28 町への道中2
次の町にそろそろ着くかな?
いつも通り日が昇る前に起きて素振り。
素振りをしていると、アーロンが起きて来た。
「おはよう。」
俺は素振りを続けたまま声をかける。
「おはようございます。」
アーロンは挨拶を返して顔を洗う。
「ご一緒してもいいですか?」
こいつは真面目だな。とか思いながら木剣を二本出して、
一本をアーロンに渡す。
「まずは真似してみろ。」
俺は持ち方や振り方を大まかに教えて真似させる。
エルフの爺さん仕込みの剣術だ。
刀と剣では勝手が違うので、
教える時は俺も木剣を持ってお手本を見せる。
エルフは種族的に魔法が異常に得意、身軽で素早い。
エルフの剣術も比較的そんな感じの身軽で素早い印象を感じた。
ただ、俺は刀以外の普通の人間の剣術を禄に知らないから、
人間のと同じなのか違うのかは知らん。
ちなみにエルフの身体的特性上、
鉄や鋼より軽くて丈夫で魔力を通しやすい特別な金属を使った剣を好むらしい。
アーロンは良く観察出来ているようで、俺の動きをしっかりまねている。
あんなにやつれたうえ俺にボコらたアーロンたちはすっかり元気になった。
思い当たるのは食べた魔物の肉か、この世界の人間が特別丈夫なのか。
「随分元気になったみたいだな。」
俺は素振りを続けながら聞いてみる。
「ハイ!自分でも不思議なくらい元気になりました!」
「多分良いもん食わせてもらったからだと思います。」
アーロンも素振りに集中しながら答える。
「へー、そういう体質なのかと思ったよ。」
「そんな摩訶不思議な体質の人いるんですか?」
「いないの?」
「いないと思いますよ。」
「そっか・・、じゃあ肉がすごかったって事か?」
「魔物の肉なんてよっぽど食ったりできませんから確証は在りませんが。」
「おそらく肉がすごかったんでしょうね。」
「まだデカい猪は食ってないから楽しみだな!」
「ええ、しかし猪は特に臭みが強いはずですが・・・」
「まあその辺は味見してからだな。」
「臭みの強い肉は香辛料と一緒に煮込むのが一般的かな?」
香辛料とか普通は高価なんだろうけど、この世界じゃ簡単に手に入る。
気候の問題で栽培できないんじゃないかって思ってたけど、村じゃ関係なく栽培出来ていた。
なんでやねん。
「それと酒とか塩水とか乳に付け込むのもいいですよ。」
いつの間にか起きて来たブレッドが答える。
「へーそうなんだ。」
「移動中に付けておくか、香辛料と一緒に長時間煮込むかですね。」
「どっちにしろ時間が掛かりそうだな。」
手間がかかるな。
「ただ普通の猪は臭みがありますが」
「魔物の肉ですしちゃんと血抜きをしたのでそれほど臭くないかもしれませんよ。」
「ふーん、思い切って焼いてそのまま食ってみるのもいいかもな。」
俺はそう答えながら【収納】から木剣を出して暇そうなブレッドにぶん投げる。
「暇なら真似してみろ。」
って事で一人追加。
続々と起床した男どもに木剣を渡してひたすら素振り。
俺は途中で朝食づくりのため切り上げる。
布を濡らして軽く体をふく。
パンと野菜と肉。
サンドイッチっぽく。
シンプルに行く。
スープは昨日残らなかったのでなし。
準備ができたので、いつも通りアンナをスイとエンが起こす。
そしてみんなで朝食。
「パンはあまり在庫がなくて、そろそろ使い切っちゃうな。」
誰に言うでもなくぼそっとつぶやく。
「魔法でパンを作れたりするんすか?」
カールがそんな質問をする。
「無から何かを想像できるわけではないよ」
「例えば魔法でパンを生み出したとしても時間がたつと魔力に戻ってしまう。」
無からの創造はそれこそ神の御業だと思う。
「だったらパンはしばらくお預けっすね。」
多分魔法でパンの発酵とかできないよな?
温度とか湿度とか調節できればいけるか?
どっちにしろ今はイーストとかないし無理だ。
「しばらくは肉と野菜になりそうだな。」
果物とかは森で簡単にとれちゃうから甘味もある。
食事を終えキャンプを片付けて移動開始。
相変わらず魔法の練習をしながら移動する。
エンは頭の上スイは膝の上でのんびりしてる。
頭はぽかぽか膝はひんやりする。
「お二人ともヒロさんが大好きなんですね」
「そうみたいだ、ユキが姉ならこいつらは甘えたがりな弟だな。」
そーだぞー!みたいなノリでエンが俺の頭をぺちぺち嬉しそうに叩く。
こいつらすでに成長して結構大きいのにこの甘え方をしてくる。
俺はスイのほっぺたをモミモミして遊ぶ。
そのうち回復とかの神聖魔法も教えておきたい。
【収納】とか使える人間が増えれば俺がいちいち隠す必要もなくなるだろうし。
昨日もそうだったがこいつら上達が早い。
二日目にして魔力の操作にそこそこ慣れてきている。
「戦闘や狩りにはまだ使えなさそうだ。」
「戦闘用の魔法と言うとどんなのがあるんですか?」
双子の一人ディーンが質問する。
ディーンとエディは無口だが魔法の事とかになると興味津々だったりする。
「一般的なのは火の魔法だけど獲物が焼けてしまうので狩にはあまり使えない。」
「だから風とか水で獲物を切り裂いたり、魔法で矢もしくは槍を飛ばす。」
「それか難しいけど魔法で地面の土などを操って相手を拘束すれば武器で安全にに狩れる。」
「あとは剣とか矢を強化する魔法もあるな。」
大雑把で問題ない魔法は今までの方法で発動させて問題ないが。
精密な魔法、例えば精密機械の様に一寸の狂いも許されない魔法の場合、
魔法陣でキッチリかっちり条件を設定して発動させる。
しかしながら魔法陣はめんどくさい一般的な物のはエルフ語とか言う、
エルフすら普段使わなくなった文字を使わなければいけない。
文法も日本語と英語くらい違う。
逆に日本語とエルフ語の文法ってちょっと似てたりする。
「土を操るんですか?」
ディーン。
「そう、土に魔力を注いで操るんだ。」
「水とか空気とかも出来るけどちょいとむずいぞ。」
半年とか一年とかかかるかもね。
「なるほど、色々と応用も出来るのですね。」
「想像力があれば未知の力も使えるようになるかもな。」
思いだの想像力だの感情だのそんなのが力の源になるので、
気合さえあればなんでも出来てしまうかもしれない。
てか【収納】なんて力は常識外れもいいとこだろう。
そんな雑談をしつつ町へ進む。
その後は朝の訓練をしつつ魔法の練習もしつつ数日かけて移動する。
数日後
「日が暮れる前には町に着くと思いますよ」
そうアンナがおしえてくれる。
「魔物の素材を売るのであれば取り出しておいた方がいいですよ。」
ブレッドが教えてくれる。
「そうか、なら素材を乗せるから全員一旦降りてくれ。」
毛皮をはじめ骨、牙なども売れるそうだ。
デカい猪の素材だから馬車の中はぎゅうぎゅうになってしまった。
二股の牙を持った猪とデカいデカい鳥の骨と嘴。
鳥の羽毛は取って置く事にした。
目指せ羽毛布団!
そしてついでに装備を渡す。
首を刎ねた盗賊達からはぎ取った装備だ。
「それとこれ拾い物だけどあげる。」
夜な夜な綺麗にしておいた血や汗手垢とかも綺麗にしてある。
小さな傷以外は新品同様。
丈夫な革製の手袋に小手、ブーツにベルト、同じく革製の丈夫そうなベスト、
剣とベルトに付ける小さなポーチなど。
そんな感じの装備一式を5人に渡す。
なんか言いたげな様子の5人。
「どした?」
アーロンがおっかなびっくりな感じで話始める。
「これ・・・あいつらの装備か?」
ん?
「あいつら?」
「お前たち以外にもあの辺に盗賊が居たんだ。」
「そいつらをぶっこ・・・やっつけた時にもらってきたんだけど・・」
5人は固まる。
「やっつけた?」
アーロン。
「20人近くいたはずじゃ?」
ブレッドもびっくりしてる。
「5人も20人も同じって事よ。」
俺。
「知り合いだったのか?」
盗賊同士のコミュニティでもあるんか?
「はい、一度その盗賊団に合流したことがありまして。」
「そこそこ仲良くなったのですが・・」
「あいつらのやることなす事が過激すぎて早々に抜けて来たんです。」
アーロンが嫌なことを思い出すかのように話す。
「安心しろ、そいつらは今、全員土の中で骨になってる。」
首はどこにやったんだっけ?
忘れちった。
「土の中・・・」
変な病気をまき散らさないように骨になるまで焼いた。
だから本人確認はできないし首もどっか行ってしまった。
「ちなみにその盗賊はどこから来たとか言ってたか?」
問答無用で皆殺しにしたから、そういう情報を聞きそびれてしまったのだ。
「あいつらそういった個人的な話はしてなかったな。」
アーロン。
「おれ偶然盗み聞きしたぜ!」
カールが自信満々に盗み聞きを自白する。
「王都から遥々来たとか、貴族がどうとか。」
「そんな感じの事だった気がする。あんまり覚えてねぇや!」
鵜呑みにして良いのかどうか・・・
「そうか、教えてくれてありがとう。」
チラッとアンナを見る。
アンナは真面目な顔で考え込んでいる様子。
暗殺の話に信憑性が少しだけ出て来たな。
この5人は間一髪で暗殺にかかわる事にはならなかったようだ。
「ところでお友達やっつけた事怒ってる?」
「友達と言うか知り合いってだけなので問題ありませんよ。」
「それに俺たちは皆あいつらが嫌いで抜けてきたのですから。」
アーロンがそう告げるが5人の総意の様だ。
「それなら問題なさそうだな。」
と言いつつアンナの方をチラッと見る。
アンナはうなずいている。
未遂とはいえ気まずいかとも思ったがアンナも問題ないようだ。
「じゃあ行こうか。」
その後アンナに手綱を持たせて、俺を含めた男どもは歩く。
話を聞いた限り中核のメンバーとこの5人以外はこれから行く町のごろつきを集めた集団だったらしい。
同郷とかではないとの事。
そのことで恨まれたりしないようで良かった。
道を進んでいるとすぐに大きい道に合流した。
大きい道にはようやく通行人がちらほらと見えて来た。
さらに進むとようやく町が見えて来た。
なんとびっくり、この5人は村周辺で首を刎ねた盗賊達の元仲間でした。
途中で離別したかしてないかで未来が大きく変わりましたね。




