30 宿とか色々
前回サラッと出した魔物を軽く説明。
ドードー鳥 2mほどの巨大な走鳥類でキックと嘴で獲物を狩る。
狂走鳥 1m前後の小さめの走鳥類で変な鳴き声を上げながら走ってくる狂暴な鳥。
猪の魔物はまあ普通に魔物化した猪です。
本編でも後々説明すると思います。
ハンター協会を出たら事件が起こってた。
ユキが小汚いおっさんの頭に噛みついてブンブン振り回していたのだ。
やたらおっさんの悲鳴が聞こえるなーと思ったらこんな事になってた。
そしてそれを見てアワアワしている人が数人。
「ユキ!何があった?」
「てか、そんな汚いの食べたら病気にかもしれないぞ。」
そう言いながらユキを落ち着かせる。
小汚いおっさんは泡を吹いて血を流しているが死んではいない。
「あなたはこの馬車の持ち主ですか?」
アワアワしていたうちの一人が声をかけてくる。
「そうですが?」
「実はあの泥棒がが馬と馬車を盗もうとしたんです。」
「あー・・・それで馬に噛まれたと?」
「つまりあのおっさんの自業自得って事ですか?」
「まあそう言う事になります。」
見張りも居なかったからコソ泥に目を付けられたようだ。
「現行犯かつ目撃者が多かったのでそのまま町の治安部隊に突きだそうと思ったのですが。」
「あの馬が犯人を離してくれなくて困ってたんです。」
そうこうしているうちに治安部隊が来て無事コソ泥を引き渡した。
てかこのお兄ちゃん、何か詠唱を始めたかと思えば、
サラッと回復魔法を血を流している泥棒にかけた。
「なんか色々ありがとう!」
声をかけて来た兄ちゃんにお礼を言う。
「いえいえ困った時はお互い様ですから。」
この兄ちゃんは爽やか好青年だ。
「今度お礼をします、私はハンターのヒロです。」
「わたくしはこの町の西側にある教会で司祭をさせていただいております。」
「フランクと言います。」
優しい爽やかな笑顔で自己紹介する好青年ですね。
やっぱり教会の人だ。
「西の教会に居るのか?」
「はい、今度ぜひお越しください。」
「時間が出来たら行ってみるよ。」
って事で爽やか好青年フランクとお知り合いになりました。
フランクと別れてから、御者台にアンナを乗せて教えられた宿に向かう。
宿に到着。
立派な馬房があり、馬車もおいて置けるような場所がある。
宿は豪華ではないものの、清潔感のあるしっかりした宿だ。
一先ず宿の前に馬車を置いておく。
5人は残ってもらい俺とアンナで中に入る。
「いらっしゃい!」
カウンターには春の陽気の様に優し気なおばさんと、
その奥には真夏の日差しの様に厳つい顔のおっちゃんが居た。
「こんにちは、ハンター協会の受付の三つ編みのポリンさん?に紹介されたのですが。」
受付嬢のポリンさんからは自分の名前を出せと言われている。
「そうかい、うちの娘に紹介されたんだね!」
娘だったんかい。
「二人でいいのかい?」
「いえ、7人と犬二匹と馬一頭に馬車一台です。」
「なら8人部屋と馬房一室でいいね、期間は一か月分まとめて払ってくれたら安くするよ?」
「ならそれでお願いします。」
「あいよ!食事は朝晩パンとスープで食べても食べなくても料金はもらうよ!」
「井戸と水タンクは自由に使っていいけど使いすぎないでね、お湯は別料金になるよ。」
使い終わった水はまとめてスライム入りの水タンクに入れて綺麗にし再利用するそうだ。
タンクは複数あって順番に使用済みの水をためていくらしい。
「馬と馬車の在る場所は夜にはカギ閉めるから注意してね。」
「この辺はそこそこ治安がいいから盗人はあまりいないけどね。」
「あと肉料理が食べたいときは肉を持参してくれれば作ってあげれるよ。」
「それか自分で台所を使って料理してもいいよ。」
「わかりました。」
「部屋のカギは二個くらい渡しておくよ。」
「お仲間は外に居るのかい?」
「はい」
「ならまず馬房に案内するよ。」
そう言ってからおばちゃんについていき馬車を外してユキを馬房に入れて置く。
前に・・・
「ユキ!他の馬を蹴ったり噛んだり踏み潰したりぶん投げたりしたらだめだぞ!」
ちゃんと釘をさしておかないと心配だ。
「ぶん投げる?」
アーロン達は首をかしげてる。
「ユキさんはあの小さい鳥、たしか狂走鳥?を蹴ったり噛んだり投げたりしてましたよ!」
そう言えばアンナはユキがあの狂走鳥の群れを倒した所を見てたんだっけ?
「魔物だろうが人間だろうが喧嘩を売ったら怪我じゃ済まないから皆は気を付けてね。」
一応他の馬から離れた個室を借りた。
「あとでまた来るから大人しくしててね。」
馬車に積んである荷物や食べ物を持って部屋に行く。
ベッドは4個2列で8個ある大部屋、アンナは一番奥で俺はその隣、
他は適当に配置する。
一応アンナの暗殺を警戒して一番奥で窓のない方に配置した。
「無事にハンターになれたな」
一先ず一安心だ。
荷物を運び終えベッドを割り当てた後しばしのんびりタイム。
「まさかあの猪があんな金額になるとは・・」
アーロン。
「危険な上、普段は森の中に居て見つけるのが困難なので賞金が跳ね上がってたらしいよ。」
「それに毛皮と二股の牙も相当高く売れるみたいだね。」
ブレッドが答える。
「おかげでしばらくは宿代と食事代は問題なさそうだ。」
盗賊達から拝借したお金と合わせれば金には困らないだろう。
「今日はもう遅いから欲しい物は明日買いに行こう。」
服もあと何着か欲しいし、調味料やスパイス系も調達したい。
「そうだ!あの盗賊達の荷物の中から使えそうなやつ探してくれ。」
そう言いながら大きすぎない物を中心にポンポン出していく。
結構かさばるし仕分けが面倒だから全部【収納】に突っ込んだままにしていた。
「俺はユキの世話をしてくる。」
俺がそう言うとスイとエンが付いて来る。
「アンナも面白そうなもんが見つかったら持ってっていいぞ。」
俺はそういって部屋を出ていく。
「わかりました!」
そう言ってアンナ達は楽しそうに荷物を物色し始める。
馬房に向かう。
馬房は宿屋の裏口を通っても行ける。
「ユキ―!お行儀良くしてるか?」
馬房に入るとユキ以外の馬はユキにビビり倒してる様子だった。
「おいユキ・・・なんかしたのか?」
ユキは『知らね』と言わんばかりにぷいっとそっぽを向く。
「睨んだだけでビビっちゃったって?」
ユキはうなずく。
「まあ・・仲良くやれよ。」
そう言いながらユキをブラッシングする。
真っ白いので汚れが分かりやすい。
ユキは蹄の周りもフサフサなので丁寧に汚れを落とす。
蹄は相変わらずカッチカチだ、鋼より固くなってる気がする。
一切削れたり割れたりしてない。
たてがみもサラサラでブラッシングし甲斐がある。
邪魔にならない様に長くなりすぎる前にブチブチ抜いていく。
たてがみを真っ直ぐに切りそろえるのは本人曰く死んでも御免らしい。
なので適当にブチブチ引き抜いて長さを調節する。
ユキはたてがみにうるさい。
もうちょいこっちを抜けとかなんとか指示が事細かに飛んでくる。
ブラッシングの後、水と食料を置いて馬小屋を後にする。
部屋に戻るとまだワイワイやっていた。
「まだやってたのか。」
足場の少ない部屋の中を通って自分のベッドに腰掛ける。
「服とか俺たちにも着れそうなのがありましたよ!」
アーロンが言う。
「旅に使えそうなバッグも人数分あったぜい!」
カールは相変わらず元気だな。
「まあしばらくは町の中での仕事になるんじゃないかな。」
日雇いの依頼をこなして評価を上げる。
そのついでに町の事も多少は知れるだろう。
アンナは何かを手に取ってそれをずーっと見ている。
「なんかいいものあったか?」
アンナの手には手鏡があった。
小さいけど銅鏡?
「これ魔鉱石を薄く延ばして特殊な加工をした鏡ですよ!」
「魔鉱石?」
「魔力が宿った鉱石の事です。」
「通常の鉱石より丈夫で軽かったりするんです。」
「そして何より魔力の通りがいいので魔法の道具や武器、防具の材料になるんです。」
へー
「魔法の武器?」
魔法が使えないとあまり意味ないんじゃ?
「剣に魔石と魔法陣を埋め込んで切るたびに燃える剣とか、薄くて軽いのにやたら丈夫な鎧とかです。」
「貴重なものなのか?」
「はい!この王国で魔鉱石はほとんど取れない貴重な品です。」
「そんな貴重品を手鏡にしたのか?」
とても綺麗で澄んだ手鏡という所以外はごく普通の手鏡だ。
「こんな風に魔鉱石を薄く綺麗に加工できるのはおそらくドワーフかエルフくらいだと思います。」
エルフは少しわかるけど。
「ドワーフ?」
「エルフは確か王国の西側にある森の奥に居るんだよな?」
「はい!ドワーフはエルフの国の南にある山に住んでいます。」
「ちなみにエルフの森とドワーフの山との両方に接する形でそのさらに南側に獣人の国があります。」
そう言えば商人が使ってたノートあったよな?
「おおよそでいいからこのノートに周辺の地図を描いてくないか?」
そう言って商人の使っていたノートと筆記用具を渡す。
「いいですよ!」
アンナはお行儀よく椅子に座り地図を丁寧に描いてくれる。
さすが貴族ですね。
「できました!」
出来た地図を見せながら色々と説明してくれる。
王国の在る場所から見て北は深く暗い森、東は海岸と大きな半島がある。
南にはこの王国と南の国々を分断するように東西にかけて二つの山脈が並んでいる。
一つの長い山脈のど真ん中をぶち抜いたように二つの山脈の間に深く広い森がある。
西北西にはエルフの森、その南にはドワーフの山と獣人の国。
南の山脈の西端とエルフやドワーフ、獣人の国の隙間はこの王国の支配地になる。
そのさらに南は別の人間の国や魔族の国がありその隙間には砦や要塞が数か所点在ている。
ざっくりこんな感じだ。
エルフ、ドワーフ、獣人、東の半島にある国は元々この王国と友好的だったらしい。
それ以外の南の人間の国、魔族の国はこの王国と敵対しているらしい。
しかし一度にエルフ、ドワーフ、獣人、東の半島、この王国を敵に回すことになるので、
長い間正面からぶつかり合う事は無かったらしい。
そんなちょうどいいバランスが長い間続いたことでどの国も戦争は無く超平和だったとか。
それに加えこの王国は肥沃も肥沃で作物も家畜も元気モリモリで貧困や飢餓とは無縁だった。
多分だがそんな平和ボケのせいで貴族や教会が堕落して悪事を働きだしたのだと思う。
っていうか、そんなことを太陽さんかエルフの爺さん師匠が言ってた気がする。
しかしそんな状況で、エルフや獣人、ドワーフと敵対するような事を考えるって、
貴族たちはこの王国を滅ぼす気なのだろうか?
明らかな悪手であると思います。
そもそも周辺の各種族の中で人間が一番脆弱らしい。
本当にアホです。
っていう情報を皆で軽く共有した。
他の5人はなんとなくしか知らなかったようだ。
ついでにスイとエンもウンウンと話を聞いていた。
お前らちゃんと理解できてんのか?
「そろそろ晩飯の時間か?」
「皆はパンとスープだけじゃ物足りないだろ?」
俺がそう言うと6人と2匹はウンウンと全力でうなずく。
「おっけ、先行って肉焼いてるわ。」
俺がそう言うとアンナもついてきた。
「私もお手伝いします。」
との事、肉と残ってる調味料と材料を【収納】から取り出していい感じの籠に入れる。
「部屋を出る時はカギ閉めてきてね。」
そう言いながらアーロンにカギを一個渡す。
「なくすなよ!」
そして台所に向かい場所を借りる。
フライパンとかも借りれるのでステーキっぽいのでも作ろうか。
って事で猪肉を大きめに切って味付けをする。
ステーキは塩と黒胡椒が基本だが今回は違う。
今回はエリーさん直伝の味付けだ。
なんかちょっと甘じょっぱい感じにする。
アンナには付け合わせの果物と野菜を適当に切ってもらう。
アンナも手馴れて来たようだ。
作っていると宿屋のおばちゃんが覗きに来る。
「あら~!見かけによらず上手じゃないの!」
なんか肩をバシバシ叩きながらほめてくれる。
「猪の肉なので少々臭いかもしれませんが、一枚焼きましょうか?」
焼いている肉を見ながら言う。
「あらまー!いいの!?」
「ごめんねー!おねだりしちゃったみたいで!」
とニッコニコな顔で言う。
台所を借りてる身なので元々あげるつもりだったんだけどね。
焼いた限りじゃ獣臭さはあまり感じない。
その後おばちゃんと三人で雑談しながらさらに盛り付け。
7人と、おばちゃんとおっちゃんで9人分に加えスイとエンにも細かく切って盛り付けたのを用意する。
なにせさっきからずっとよだれを垂らして肉を眺めているのだ。
出来上がるころには全員集まっており、席について食事にする。
パンとスープそしてステーキっぽい肉。
「いただきます。」
俺はそういって食事を始める。
それに続き皆も食べ始める。
エリーさん直伝なだけあってめちゃくちゃうまい。
それに猪の肉も臭みは無くとてもおいしい。
柔らかすぎずしかし固すぎたり筋っぽかったりしない。
食べ応えのある肉だ。
「獣臭さは無いな、」
臭すぎて食べれないとかじゃなくて一安心だ。
「それどころかめちゃくちゃうまいです。」
アーロンが肉を頬張りながら言う。
他のみんなは目を目から涙をにじませながら食べてる。
「おいしいです・・」
アンナもうれし泣きしてる。
おいしいのはわかるけど、女の子がして良い顔じゃない。
カールはパンに肉と野菜を挟んで食べてたりする。
ブレッドやディーン、エディーは比較的お上品に食べてる。
スープも負けず劣らずおいしい。
そんな風に幸せを感じながら一同は食事をする。
ちなみに宿屋のおばちゃんとおっちゃんも大喜びだった。
その後は部屋にある物を片付ける。
使えそうな荷物はそれぞれがとっていく。
「これあげるよ。」
そう言って手鏡をアンナにあげる。
「良いんですか?」
アンナは両手で大切そうに受け取る。
「どうせ誰も使わないだろうし。」
さっき欲しそうにしてたからあげることにした。
「ありがとうございます!大切にしますね!」
元々俺のじゃないけどね、とか余計な事は言わなくてもいいか。
片付け終えたところで就寝する。
ちなみにベッドにはマットとかは無く板の上に敷物を敷いて寝る。
これも後々どうにかしたいなと思った。
周辺の地図をなんとなく説明しましたが、
別に覚えなくても問題ないと思います。
周辺に色々な種族の国があるとだけわかっていただければいいです。
あと宿の料金やハンター業の報酬など、
金銭面の設定は難しかったのでいい加減に書いていたり濁したりします。




