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19 事後処理

少し文章が長くなったかもしれません。

後片付けは大事です。

 とにかく周囲が血生臭いので、早急に死体を片付ける。

しかし10~20ほどあるので、先ほど見かけた荷馬車を拝借する事にした。

馬車が数台止まっている場所に行くと、

馬も三頭ほど残っていた。

馬たちは落ち着かない様子でわたわたしたり嘶いたりしている。

おもむろにユキが近づき『黙れ!』と嘶きにらみつけ立ち上がる。

するとびっくり、一瞬で馬たちが静まったのだ。

おそらくこれで静まらなかったら、ユキさん直々の蹴りが入るんだろうな・・・

と考えつつ、いい大きさの荷馬車を探す。

ちょうど良く屋根のない荷馬車を見つけた。

「さてユキ。もうひと仕事頼むよ」

そう言うと、ユキは俺の顔をぺろりと優しく舐める。

『お手伝いするよ。あと臭いのは嫌。』

との事だ。

早速ユキから鞍を外し、ユキと鞍に【浄化】の魔法をかけて軽く綺麗にした後荷馬車を付ける。

キャンプ中を回り、死体を回収する。

触りたくないので魔法でぽいぽい持ち上げて体を荷馬車に乗せる。

立派な装備をしている体の物と思われる首は全部ズタ袋に詰め込む。

有名人か賞金首とかでないかジャックさんに確認してもらおう。

死体を回収した後もしばらく濃厚な血の匂いがキャンプ中に漂っていた。

ほぼすべての首が飛んでいるので血生臭いのは当然だ。

キャンプ地から少し離れた場所に魔法で穴を掘る。

死体から使えそうな装備や金品を回収してから穴にどんどん放り込む。

放り込んだ後は超高火力の炎で死体を焼く。

病気とか感染症とかを気にしているわけではないが、生のまま土に埋めるのは気が引けた。

骨になるまでキッチリ焼く。さっさと焼くために酸素も一緒にぶち込む。

そして骨になったら魔法で土に埋める。

お祈りとかした方がいいのだろうか?

異世界だしスケルトンとかいる?

分からないので取り合えず、掃除以外にも邪悪なものにも効果があるらしい【浄化】の魔法をかける。

成仏してくれと祈る。

その後幾つかの首が入ったズタ袋をキャンプの端っこに放り投げておく、

臭いから帰るときまで遠くに放置する。

死体処理の後はキャンプ中の荷物を漁る。

日用品、貴重品、武器防具などなど、

ユキの荷馬車に積み込み回収していく。そこそこ人数が居たので、量もかなりある。

お金、食料、保存食、調味料、食器、道具、武器、防具、キャンプ用品、それに馬車も大きさが様々なものが数台あった。

ユキが引いていた荷馬車では足りなかったので積み替える。

大きな荷馬車一台にどんどん積み込んでいく、積みきれない物や個人的に欲しい物はこっそり【収納】に入れる。

生活必需品などは村人にも配ろうと思う。

怖い目に会ったんだし当然だ。

お金はも配った方がいいか?

そんな風に漁っていると、商人から奪ったような荷物を見つけた。

およそ盗賊に似つかわしくない荷物だ。

荷物の中身は異国のお土産的な物なのか変な形の品が数点。

その中にひと際目を引く物があった。

刀と和弓である。

この国には存在しないと聞いていたが・・・

刀の長さは前世の感覚で言うと少し長めで太刀くらいの長さ。

ざっと80センチくらいだろうか。

俺は前世よりもはるかに身長が伸びたので、前世基準の一般的な打刀の長さでは少々短いのだが。

これは俺が打刀として使ってもちょうど良い程度の長さだった。

鞘も柄も黒ですごくシンプル。作りも太刀拵ではなく打刀拵だ。

ちょうど帯の様な布があったので腰に巻いて刀を差してみた。

居合も問題なくできる。それどころか丁度いい長さだ。

反りも太刀と言うよりは、長い打刀の様だ。

それに弓の方はしこたま鍛えた俺が引いても少し弱い程度の張りだ。

おそらく常人では引けないと思う。

そもそもこんな所にこんなにちょうどいい刀と和弓があるのは変。

神の仕業か疑う出来事だ。

しかしこの荷物は盗賊が商人か誰かを襲って手に入れた物だろう。

そんな事を神がわざわざさするか?

色々考えたが偶然なのだろうと結論づけた。

さらに物色していると小さい皮で包まれた日記帳の様な物とインクとペンと刀の手入れ道具があった。

日記帳にはこのカタナと弓は物珍しさについつい外国の商人からで買ってしまったと書いてあった。

客からは珍しがられる事はあったが、高いし使うには普通の剣と弓でいいという事でずっと売れ残っていたそうだ。

刀と剣では使い勝手が違いすぎるので仕方ない、弓もかなり張りが強いし。

太陽さんは東の国に刀があると言っていたが、売れ残った挙句、遥々こんな西の村周辺までやってきたという事になる。

丁度いいので刀に和弓、矢筒に矢を貰うことにした。

ちなみに紙って超高級品とかジャックさんが言っていた。

つまりこの羊皮紙を使った日記帳兼帳簿を持っている商人はそこそこ稼ぎの在る商人だったらしい。

その後、盗賊共が連れていたと思われる馬たちに餌と水をやる。

かなり時間が掛かったが片付け終わった。

しかしまだお嬢様風の少女は起きてこない。

「この様子だと朝まで起き上がってこなさそうだな。」

ユキの首を撫でながら言う。

「あのテントの前の焚火で休憩するか。」

と言いユキを引き連れて焚き木の前に座る。

「別行動をしてる盗賊が居るかもしれないし、寝ない方がいいな。」

とユキに告げて、ユキをブラッシングしてユキ用の水や餌を与えた後。

盗賊が持っていた食料と水を取り出し、朝まで寝ずの番をすることにした。

ユキも警戒して横にならずに、立ち寝をしつつ休んでいた。


夜が明けて辺りが明るくなったころ。

テントの中からごそごそと音が聞こえてくる。

お嬢様がお目覚めの様だ。

俺はエリーさんに教えてもらった簡単なスープを作って待っていた。

スープと言っても塩と干し肉をスープに会う野菜やら豆やらと一緒に入れただけのスープ。

ただし、味付けはそれなりに練習したので完璧だ。

テントから恐る恐ると言った感じで顔をのぞかせている。

俺はテントのすぐ前でスープを作っていたので目が合った。

夜な夜な何を言おうか考えていたセリフを言う。

「おはよう!よく眠れたかい?」

となるべく笑顔で言う。イメージは少女漫画の爽やか系イケメン。

実際出来ていたかは分からん。

一瞬ヒッ!っと悲鳴が聞こえた気がしたが気のせいだろう。

お嬢様が俺の着せたマントで体を隠しながらゆっくりとテントから出てくる。

「腹減っているだろ?スープが出来てるぞ。」

と言って器にスープを注いでスプーンと一緒に渡す。

そうしたらお嬢様は用意してあったイス代わりの木箱の上に座る。

「ありがとう。」

と小さい声で返事をしてゆっくり食べ始める。

「君の着れそうなものを分けて置いたから、あとで着ると良いよ。」

と言いお嬢様の近くに荷物を置く。

それを見た途端、堰を切ったように涙を流し始め少女はスープを勢いよく口にかき込む。

何があったのかは知らんが、ろくでもない事に巻き込まれたのは確かだろう。

「まだたくさん有るからゆっくり食べろ。」

と言うと、何度もうなずきながらスープを食べ続ける。

昨日からずっと食べてなかったのだろうか。

作ってあったスープを食べつくした少女は一言俺に言う。

「お花を摘みに行きたいです。」

まあこんなタイミングで花はつまんだろう。

おそらくトイレに行きたいのだ。

トイレなんてないので、拭くためのきれいな布を渡す。

「もう誰も居ないからその辺りにでもしてきなさい。」

となるべく優しい口調になるように言う。

どうやらトイレで合っていたのか、お嬢様はそそくさと離れていく。

その後戻ってきたかと思えば、荷物を持ってそそくさとテントに入っていく。

その間俺は鍋やら荷物やらをか片付ける。

他のテントなんかは昨晩の内に片付けておいた。

大きい荷車一台にまとめて、馬達は紐かなんかで馬車につなげばいいか?

てか馬車の数と馬の数が合わない気がする。

昨日の戦闘中に逃げ出したらしい。

残った馬は三頭ほどいるが、全部ジャックさんか村人らに押し付けてしまおう。

幸いユキのいう事を聞くらしいので、ちゃんとついてきてくれるだろう。

そもそもただの盗賊が馬を持っているのはおかしいと思う。

飼い葉や蹄、体毛の手入れ、などなどお金も時間も結構かかるはずだが。

ただの盗賊にそれらを維持できるとは思えない。

人数が10人以上居たので問題ないのかな?

幸いユキは言い方は悪いがかなりコスパがいいのだ。

盗賊らは馬をすぐに売る予定だったのか、もしくはただの盗賊ではないか。

殺す前に少し話を聞くべきだった。

自分はいたって冷静だと思っていたが。

事の他、感情に流されてしまった。

反省しなければ。

ひょっとしたら重要な情報を持っていたかもしれない。

そもそもこの世界に来た目的は罪を洗い流すためである。

なのに感情的になって問答無用に虐殺するのは、絶対に良くない。

師匠も言っていた。

どんな穢れた魂も、悔い改め善行を積めば変われると。

俺自身も、あの盗賊たちも変わるチャンスが与えられるべきだと。

そういう事なのだと思う。

今後は感情に流されない様にしよう。

しかし人間はそう簡単に変わらないと思う。

俺みたいに後がない状況ならいいが、そうでは無い場合。

説教して逃がしたところでどうせまた同じことをするだろう。

俺は何をどうすればよかったのか。

荷物をまとめながら色々考え事をしていると、テントからお嬢様が出てきた。

紺色のドレスっぽいやつ、裾の長いチュニックっぽい感じ。

そんな感じの奴にブーツと濃い赤色のマントを羽織っている。

さすがに豪華絢爛なドレスではなく普通の旅装束だ。

手には熊のマントと入るときに持っていた荷物を持って出てきた。

俺が荷物をまとめているのを見ながら近寄ってきた。

「これ貸していただきありがとうございました。」

と熊のマントを差し出すお嬢様。

俺は受け取りながら質問する。

「今更だけど怪我はないかい?」

なるべく優しく聞く。

「はい。おかげさまでわたくしは服を奪われて手と足を無理やり縛られてた事以外は何もされていません。」

縛られていたのか。

「そっか怪我がなくてよかった。」

状況的に想像は付くが一応聞いておく。

「細かくは効かないけれど、あいつらに無理やりさらわれたって事であってるかい?」

今更だが盗賊たちの仲間だったりする?

なんかこう、夫の帰りを素っ裸で縛られた状態で待つプレイ的な?

てか縛られてたのなら、あの時なぜテントから出てこられたのか。

「はい。このあたりの村や町を視察中、賊に襲われてしまいまして・・・」

「護衛はやられて、私だけは後でのお楽しみという事で生かされてたのです。」

そりゃそうか、盗賊らは全員男だけだった。

そんな盗賊の中に若い娘が一人だけ仲間に混ざっているのはおかしな話だ。

しかも髪型やら所作やら明らかに、そこらの村娘ではなさそうだし。

「そうか、昨夜はどうにかテントから脱出できたみたいだけどどんな手を使ったんだい?」

とやんわりどう脱出したのか聞く。

「縛り方が下手だったのでタイミングを見て脱出しました。」

盗賊らが間抜けなのか、罪悪感からあえて緩く縛ったのか。

「なるほど、それで生首を持った俺に驚いて、気を失ってしまったという事ですね?」

と言うと顔を真っ赤にしてうなずきながら答える。

「はい・・・そうです。」

なんか申し訳ないことをしたかも。

「そうかその件に関しては驚かしてしまい。すみませんでした。」

と頭を下げる。

「驚かすつもりはなかったんです。確認のために首が必要だったので回収しただけだったんです。」

首実験と言うやつだ。

誤解を解くようにそう言うと、お嬢様は手を前に出してパタパタしながら言う。

「いえいえ、こちらこそその後テントの中まで運んでいただきありがとうございます。」

とまた顔を赤らめながらお礼をする。

そういえばあの時素っ裸だったな。

話題を変えるためか別の質問に映る。

「それで、賊たちはもう追い払ったのですか?」

「昨晩、現場に居た奴らは埋葬済みだ。」

主要メンバーらしき奴らは確認のため首だけは持って帰るつもり。

臭かったので袋を何十かにして【収納】に放り込んだ。

気分的な問題で生首を【収納】に入れたくなかったが、臭かったので仕方なく入れた。

すると驚いた顔でお嬢は言う。

「すべて、倒してしまったのですか?」

多少装備の違いはあれど、どいつも十把一からげだ。

「はい。さすがにあの数を生かしたままとらえきれないので、やっつけて埋めました。」

サイコパスだと思われない様に致し方なかったという事にする。

あとなるべく殺すとかは言わない方向で。

「大人数とはいえ私の護衛を倒すほどの腕前ですのに!!」

とかなんとか言って驚いている。

それはあなたの護衛が弱いだけでは?って思った。

言いたいけど言わない。

それが気遣いである。

「きっと。盗賊たちが疲れていたのか、酔っぱらってたのでしょうね!」

疲れていた様子も酒を飲んでた様子もなかったけどね。

「それに、不意打ちだったので簡単にやっつけることが出来たんでしょう!」

真面目に考えるとこの線が妥当。

キャンプで完全に気を抜いている状態で、突然白くてデカい馬に乗った大斧を振り回す不審者が現れて、大暴れしたのだ。

完全に不意打ちだろう。

プロならいざ知らず、素人なら対応できなくて当然だと思う。

「それでもすごいです。」

と目をキラキラさせてこちらを見るお嬢。

あなたの目の前にいるのは深夜に大斧を振り回す不審者ですよ!

と思いつつ答える。

「とにかく大きな怪我がないようなので、荷物をまとめて近くの村まで移動しましょう。」

ジャックさん達も心配してるだろうからさっさと帰ろう。

そういえばこの子はどこから来たのか。

「家はこの辺ですか?」

「いいえ。家まではかなり遠いので、よろしければ暫くお宅にお世話になってもよろしいですか?」

と真面目な顔でお願いされる。

「実は私は近くの村で居候している身なので、家の主人に聞いてみますね。」

ジャックさんならいいよって言ってくれそうだが。

「はい!ぜひお願いします。」

という事で、さっさと荷物を大きな荷馬車に積み込む。

それ以外の馬車は、【収納】に突っ込む。

【収納】に入りきるか心配だったがあっさり入った。

容量はどうなっているのか。

元々入っていた荷物も有るのにまだまだいけそう。

お嬢にも手伝ってもらいつつ、キャンプ地の後片付けを終えた。

ユキを荷馬車に付ける。

幸い豪華な馬車以外は一頭立ての馬車だったので、こっそり拝借した数台の馬車は全部ユキにひかせることが出来る。

「さて帰ろう。」

他の馬を紐で馬車につなげる、ユキのおかげで大人しくしてくれている。

御者台へ先に乗り込むみ、どうやって登ろうかとアワアワしているお嬢を上からひょいっと持ち上げて隣に乗せる。

「ありがとうございます。」

とお礼を言われて出発。

ちなみに鞭でも操縦できるが、ユキは声で十分なのだ。

「ユキ!村に帰ろう!!」

と言うとユキが馬車を引っ張り始める。

すでに心の中で様は取れて、お嬢呼ばわりしている。

刀!和弓!これらが偶然手に入りました!

こんな他国の正反対の場所に流れ着くなんてスバラシイグウゼンデスネ。

まあご都合展開と言われても否定はできません。

それとこの高貴なお嬢様は何者なのでしょうね。

衝撃の出会いをしておいてモブの可能性も十分あります。

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