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29 記念すべき異世界初の町

ようやく町に着きます。

 町に近づくにつれて森が開けて平原が広がっていく、

さらに近づくと畑や牧場、民家がちらほら見えてくる。

「なんて町だっけ?」

御者台に座ってるあんなに問う。

「ダニエル・フォン・ヴェスバルト子爵の収める元商業の町、ヴェスヴァルトです。」

貴族の当主はわかりやすいように皆名前にフォンが付くらしい。

「元々エルフや獣人も良く訪れていた町なんだっけ?」

「それは昔の話ですね。」

「現在の教会のトップがエルフや獣人やドワーフやらを下等としたので王国から人間以外が居なくなりました。」

そもそも人間至上主義的なのは今に始まった話ではないらしい。

「まずは宿屋探しか?」

「基本的にハンター協会の周辺に多いので、まずはそっちから行くのもいいと思いますよ。」

アーロンが教えてくれる。

「アンナ、部屋は大部屋一つでいいか?」

年頃の女の子は嫌だろうなと思うけど。

いかんせんお金には限りがあるので節約したい。

「大丈夫です、ただ着替えとかは・・・」

「布かなんかで壁を作ればいいか?」

「はい!そうしていただけると助かります。」

一応同じ部屋の方が安全だろうからね。

「皆さんは変な気を起こさないようにね!」

「何かしたら指を一本ずつ切り飛ばしますからね!」

にこやかに告げる。

「そんな事しませんって。」

苦笑いと共にそんなことを言うアーロンとうなずく一同。

徐々に建物が増えていく。

一番心配していた匂いと糞尿はほとんどなかった。

道の両側に水路があり、道は大雑把に整えられた石畳で出来ている。

家は石と木材とか漆喰とかそんな感じの建物。

大きな外壁の様な物は無い。

今通っている道は大通りなので人が多い。

ちなみにアンナと5人は周囲になじんでいる。

しかしユキと俺はかなり浮いている。

ユキは周囲にいるどの馬よりデカくて白い。

一回りか二回り以上デカい上に真っ白いのでめっちゃ目立つ。

そして俺、黒髪黒目の日本人風の見た目だ。

神の趣味で体を作られたためあくまで日本人風なのだが。

この辺じゃ全く見ない容姿のため人々の視線が気になる。

あと俺とアーロン達5人はでかい。

なのでアーロン達はともかく俺は容姿も相まって目立ちまくってる。

なんか嫌なのでマントのフードを深くかぶることにした。

大きな通りなので店が立ち並んでいて人もそこそこいる。

町の中心に行くにつれて人が増える。

パン、野菜、果物、肉をはじめとした売店。

調味料なんかも売ってる。

衣服、家具、道具、消耗品などもあるし、

飲食店っぽいものや屋台みたいなのもある。

「思ったより物がそろっているな。」

物の充実具合は想像の遥か上を行くレベルだ。

「大きな町なので珍しい品以外なら何でもそろうと思いますよ。」

アンナが答えてくれる。

「欲しい物や足りない物があるなら今日か明日にでも買いに行こうか。」

「良いんですか!?」

アンナはちょっとうれしそうだ。

「無駄遣いはするなよ。」

「はーい!」

この世界の女子も買い物が好きなようだ。

大通りを進む、大通りと大通りが交差する場所を直進してすぐに目的地が見えてくる。

でっかい看板にハンター協会と書かれている大きな建物、

大きな建物の他にも何個か倉庫っぽいのも併設されている。

正面入り口付近に馬車を止めて置く。

「ユキ!人通り多いけど我慢して待っててくれ。」

ユキの鼻を撫でて切った果物を食べさせる。

ちなみにスイとエンは付いて来るそうだ。

フードを脱いで皆で建物に入る。

建物の中は飲食店か酒場みたいにテーブルが置いてある区画と、

受付があり事務作業をするような区画からなっている。

受付から見て飲食店の在る場所の反対側に両開きの扉がある。

倉庫かな?

受付に進む。

やっぱり視線が気になる。

町に入ってから警戒している。

【探索】の魔法を使って怪しい気配がないか注意していたが。

中に入ってから二人ほど他より強めの魔力を持っているのがいる。

一人は駄々洩れ、もう一人は隠してはいるが強めの魔力を感じる。

男女一人つづでそれぞれ別々に座っている。

仲間ではないみたい。

受付嬢に声をかける。

「こんにちは!」

笑顔で挨拶する。

「こっ、こんにちは・・」

なんか顔が引きつっているが気のせいだろう。

「私たち7人でハンター協会に登録したいのですが可能ですか?」

受付嬢は茶髪の三つ編みおさげのちっちゃい女の子。

女の子はどうにか切り替えて答えてくれる。

「はい!可能ですよ!」

「皆さんは初めてのご利用ですか?」

受付スマイルとでも言うべきニコニコ顔で答えてくれる。

「はい、初めてです。」

俺も負けじとスマイルで返す。

「であればハンター登録とお仕事の説明をいたしますね。」

なんか肩が重いと思ったらいつの間にか両肩に双子がのっかってた。

皆の名前を受付嬢に伝えてから説明を受ける

ハンター協会。

正確にはハンター協会兼傭兵協会兼便利屋となる。

様々な依頼を受けて依頼目標を達成するのが仕事。

懸賞金が掛かっている危険な魔物や人を狩ることで賞金を得ることが出来る。

その他はとにかく動物や魔物を狩って素材を売る。

もしくは街道や村を見回って危険な魔物を間引く、

間引いた分だけお賃金を貰える。

そんな仕事内容で動物、植物、魔物、人間を相手にする職業との事。

ついでに日雇いのバイトの様な仕事も有るとか。

元々別で存在したが、ハンターも傭兵も人口が減ったことで合併したらしい。

ハンターは誰でもなれるらしいが昇格しないと大した恩恵を受けられない。

昇格すると受けられる仕事の難易度や重要度が上がるので、

昇格には実力と信頼度そして最低限の教養も必要らしい。

実力があっても評判が悪かったり読み書きが出来なかったりすると昇格出来ない。

昔は一番上のランクだと国家間を移動するための身分証代わりになったらしいが、

今は国家間の関係がギスギスしているので効力が失われている。

ちなみにランクはお金と一緒。

お金はざっくり金貨、銀貨、銅貨。

ハンターのランクも、

ゴールド、シルバー、ブロンズ、の3ランクある。

1ランクごとにそれぞれ三段階の階級があり合計九個のランク分けとなる。

それに加えて初心者枠のアイアンがあるので10段階のランク分けになる。

アイアンから昇格するとブロンズ3の様な感じで、ブロンズ1の次がシルバー3となる。

ちなみにアイアンはゴブリン2~3匹程度、鹿などの普通の動物を狩れる素人に毛が生えたレベル。

ブロンズになってようやく人と交戦するような依頼も受けるようになる。

「昇格する際の条件は、依頼の達成数と依頼達成時の平均的な評価、実力、文字の読み書きです。」

「昇格の際はこれらを基準にして評価いたします。」

「依頼達成時の評価は依頼主が?」

「はい!依頼失敗の場合は言わずもがなで、達成時は三段階で評価します。」

「達成したが文句ありの1、普通に達成の2、とても素晴らしく達成の3。」

「この三段階です。普通に達成していれば昇格に問題は出ません。」

「高評価が多ければ昇格が若干早まります。」

「依頼を受ける際は掲示板に張り出されていますので、依頼用紙をカウンターまでお持ちください。」

「懸賞金のかかってる魔物や人物は依頼掲示板の隣の掲示板に張り出されております。」

お金を払えば対人対魔物用の訓練を受ける事も出来るらしい。

ちなみに訓練場はこの建物の奥に併設されてる。

それと動物や魔物、植物などの情報も確認できるとの事。

「一通り説明を終えましたが疑問が出た際はいつでも聞いてくださいね。」

おさげの受付嬢がそう言うと、鉄板と革のネックレスと、鉄板のカードを渡してくる。

「これらは依頼を受ける際に必ず首にかけて。カードも必ず持参してくださいね。」

「ランクが上がると王都や他の場所での検問に身分証として使えますが。」

「勝手に貸し出したりするとハンター協会から除名されますし、」

「最悪捕まってしまうともありますので置きお付けください。」

「それと皆さんをチームとして登録しておきました。」

「なのでチームであれば少し上の依頼も受けることが出来ます。」

当然ソロとチームではチームの方が有利なのは当たり前だ。

「ありがとうございます。」

軽く頭を下げてお礼を言う。

「早速魔物の素材を買い取ってもらう事は出来ますか?」

「あとこの近くに大部屋を一部屋借りられる宿とか教えていただけたりします?」

って事で、宿の場所を教えてもらった後買い取り所に案内される。

場所は両開きの扉の先。

「買い取りと査定はこちらで行います。」

「素材を売りたい場合はこちらに直接持ち込んでください。」

この部屋には何個かカウンターと大きめのテーブルが並んでいる。

そのカウンターの一つにおじさんが居た。

「すみませーん。新人さんが買い取りをおねがいしたいみたいなのですが。」

おさげの受付嬢がおじさんと話をする。

「おう!随分とガタイのいい奴らだな!」

と元気に笑ってる。

「馬車に積んであるので全部持ってきますね!」

結構かさばるので皆で運ぶ。

二股の牙を持つ猪の素材と、でっかい鳥と小さい鳥の羽毛以外の素材。

全部テーブルに置く。

猪がデカいから結構大変だった。

「町に来る途中狩った魔物なんですが売り物になりますか?」

解体のおじさんと受付嬢が口を開けて放心してる。

「あれ?」

「どうしました?」

次第に正気を取り戻したおじさんが声を上げる。

「これってただの猪の魔物じゃねぇよな?」

「こいつ鹿食ってましたよ?」

追加情報を投下。

「通常の猪の魔物は体高が150cmくらいがほとんどですが・・・」

「これはおよそ2m以上でしかも牙が二股の個体・・」

なんか二人がぶつぶつ言いながら査定を始めた。

「やっぱ猪にしてはでかすぎるよな?」

おじさんと受付嬢は忙しそうなのでアーロンに聞いてみる。

「俺も魔物はあまり見る機会が無かったので普通がどのくらいかわかりません。」

アーロンは猪の魔物を見たことないらしい。

「普通の猪はせいぜい俺たちの腰辺りだよな?」

カールが会話に入ってきた。

「そうだね、何度も狩ったことあるけど普通の猪は大きくてもそのくらいかな」

普通の猪は前世のとあまり違わなかったと思う。

「わたくしもあんなに大きい魔物は初めて見ました!」

アンナは興奮気味に言う。

「アンナがあれと出会ってたら食われてたかもな!」

なんせアンナくらいの鹿をバリバリ食ってたもん。

「それを言うなら私たちも食われてますよ。」

ブレッドが突っ込む。

「あれと出会って無事なのはヒロさんくらいなもんですよ。」

アーロンが言う。

「あいつ頭に矢を二本も当てたのに木とか枝とかへし折りながら突っ込んできたんだよ。」

さすがの生命力だった。

「え!?突っ込んできたんですか?」

ブレッドがびっくりしてる。

「その後、すぐに絶命したけどね。」

牙を掴んで相撲をした話はしない。

「あの頭蓋骨に矢が刺さるんですか?」

ディーンが口を開く。

「まあ・・それは気合と言うかなんというか。」

魔法を使ったのでそこは誤魔化す。

「あ、なるほど?」

エディが気づいてくれたらしい。

ふと気づいたが、肩に乗ってる双子がその体制のまま器用に寝てる。

そんなくだらない話をしているうちに査定が終わったらしい。

「ドードー鳥単体と狂走鳥の群れの素材」

「そして名持の懸賞金のかかった猪の魔物の素材の買い取り価格」

「ブラスで懸賞金の合計がこちらになります」

そういっておさげの受付嬢が差し出してくるのは金貨の詰まった大きめの袋。

諸々合わせておよそ金貨100枚とかなんとか。

「あの猪が懸賞金ですか?」

受付嬢に質問する。

「はい、普段は北西の森の深い所に居るのですが時々この町周辺に来ることがあったのです。」

「その際に人的被害も出てしまい二股の赤い牙を持つ猪が賞金首になったのです。」

「そしてあのようなユニークな個体の素材はとてつもない価値があります。」

「それらを加味した結果金貨103枚となりました。」

「ちなみに解体や後処理が完璧だったことも有ってより高額で買い取りさせていただきました。」

100枚の金貨を鞄に入れる。

ちなみに金貨100枚は大豪邸をポンと一括で買えちゃう金額だ。

「本来であればアイアンクラスのハンターがどうあがいても狩れない個体です。」

「一攫千金を目指して命を落とすハンターもいますのでどうかお気を付けください。」

受付嬢の目つきが鋭くなった。

これはあれか?

他の人から横取りした可能性を疑われてる目つきか?

「安心してください、次からは地道に依頼をこなしていきますよ。」

アンナ以外の5人はさっきからずっと固まってる。

その後受付嬢から条件に合うおすすめの宿を教えてもらってハンター協会を出る。


職員同士の会話

「ポリンちゃん、あの男の事どれだけわかってるんだい?」

解体所のおじさんが受付嬢に質問する。

「バリーさん、あの方は本日始めて来た新人の方です。」

「名前しか把握できておりません。」

バリーと呼ばれたおじさんは少し考えてから話始める。

「あの男の風貌と腰の剣は東方の国の亜人の物と良く似ている。」

「それにあのマントは熊の魔物毛皮だろうし。」

「何より気配がおかしい。」

「注意しておいた方がいいぞ。」

バリーはハンター職から退いてからは解体業を行っている。

なので素材を見る目は確かだ。

「それにあの猪の頭蓋骨にあった二つの穴は矢の傷だ。」

「あの魔物の皮膚と頭蓋骨を貫ける矢など聞いたことがない。」

バリーは元ハンターなだけにあの傷の異常性に気付いていた。

「はい、そもそもあの二股の牙を持つ猪はゴールドクラスハンター向けの賞金首です。」

「それにドードー鳥も狂走鳥の群れも初心者がいきなり狩れる獲物ではありません。」

「行動に注意しておきます。」

雰囲気だけは中世ヨーロッパです。

しかしスライムのおかげで糞尿にまみれた臭い町ではありません。

安心してください清潔です。

よく物語にあるヨーロッパ風の街並みですが、

成り立ちや歴史は全くの別物なので所々違いがあります。

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