12 人里
第一村人に会えるのか?
無事に人里に行けるのか?
「水がある場所知ってる?」
と母犬に聞いてみる。
するとこっちだよ!といった感じで案内してくれる。
「おっ!しってるのか!」
この辺には詳しいらしい。
暫くの間母犬についていく。
するとあっさり川に出る。
「え゛!」
結構近くにあったんだな・・・。
ユキから降りる。
ユキは少しあきれている様子。
ユキの様子を察するに俺は道に迷っていたようだ。
ユキも教えてくれればよかったのに。馬だし無理か。
とか失礼なことを考えてたら、ユキに頭を軽くどつかれる。
「いてっ!」
はいユキに聞かなかった私が悪いです。
とにかく水分補給をしようと思う。
いつも通り場所を決めて火をおこす。そして魔法でキャンプっぽいのを立てる。
柔らかくした地面に母犬を案内した。
妊婦さんにはゆっくりしてもらう。
ユキの装備も外し馬具を丁寧に拭く。
そして本題。
「川の水は煮沸したいけど、どうやって煮沸するかが問題だよな・・・」
少し考えたがごり押しでやることにする。
川の水を直接操る。川の水をでっかい水の玉にする。
それを火の魔法で、じっくりコトコト煮沸消毒。
水の多くは入れ物などに入れずに直接【収納】に入れている。
なので同じように【収納】に入れる。
ごり押しだが一旦水問題は解決した。
一連の作業をやっていて思ったのだが。
これができるなら、焚き木はいらなかったかもしれない。
料理は炎の魔法でもできるし明かりも魔法で用意できる。
まあ気分は大事だ。いざとなった時の練習だ。
とか色々と誰にするでもない言い訳を考える。
ユキはここ数日間ブラッシングだけだったので。
たまには水で体全体を洗ってあげる事にした。
川の近くで水魔法を使い馬体を洗っていく。
久しぶりだったので、ユキは気持ちよさそうだ。
かなり表情が緩くなってる。
「気持ちいいか?」
そう聞くとユキは唇をぶるぶるさせている。
多分喜んでいる。
ついでに俺も、川辺で体を洗う。
素っ裸になり魔法の水をド派手にかけて、布でごしごしする。
もちろん石鹸はない。
洗い終わったら布で拭き、仕上げに浄化魔法。
これでいつもより清潔。ついでに服も浄化。
服は洗剤、石鹸もないので、浄化魔法で終わり。
これで土汚れも汗も取れてしまう。
ちなみに服装は、ズボンに靴下、ブーツ、ベルト、シャツっぽいやつ(チュニック?)腰より下くらいの丈。
そんな感じの服装。
合成ゴムなんて無いのでベルトや紐で服を固定する。パンツはいつものフンドシです。
シャツの上からベルトを締めてベルトの左に剣右にナイフを差している。
服に浄化魔法をかけていて思ったが、川の水も浄化魔法できれいにできたんだった。
浄化魔法は基本的に体に悪い物や汚れをきれいにする。
つまり面倒なことをせずに綺麗な飲み水にできるのだ。
なんかこう思考が現代人過ぎて色々余計な手間をかけている気がする。
その後はいつも通り。食事をして寝る。
寝る前に母犬をブラッシングさせてもらう。
特に嫌がる様子もなく触らせてくれる。
そして寝る。
何かあれば起きれる程度の浅めの睡眠。
季節が存在するのか分からない。季節があるのなら寒くなる前に人里に行きたい。
次の日キャンプを片付けて移動する。
「お腹はまだ大丈夫か?」
と母犬に聞いてみるが。まだまだ動いて大丈夫な様だった。
「人里の場所とか知ってる?」
とさらに母犬に聞く。
言っていることが分かるのか。
母犬は案内してくれる。
とにかく、母犬が安心して子供を産めるような場所を確保したい。
母犬は俺に対して特にストレスを感じてなさそうだが。
人がたくさんいるのはどうだろうか?
嫌だった場合、図々しいとは思うが空き家か空き部屋を貸してもらえると嬉しいな。
最近は解体が面倒なので、でかい動物は狩っていないのだが。
この辺りにはいろいろいる。
鹿にイノシシやなんかぽよぽよした生物など、一度狼も見かけた。
それに昨日は熊もいた。
異世界の文化レベルがどんな感じかよくわからんが。
その辺を定期的に狩って渡せば、どうにか居候か空き家を貸してくれるのではと考えてる。
もしかしたらベジタリアンかもしれない?そんなことはないと思うが・・・
暫く母犬についていく、道中にそこそこの大きさの鹿がいた。
首をスパッと切断して、手見上げ代わりに狩っておいた。
下処理をして【収納】にしまっておく。
しばらく移動した。
昼過ぎの夕方前くらいの時間。
結局道にはたどり着かなかったが、畑と家が見えてきた。
放浪の旅数日目にして農村の様な村が見えてきた。
畑には様々な作物が成っている。畑仕事をしている人がぽつぽついた。
畑には様々の種類の野菜があり、中にはトマトやジャガイモっぽいのまで様々ある。
明らかに見たことのない野菜まであった。よく知らないけどこんなにたくさんあるのって普通?
さすが異世界といった感じ。
「ユキ!ニンジンもあるかもな。」
と言ってみるが、当のユキは何それって感じで首をかしげる。
ユキは基本的にその辺の雑草か肉を食べてる。
肉も食べれて消化できる特別製の馬だが。
なんでも食べるので今だに何が好物かが分からないのである。
村の家は、藁の屋根に白い壁、漆喰かな?
途中に家畜なんかも居て色々やっている村らしい。
家が集まている場所に到着。おそらく村の中心部だと思われる。
そこに数人の村人がいた。
休憩中なのか集まって談話している様子。
その一団に声をかけてみる。
「こんにちは!」
すると、気のよさそうなおっさんが挨拶を返してくれる。
「おいっす!こんなところに来るなんて、ハンターかよっぽどの暇人か?」
と笑いながら返してくれる。ここはこんなところらしい。
「西の方から来たのですが。途中で拾ったペットのお腹が大きくなってしまって。
図々しいとは思いまずが。出産するまで、空き部屋か空き家を貸してはいただけませんか?」
と直球で聞いてみる。
周囲の人も人が良さそうにニコニコしながら母犬を眺めてる。
「うーん!奥さんに聞かなきゃ分からんが。うちに空き部屋がある。それで良ければ貸すぞ!」
旅人を特に警戒していないのか。
思っていたよりも、あっさり許可してくれた。
「馬小屋もあるからその白くてデカいのも一緒にいいぞ!」
ユキの事だ。
「ありがとうございます。」
「あとこれ、つまらないものですがお近づきのしるしです。」
と言いながら、さっき狩ったばかりの鹿を【収納】から取り出して渡すと。
一同「おおぉー!」「魔法は初めて見たぞ!」「でかい鹿だ!」
など声が上がった。普段気にせずに使っていたせいで忘れていたが魔法は見せない方が良かったんだ!
【収納】は特に気負付けなければいけないと事前に言われていた。
【収納】は珍しいとの事だったが、存在を知られて無い訳ではなかったらしい。
「容量は少しですが一応使えます。」
と言ってごまかしておく。
「やけに荷物が少ないと思ったら。そういう事か」
「ありがたくもらっておくよ!」
とかなり喜ばれた。
「おい。ジャック!独り占めすんなよ!」
と周りからヤジが飛んでる。
「わかってるよ!あんた、とりあえずついてこい。」
と俺に言いって移動する。
中心部から少し離れたところに向かって歩く。
そこには大きめの家があった。
家畜が居て畑もある。
羊、山羊、鶏などを飼育している。
「この村は、畑と家畜が収入源ですか?」
「基本的には畑で家畜はおまけだな。」
「それらを食べたり売ったりして、生計を立てている。」
「売るっていうと。近くに大きな街でもあるんですか?」
「近くはないが、数日の距離に町があるぞ。規模はふつうじゃないかな。」
「野菜はそこに売るんですね?」
「そうだ。基本的には行商人に売ったりする。」
「狩りをしたりは?」
「畑の片手間で狩りをしてる奴らもいるが、罠で小さいのや大人しそうなのを狩るだけだな。」
などと会話をする。
「それなら家賃替わりに鹿かイノシシの肉と毛皮はいかがですか?」
「狩ってくれるって事か?でかい新鮮な肉はあまり食えないから何日か置きに狩ってくれるだけでも助かるよ。」
「あと、うちの馬も元気なので、力仕事も出来ますよ。」
「こんだけデカけりゃなんでも出来そうだな。」
「餌は多少あるから食わせてやってもいいぞ。」
「ありがとうございまず。その辺の雑草で足りなかったら、少しいただきますね。」
「馬小屋に置いといてやるよ!」
そんな話をしながら、家に向かう。
若干間抜けな主人公感が出てますが色々初めてなのでご容赦ください。
川の水は動物の死体なので汚染されていることも有るとか。
なので直接飲むのは避けた方がいいですね。
村人は警戒心が無いのかお人好しなのか優しい方ばかりです。