18 盗賊団
普通なら王国か領主に報告して盗賊に対応してもらいます。
今回は主人公が猪みたいに突撃してるだけです。
現場に残っていた痕跡をひたすら追いかける。
――時間的には夜、すでに周囲は真っ暗。
松明か何かもらって来ればよかったと思う。
ひとまず明かりの魔法で前方と足元を照らす。
ユキは魔法を使わなくても何故か見えていたようだった。
馬って夜目が効くのか?
俺の場合は魔法で周囲を探知できるので、実は目が見えずともどうにかなったりする。
ともかくユキを走らせる。
前にジャックさんに聞いたのだが、数年前もしくは十数年前。
何時頃からかは分からないが、徐々に盗賊などの無法者が各地で増えているらしいと言っていた。
それまではほとんど盗賊はいなかったらしい。
この国の土壌がとてもいいので畑を耕せば豊作で、貧困や飢餓に苦しむこともなかった。
この国の盗賊は、食うに困った人が村や道行く人から食べ物やら生活必需品や金を巻き上げている奴らがほとんど。
なのでお金か物資を渡せばそのまま見逃してくれるらしいのだが。
今回はエリーさんとマーシーちゃんなど村の女性をも攫おうとしていたらしい。
つまり食うに困った村人と言うわけではないようだ。
生きるためではなく、純粋に私利私欲のために殺し奪う類の盗賊だ。
この村は王国全体で見れば端っこの方にあるので、王国の目も届きにくいのだろう。
がしかしそんな条件の場所は探せば幾らでもある。
盗賊や無法者らが増えていると言っても、昔と比べればの話なので現在もそこまで多くは無いのだ。
すなわちこの村はたまたま選ばれてしまったのだろう。
風が木々を揺らす音、ユキの蹄の音だけが周囲に鳴り響く。
かなり走った。すでに血が止まったのか血痕は無い。
月明かりに照らされた足跡をひたすら追いかけている。
こういう時に母犬が居てくれると楽だったかもしれない。
ユキはしっかり痕跡をたどっている、足跡を見ているのか、血の匂いを嗅いでいるのか迷いなく突っ走る。
状況を理解しているのかユキからも怒りを感じる。
道から外れて森に入る。
鬱蒼と木々が生い茂っているわけではないのでスピードを落とさず走り続ける。
次第に明かりが見えてきた。
そのままスピードを落とさずに大斧を持ち、明かりの魔法を消して戦闘態勢に入る。
ユキとなら手綱を握らずとも問題なく戦える。
両手武器をしっかり振るう事が出来る。
見えてきたのは幾つものテントと焚火や篝火。
フードをかぶり直して突撃する。
「悠長に確認をとる必要はない。このまま突っ込む、狙うのは盗賊の首だ。」
冷たく淡々とユキに告げる。
そして怒れるユキが大きく、馬とは思えない声で吠える。
「ブォォォォ!!!」
――同時刻盗賊視点
男は悔しそうな顔で腕の傷を手当てしていた。
「畜生!!こんなにしやがってあの犬っころ!!」
「そんな狂暴な犬が居たなんて災難でしたね。ボス!」
手下風の男が心配しつつ声をかける。
「仲間が二人も殺されたんだ災難で済むか!」
この場で俺はボスと呼ばれている。
始まりは単純な任務だった。
盗賊のふりをして、ある女を殺すだけ。
上司か誰かが手を回してくれるので標的の護衛の数も少ないらしい。
こちらの人数的にも質的にも簡単な仕事のはずだった。
色々あって、途中で盗賊らしき輩を吸収して人数を増やした。
作戦は一発勝負で失敗すれば俺たちが殺される。
本当は俺の部隊だけでやるべき任務だが、確実に実行するために人手を増やしたかった。
任務を命令した上司は作戦が成功するまでは報酬の前払いも準備金も出さないケチな野郎だが。
その代わり路銀を稼ぐため、盗賊活動の許可が出ていた。
なので物資を沢山持ってそうな奴らを何度か襲ったりしてどうにかここまでたどり着いた。
ぶっちゃけ報酬よりもこっちの儲けの方が多い。それに加えて場合によっちゃ女も犯せる。
おいしい任務ではあるのだ。
そうしてどうにか任務を成功させた。
「女にはまだ手を出していないだろうな?」
任務内容は暗殺、しかしながら結果が同じであれば問題ない。
だから、殺す前に久しぶりの若い女を楽しむことにした。
「はい!ふん縛ってとらえてありますぜ。」
気持ち悪い顔で鼻息を荒くする手下。
こいつは途中で拾った盗賊だがなかなかの悪人面だ。
「ところで逃げ出した奴らは見つかったんですか?」
痛いところをついて来る。
「まだだ。捜索中に村を見つけた。そこに逃げ込んだのかと思ったのだが・・・」
作戦決行の前日、全員に作戦計画を話した。
しかしそこまでするつもりはないと言って一部の吸収した盗賊ら数人が反発した。
盗賊なのでそのくらいの腹はくくっていると思っていたのだが・・・
俺はどうにか説得したつもりだった。
しかしその夜、作戦に反発した奴らが夜な夜な逃げ出した。
もちろん殺害計画を知られたのですぐに口封じをしなければならない。
作戦が無事に成功した後、逃亡者の捜索をしていた。
この辺りの土地勘がある者はおらず、捜索は難航した。
そんな時にあの村を見つけた。
旅人だと言って誤魔化せばよかったのだが、手下どもは見つけた女たちに下心を出した。
女に飢えていたので仕方ないとは思うが・・・
そしてあの狂暴な飼い犬に手痛い反撃を食らってしまったのだ。
「じゃあ!あの女の次はその村ですね。」
さらに気持ち悪い顔でにやける手下。
正直自分も死んだ手下も、そこらの村人や犬程度に負けるような訓練はしていない。
そんな手下二人があっさり噛み殺され、俺は右腕を嚙み千切られる寸前だ。
どうにか犬は殺したが、想定外の被害を出してしまった。
手当てをしたが、痛みは治まらない。
女で気を紛らわせようと思った時、大型の獣の様な咆哮が周囲に轟いた。
「ブォォォォォ!!!」
キャンプ中に動揺と衝撃が走る。
「獣か!?」
次第に馬の足音が聞こえてきた。
――主人公
ユキが吠えた。
徐々にキャンプ地が騒々しくなる。
馬の鳴き声には聞こえない鳴き声だ。
おそらく肉食獣か何かと勘違いしているだろうが・・・関係ない。
皆殺しだ。
いくつものテントが立ち並び篝火や焚火で照らされていた。
数は10~20程度で、村の他にも旅人などを襲ったのか、馬車や荷馬車もいくつかある。
突入する。
「なんだおまっ!!」
ズバッ!
言葉はいらない。
ひたすら首を大斧で丁寧に刎ねていく。
ユキのスピードと大斧の重さが乗った攻撃。
首は馬上から狙いやすい。
普通は馬の乗って突撃すると馬を狙われてしまう。
しかし俺とユキは何千回、何万回と死にながら訓練をした。
ユキは迫りくる剣を躱し、蹄で蹴飛ばし、敵を吹き飛ばす。
時には真剣白刃取りが如く上と下の歯で攻撃を止めたり、
相手の首に食らいつき人間一人を軽々と振り回して武器にしている。
ユキの蹴りを食らった奴は骨が砕けるか陥没し、内臓や頭は破裂する。
さすがユキだ。
俺はただ首を刎ねていく。
何人かはただの元村人とは思えない装備と動きの奴が居た。
突撃した直後も迅速に戦闘態勢に入っていた。
しかし俺からすれば十把一からげ、他の盗賊らと同じである。
所詮雑魚。
どうせ傭兵崩れだろう。
キャンプ地を走り飛び回り盗賊の首を丁寧に刎ねて回る。
家畜解体用の斧なだけに、切れ味はしっかりしている。
もちろん刃こぼれしない様に頸椎の隙間を切断しているが。
腕でガードした奴の腕ごと切り飛ばせるほどの威力がある。
俺もユキも無傷のまま体が真っ赤に染まっていく。
せっかくのマントも血生臭くなってしまった。
最後の一人を残し、すべて片付いた。
中心部の大きめなテントの前でプルプルしている奴が最後の一人。
そいつは右腕に血のにじんだ布を巻いていた。
母犬に受けた傷か?
ユキに乗ったまま、そいつに向かってゆっくり進む。
ユキは乱れたたてがみを直すためぶるぶる首を振る。
「ヒツ!」
その男は小さく悲鳴を上げる。
目の前に到着し大斧を振りかぶる。
「何者だきさっ」
ズパンッ!!
何か叫ぼうとしたみたいだ。
しかしすでに首は宙高く舞い上がっている。
他の奴は首の皮を一枚残して首を刎ねて回った。
よくわからんが、師匠曰くその方が上品らしい。
だがこいつは勢い余って刎ね飛ばした。
このまま落下したら顔が潰れてしまうかな?。
大斧を左肩に担いで、飛んだ首の髪の毛を右手で掴む。
幸い長めの髪の毛だったので掴みやすかった。
村に来た奴がこいつかどうか、確認のため持って帰ろう。
こんな物を見せられても迷惑だろうがしっかり確認しなければ。
首を掴んだ直後、体がドサッと倒れた。
周囲には焚火の音がパチパチと鳴り響く、風に揺らされ木々がざわめく。
空には月が輝き、静けさが余計に際立つ。
少し落ち着こうと深呼吸をする。
「すぅぅぅ――はぁぁぁーー」
怒りは少し収まってきたが、それでも感情はぐちゃぐちゃだ。
自分では冷静なつもりだったが、実際そうでは無かったかもしれない。
突然叫び声が聞こえてくる。
「きゃぁぁぁぁ!!」
声のする方を見ると素っ裸の幼女?少女?がシーツか何かを羽織ったまま尻餅をついていた。
仰向け気味に転んでいるので、何もかも丸見えである。
俺は無表情のまま視線を彼女に向ける。
髪の毛は金髪ロングで縦ロール、どこかの御令嬢かな?
じっと眺めていると、プルプル震えている少女の股から何やら液体が漏れ出てくる。
そんなことを気に留めないまま少女は俺を見ながらこう呟く。
「しっ!死神!?」
パタッ!
そうして気を失った。
死神?
殺人鬼とかではなく?
持っているのは斧だが形が普通の斧とは違う形状なので、死神っぽかったかな?
そういえば生首を持ったままだった。
そんなことを考えながら斧を【収納】にしまう。
ユキから降りて、一旦少女を抱きかかえ、テントの中に移動する。
テント内にある寝床っぽい場所に寝かせる。
寝かせた後に気が付いたが、俺に着いた返り血や少女自身の尿で汚れてしまっていた。
清潔な布を出して汚れた箇所と股座をしっかりきれいにする。
赤ん坊のオシメを変えている気分だ。
その辺にある掛け布団は汚く雄臭い。
服も来ていないので寒くない様に熊さんマントを着せてくるむ、
もちろんマントも返り血でべちゃべちゃだったので、【浄化】を使い汚れを落とす。
ていうか、手で股座を拭かなくても魔法で綺麗にできるんだった。
まあとにかく、これで風は引かないはずだ。
おそらくうちの村が標的になる前に襲われてしまった、不幸なお金持ちの旅行者って所だろう。
ここに置いていく訳にもいかない。
少女が起きるまで、死体とキャンプ地のお片付けをすることにした。
魔法は隠すとか言ってましたが。早速明かりの魔法を使っていますね。
やっぱりこの主人公はアホなのでしょうか?
傍から見ればでっかい斧と生首を持った騎手です。
悪魔か死神に見えたのも納得です。その実ただの大量殺人鬼なのです。
この主人公は手に負えませんね。




