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38 マッチポンプ

マッチポンプとは、

自分で火(問題)を起こしておいて、自分でポンプ(解決策)を持ち出して利益や評価を得ようとする、自作自演的な行為やその人を指す。

らしいです。

 教会に行った次の日。

早朝の訓練終えて、朝食をとった後。

今日は町で依頼をこなそうとハンター協会へ向かった。

すると協会で少々問題が起きていた。

「魔物が町に来た?」

「はい、昨日の遅い時間に確認されたんです。」

「この町と森との間に平原があるのでそこを超えて来たのはまだまだ少ないですが。」

「これから徐々に増えていくと思われます。」

「・・・」

ポリンちゃんの話を聞いて、変な汗が出て来た。

やばいゼッタイ俺たちのせいだ。

「被害は?」

「今現在は西側の畑が少し荒らされた程度で済んでいます。」

それを聞いて俺は仲間たちに向き合う。

「よし今日は町周辺の魔物退治をしよう。」

「了解です。」

皆も原因が想像出来たらしく真面目な顔でうなずく。

「俺はユキに乗って西側全体を見回る。」

「お前たちはスイとエンと一緒に畑や民家周辺を中心に見回ってくれ。」

「わかりました!」

「なので一時的にリーダーをアーロンとする。」

「はい。」

「では装備を整えて急いでいくぞ。」

一時宿屋に戻り装備を整える。

俺は弓を持つ。

ディーンとエディ、アンナも弓で他は武器を持つ。

6人と2匹は固まって行動させる。

「それで俺は町と平原の境目でひたすら魔物を狩る。」

後は頼んだぞ。

「了解しました。」

俺はユキに乗ってアーロン達と別れた。

つまり今回の事件はユキが森の中で大暴れをした結果、

森の魔物達が大混乱に陥りこの町の方角に逃げて来たという事だろう。

「ユキちゃーん?」

猫なで声でユキに話しかける。

「とんでもない事になっちゃったね?」

『ワタシワルクナイ』

「んー?」

『ワタシワルクナイモン』

「とにかく、自分のケツは自分で拭くぞ。」

「走り回って、町に来る魔物を狩るんだ。」

『わかった!』

久しぶりにユキに乗って弓を射る。

鹿とか狐とか猪とか兎、猿などなどの魔物、あとゴブリン、でっかい毛虫。

普通のオオカミに狂走鳥などなどが時間が経つにつれ徐々に増えて来た。

俺はユキに乗りひたすら矢を射る。

和弓はとても大きくこの弓の張りは特に重い。

なので遠くまでスパスパ飛ばせるし、魔物の頭にスパスパ当たる。

ディーンやエディが使っている一般的な長弓とは違い、

下の方を持つので馬上でも使える。

ユキに乗り全速力で走っていてもどれだけ遠くても当てられる。

「久しぶりだったけど腕はなまってなかったな。」

町のはずれにある畑に近い平原をひたすら爆走し、ひたすら射殺す。

他にもハンターが出動しているみたいで、ちらほら見かける。

基本的に狩った魔物は放置する。

死体回収よりもとにかく射殺す。

飛びかかってくるのはユキが蹴とばし嚙み殺す。

そして右手で刀を抜き切り殺す。

「結構多いな。」

20や30は軽く超えた。

どんだけ狩っても沸いて来る。

矢がなくなれば人目のつかない所でこっそり【収納】から補充する。

殺すだけ殺して放置なのでハンターたちからは変な目で見られるが、

そんな事よりもうちのおバカなユキお姉さんのせいで町の人に危害が加わるのは避けたい。

だから手を抜かず大暴れする。

矢が通らなさそうなのはこっそり矢尻を強化して一撃で殺す。

基本的に弓の威力が高いのでよっぽど距離が離れてなければ無強化の矢でも貫通する。


とあるハンターチームその1

「おい!そっちから新手が来るぞ!」

弓使いが叫ぶ。

「もう手が回んねぇよ!」

前衛の槍使いがそう言ってブチ切れる。

「まずい!陣形が崩れるぞ!」

その時。

バシュッ!!

突如襲ってきた魔物の頭に矢が生えて来た。

「助っ人か?」

とあるハンターはそう叫ぶが、周りには誰も居ない。

はるか遠くに白馬に乗って大きく奇妙な形の弓を持った黒いマントの騎手が居た。

「アイツか?」

周囲にはあの騎手しかいない。

「この距離で馬に乗りながら当てられるわけないだろ!?」

「でもあの人しかいないぞ?」

「お前ら!!そんなことはいいから魔物を倒せ!!」

そんなやり取りがあったとさ。


ひたすら倒して回る。

そのうちに町の西側の街道付近で騒ぎが起きていた。

遠目からでもわかる。

20以上のオーガの一団が迫っていた。

ひょっとして魔物達の暴走ってこのオーガが原因か?

町の入り口付近にハンターが集まり迎撃の構えをとっていた。

そこにはアーロン達もいた。

俺は大声で叫ぶ。

「アーロン!!」

アーロンがこっちに気付いた時。

「お前のハルバードよこせ!!」

「ヒロ!!」

隣にいる、アンナに弓を放り投げてアーロンからハルバードを投げられる。

アンナは上手く弓をキャッチする。

俺も慌てつつどうにかキャッチ。

そしてハルバードを構える。

さすがにこのままじゃ町に被害が出そうだ。

なので俺は今大慌てしている。

だから被害が出る前にこいつらは俺とユキが全力で相手する。

オーガの一団の先頭にはボス風のオーガ。

全体的に3m以上の屈強で元気モリモリなオーガ。

獣の皮を体に巻いた風貌でムキムキマッチョで脂肪も筋肉も分厚い。

武器は木や何か獣の角とか骨とかそんな物を使ってる。

正面から迫るオーガが俺たちを捕捉する。

「ユキ!行くぞ!」

ユキが吠えた。

これはぶち殺すぞ!と言う威嚇の雄叫びだ。

ヒヒーンとかそんな可愛いもんじゃない。

ブオオオォォォ!

どうやったらこんな声が出るのか不思議なくらいデカい凶悪な嘶きだ。

オーガたちは咆哮を聞き固まっているが、ボスは別だ。

顔に傷がついたボス。

ん?

顔の傷がなんか見覚えがある形だ・・・

「作戦は相手の大振りの攻撃をジャンプで躱して頭部に肉薄する」

「狙うのは首のみだ。」

俺がそう言うとユキは全速力で走りだす。

競走馬顔負けの速度だ。

そしてボスオーガが叫びながら持っている丸太を片手で横薙ぎに振る。

ゴアアアアアァァァァァァ!

奴さんブチ切れです。

ユキは普通なら届かない距離からジャンプする。

しかしユキのスピードとパワーがあればオーガに届く。

そしてオーガの顔の横に迫りアーロンから借りたハルバードを両手で振りぬく。

ブンッ!!

上手く首の骨の隙間、椎間板をハルバードの斧が通り過ぎる。

スパッ!

勢い余って首の皮がぶっ千切れてオーガの前方にすっ飛んでいく。

そして血の雨が降り注ぎ、殺戮が始まる。

オーガの一団の合間を跳ね回り飛び回り刎ね回る。

首や腕、足、時にはハルバードを強化して胴体をスパッと切る。

まあ長さが足りないので両断は出来ないけど。

そうしているうちにユキはだんだん赤く染まっていく。

時にはユキが蹴り殺し踏み殺して俺とユキは大暴れだ。

幸いオーガは俺に注意を引かれて町の人には見向きもしていない。

そこまで時間が経たずにオーガの一団の討伐を完了する。

最初に首を刎ねたオーガの頭をハルバードの槍部分で突き刺し目の前でよく見てみる。

「これ・・・」

「お前の蹄の跡だよなユキ。」

『ワタシナニモシラナイ』

「ひょっとしてお前に蹴られたオーガが怒ってここまで来たのか?」

『はっ!』

ユキが何か思い出したみたいだ。

『こいついきなり襲ってきて臭かったから蹴り飛ばしたんだ!』

ユキがそんな事を言っている。

『不味そうだったから回収しないで放置したけど生きてたんだね!』

・・・

「つまりお前に蹴られて怒ってお前の匂いを追ってここまで来たのか?」

ユキがうなずく。

結局ユキが原因かと思ったが、オーガが原因だったかと思ったがユキが原因だった。

まあ、そこの流れを知られなければ俺とユキが原因だと分からないよな?

それに人的被害も今の所なさそうだし大丈夫だよな?


とあるハンターチームその2

「まじか・・・」

一同は驚きのあまり口をあんぐり開けている。

その姿は脱兎のごとく飛び回り死神の如くオーガの首を刎ね回っていた。

純白の美しい馬体は次第に鮮血に染まっていく。

「あれは、白馬に乗った黒い死神だ・・・」

どうやらこの男にはハルバードが死神の大鎌に見えたらしい。

「アイツ最近ハンターになった奴だろ?」

「あの金髪の少女を連れているチームか?」

「ああアレに手を出した半グレの顔面を崩壊させたらしいぞ。」

「顔面崩壊?」

「そう、そこそこ厄介な連中だったらしいが一撃でのしたらしい。」

本来オーガはチームで連携して少しづつ弱らせるのがセオリーだ。

それだけ頑丈で強い厄介な相手でオーガ自体が連携する事もある。

しかしアイツは一人でオーガの集団に突っ込み一撃で首を刎ねて回っていた。

そんな事はトップクラスハンターの噂でも聞かない。

この日以降、彼の姿を目撃したハンターはその異常な強さに畏怖し

彼を白馬の黒い死神と陰で呼ぶようになったとか。


俺はアーロン達の所に戻る。

ハンターたちは呆けてる。

突然俺が突撃したので驚くのも無理はないか。

なんか言った方がいいか?

「敵の首魁は打ち取ったぞ!」

俺はそう叫びオーガの首が刺さったハルバードを掲げる。

「残るは掃討戦のみだ!お前ら最後まで気合入れろ!!」

体育会系ってこんな感じのノリ好きだろ?

するとハンターたちは、

「うおおおぉぉぉぉぉ!」

「おっしゃあああああああ!」

「やってやるぞおおおお!」

などと叫び残りの魔物を狩りに行った。

ユキに乗ったままアーロンに近寄る。

「急に借りて悪かったな。」

そう言って首が刺さったままのハルバードをアーロンに渡す。

「いえいえ、さすがにオーガの軍団を単身で討伐はしびれました!」

アーロンがそんな事を言ってくれる。

「お前たちも無理せづ掃討戦に行ってくれ。」

「わかりました。」

そしてアンナが近寄ってくる。

「ヒロさんもお気をつけて!」

そう言って弓を渡してくれる。

「ああ、お前もな!」

そう言って俺はまた走り去る。

その後は特に強い魔物は出なかった。

あのオーガの一団が一番の大物だった。

余り時間も経たずに魔物の襲撃は治まった。

こうしてユキと俺たちのうっかりマッチポンプ事件は無事に解決した。

狩りを終えたあと、協会に戻り最終的な被害を確認したが、

人的被害はハンターのちょっとした怪我だっけだった。

そして俺たちのチームは町の防衛に対応したという事で報酬が出るらしいが、

実際の所ただのマッチポンプなので全額を被害にあった農家や民家の修繕に回してほしいと伝えた。

「ほんとに良いんですか?」

ポリンちゃんは驚いた様な顔で言う。

「はい。皆さん大変な目に会ったでしょうから。」

そんなやり取りをしてしまったもんだからすごく憧れや羨望の眼差しで見られてしまう。

終いには聖人君主呼ばわりされて、協会側の評価が爆上がりしてしまった。

こっちとしては本当に申し訳なく、いたたまれないのだが。

真実を話すこともできないしどうしようもない。

だらか次の日は被害にあった場所を回り復興のお手伝いを、もちろん無償で行った。

そのせいでさらに評価は上がっていくのだが・・・

俺は申し訳なさでいっぱいな日々が続く。

まさにマッチポンプですね。

真実がばれたら大事になりそうですが、

まあバレる事は無いでしょう。

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