笑顔になれる魔法
小学生の頃に友達と喧嘩をした帰り道、泣きながら歩いていた僕にその女の人は話しかけてきた。
この世のものとは思えないほどに綺麗な人で、なんだか彼女の周囲だけ輝いて見えるほどだった。
「笑顔になりたい?」
見惚れている僕に彼女はそう尋ねてきた。その言葉に僕は、友達と喧嘩をして悲しいのに笑顔になれるの? 聞き返す。
女性はもちろんと頷いた。
「なら笑顔にしてみせてよ」
女性はうんと頷くと、僕の顔に軽く触れてこう言った。
「笑顔になれる魔法をかけてあげる」
翌日学校に行った僕はいの一番に喧嘩してしまった友達に謝りに行った。友達はニコニコと笑いながら僕と仲直りをしてくれた。
ああ良かったとホッとした僕が、ふとなにか違和感を覚えて教室を見回してみると、見る人見る人の大半がニコニコと笑っている。僕も含めて、笑っている人たちはみんな昨日あの女の人に会ったらしい。
それ以来僕たちは全員、どんなに悲しいことがあっても、なにがあっても笑っている。
多くの子どもたちに笑顔になれる魔法をかけた天使は天国へと帰ると、人々を笑顔にしろという仕事を完璧にこなしたと自分を労っていた。
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