を散策してると、日本風の家屋の前を通りかかる。

そこには広い庭の真ん中で藁人形を正面に置き、少し離れたところから、

刀を大上段に構えている、お月様が居た。

刀身が明らかに足りない距離から、何してるのかとこっそりのぞいてみる。

大量の魔力が周囲で暴れている。

刀に周囲の魔力が集まっている?今の私にはよくわからない。

かと思えば、すぐに静まる。魔力の嵐は無くなり、凪のように静かになる。

その後・・・

しっかり見ていたはずなのに、いつの間にか振り下ろされている刀、

距離など関係無いかのように、すでに真っ二つにされている藁人形。

全く分からなかった。技術なのかスピードなのか、魔法なのか一切わからなかった。

そしてかっこいい!

すぐに駆け寄って聞いてみる。

「あの!」

「ん?」

と表情を変えずにこちらを見るお月様。

「今の何ですか?」

すると何でもないかのように答える。

「あれは、ただの曲芸だよ。」

とお月様は言うがそんなわけないと思った。

なぜなら、私が切られる側なら、絶対に避けることも受けて防御する事もできないからだ。

「めっちゃかっこよかったです!」

と語彙力は吹き飛ぶ私。

「まあ、楽しめたなら幸いだな。」

と謙遜しつつ言う。

私も使ってみたいと思い。聞いてみる。

「今のやつ、わたしにもできますか?」

すると、いつもの無表情ではなく、驚いたような顔で答える。

「いまのを気に入ったのか?」

「はい!教えてほしいです!」

というと、ほんの少し口角をあげて言う。

「まあ、暇な時間に少しだけ稽古をつけてやる。」

との事、心の中でガッツポーズ。

その日から一日のうち少しだけ、お月様の監督の元、あの謎の曲芸を教えてもらうことになった。

「簡単に言うと。複数の魔法と、初太刀に全力をかけた剣術の複合技だ。」

「高度な剣術、複数の魔法と、その高度な技術、これらを一つにしたものだ。」

「私も今だに、技を改良している最中だが。今はとりあえずそれしか教えられない。」

「転生したのち、お前なりに技を磨いて昇華させてみろ。」

と先ほど曲芸と言ったのは、まだ研究中の技だったかららしい。

「はい!」

と元気に返事。

しかし、元気に返事をしたものの。剣術も、魔法もまだまだなので、

他の修行と合わせてじっくり練習する。


異世界転生の後、すぐに死なれては困ると、ひたすら訓練が続く。

もう何か月、何年、経ったか分からない。

こういうものは一朝一夕には身につかない。

スキルをポンと貰えて身に付く物ではない。

髪も伸びてきたので、切ろうとしたが。

どこからともなく太陽さんが現れる。

「長く質の良い髪の毛は高く売れるぞ。」

と真顔で睨むようにこちらを見る。

「わっ!!」

びっくりした。

気を取り直して、今度はこちらも真顔で。

「でも邪魔です。」

というと、何かを取り出す太陽様。

これで縛っておけ。と太陽のように輝いている、ヘアゴムをもらう。

しぶしぶ髪の毛を縛る、前世は短髪だったので、縛り方なんてわからん。

「お前はぶきっちょだな。」

と笑いながら直してくれる太陽さん、

「ここをこうするとうまくしばれるぞ。」

と丁寧に教えてくれる。

「お母さんか!」

とついつい、ツッコミを入れてしまう。

「まあ、今世では、私が母であり父という事になるな。」

と笑いながら答える。

「私はちゃんと人間ですよね?」

両親が神だと、私も神になってしまうのでは思う。

「ああ、しっかり人間っぽく作ったぞ。」

と怪しい一言が混ざる。

「え?人間っぽく?」

考えてみれば、馬を作ろうとして、あのユキが生まれるのだ。

人間を作ろうとしたら何ができるのか・・・。

「今まで、人間ぽく無いところはあったか?」

と聞かれるが、記憶にない。

「ないです。」

「ならばお前は人間だ。」

「たとえ翼が生えて空を飛んでも、お前が自分を人間というのなら人間だ。」

心強いような不安なような、そんな言葉をもらった。

「確かに、翼で空を飛んでみたいですね。」

と冗談に冗談で返す。

はっはっは!と笑いながら去っていく太陽さん。


現在、訓練は激しさを増し、死んでも死なないのを良い事に、ガチの殺し合いをしている。

殺し合いと言っても、基本は一方的に殺されるだけ。

一対一もやるが、さらに助っ人を呼び一対多数もしっかりやる。

なのでズタズタのボロボロにされる。指が飛ぶのはかわいいもので、腕や足も軽く飛ぶ、

ハラワタもボロボロと落ちるし、首も吹っ飛ぶ。

首が飛んでる最中の数秒は意識があるってのは本当だった。

武術だけではなく、魔法も激しい。

エルフ先生の全方位攻撃に何秒間耐えられるか。避けるのではなく、魔法の防壁で防御したり、

魔法で相殺したり、

余談だが魔法の防御は、完全防御を基本として、物理防御、魔法防御の二種類に分かれる。

どちらかに特化した方が、消耗が少ないのだ。

そして今回も焼かれ、凍らされ、切り刻まれ、大砲の様な水でボコボコに、大砲の様な岩でボコボコに、落雷でしびれる。

そしてエルフ先生の圧倒的な魔力そのもので、プッチンとつぶされる。

もう慣れました。痛みは感じるけど、慣れました。

夜の習慣も相まって、痛みに強くなった、人を切ることに対しても

「殺すのではなく、あの世に送ってやると考えろ。」

こう考えろ、との教えです。

そんなでどうにかなるか!と思ったが、意外とどうにかなってきた。

馬術、流鏑馬の様な練習も、的が射程距離ギリギリまで離され、

それに当てなきゃ師匠の大弓でユキ諸共吹っ飛ばされる。

明らかに大きさのおかしい、矢が飛んでくる。あれは槍であって、矢ではないと思う。

そりゃ船なんて簡単に沈みますわ。

動く標的に対しても当てる訓練、そして、馬に乗りながら動く標的に当てる訓練、

アホかってくらい的に当たらない。

両手両足の指じゃ足りないくらい、例の大弓で吹っ飛ばされました。

おかげさまでユキとの絆は深まるばかり。


別の場所での話。

太陽神と月の神が話をしている。

「あの技を教えるとは、お前にしては珍しいな。」

と少し感心したように話す太陽神。

「あのように、懇願されれば教えざる負えません。」

といつも通り無表情の月の神。

「お前は、まっすぐに好意を向けられる事に、弱いからな。」

とにやけながら話す。

「・・・」

図星なのか黙り込む月の神。

「研究中の技なので、アレが技を習得できるか、わかりまんよ。」

「あの威力の技をまだ改良するつもりか?」

「それもありますが、人間と神では、あの技の難易度は段違いなので。

 人間風に改良しなければいけないのです。」

「暇つぶしで、人間用に改良していたと?しかし転生までに使えるようになるか?」

「理論は理解できている様子ですが。使えるようになるかは、転生後の成長次第でしょう。」

そして、思い立ったように月の神が質問する。

「そういえば、異世界の言語や文字は教えているのですか?」

「それは、あのエルフに頼んである。」

「すでに覚えたようだぞ。」

と答えると、

「そうですか。」

と安心したように答える月の神。

「そろそろ送り出す時だな。」

「ところで母上。」

とまた月の神が質問をする。

「なぜあの人間を選んだのですか?」

「あの人間ではなく、より屈強な戦士を転生させれば、よかったのでは?」

聞かれた太陽神は淡々と答える。

「単純な話だ。」

「前に言ったであろう。あの人間がちょうど良い罪を、背負っているからだ。」

「罪がある事で、異世界での暴走を制限できる。」

「普段こんな真似をしないから。お前も訳を知らなかっただろう。」

「本来は地獄にて、浄化した魂を転生させる。その魂には何のシガラミもない。」

「しかし、罪を背負ったまま送り出すことで、私の力で縛ることが出来る。」

「償いが終われば、縛りからは解放される。」

「償いが終わるころには、あの人間の魂は浄化され、世界をぶっ壊そうなどとは、思わないだろう。」

「なるほど・・・」

月の神が納得する。

「もしも、その時あの人間がどこかの国を滅ぼそうとしたときは、

 その国のほうが滅ぶべき悪という事になる。」

「これは、もしもの話だがな。」

「それともう一つ、ちょうどいいタイミングであの審判の列に並んでいたからだな。」

なんでわざわざ異世界人を送り込むの?って話ですね。

納得できるかは解りませんが、こんな感じです。

魂が澄んでいるか、穢れているか。この世界の神にとって重要なようです。

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