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睡蓮  作者:
6/50

世界

1.「名前なんてどうでもいいんだよ!」「わしの名前は・・・おっ、あそこじゃ。みてみい」「あの女子高生がなんなんだよ」「先ほどまでサラリーマンも見たんじゃかな」「俺と肩をぶつけたって?」「そうじゃ。はて?別れたのかの?」「なんか変な男がついてきてるぞ」「お主ならどうする?この状況」


2.娘が背中を見守っている。久しく会話もなかった日々。父親としての貫禄を見せる絶好のチャンスだ。娘にカッコイイパパと言われたくて今まで頑張ってきた。幸福になる準備はしてきたつもりだ。そろそろ幸福を味わう機会を与えられてもいい頃だ。私の足取りは軽かった。


3.「わしが思っていた状況とは少し違っているが、さてお主ならどうする?」「そりゃ助けるよ。明らか女子高生怯えてる顔してるしな」「僕もそう思います。一緒に行きます」「お前はここにいろ」「お主一人で行くのじゃな」「当たり前だ!」「安全かの?」「うるせい。俺が一人で助ける」


4.「どうでもいいけど、僕のが年上じゃないか?君高校生だろ?」「なんでわかんだよ」「立ち振る舞い、言動、すべてが幼稚だ」「幼稚だ?俺はおふくろと妹をクソ親父から守ってる。この俺様に向かって幼稚だと!」「ああ、幼稚だ。何度でも言ってやる。君は目先の正義感を振りかざしてるだけだ」


5.「あ、あの・・・突然お邪魔してすみません」高校生?大学生?くらいの男の人。こんな時に不謹慎だけど、ちょっとタイブかも。心配そうに私を見つめている。あ、まず事情を話さないと。えーと、変な人に追われていること。道に迷って気がついたらこの家に入っていたと。それから。


6.完全に見失った。しかたない。ポチに餌をあげに行くか。しかし、あの親父はなんだ。距離がどんどん迫ってる。俺に用か?俺はあんな中年サラリーマン知らないぞ。厄介ごとはごめんだ。さっさと移動しよう。くそ!なんで同じようにスピードを上げてくるんだ。まるでストーカーじゃないか!


7.えっなんだろう?この違和感。すごい怖い。あの人ストーカー?ずっとこっち見てるんだけど、キモ。あの女の子もこんな気持ちだったんだよね。助けようとした私が同じ立場になるなんて・・・。え、なに、その後に男二人とおじいちゃんいるじゃん。助けてくれないかな・・・。気づいてー。


8.「ママ、もうすぐおうちだね」「そうね。夕飯は何にしようかな?卵ないからチャーハン作れなくなっちゃったね」「お兄ちゃん怒るかな?」「そうねー。ママのチャーハン日本一って言ってくれるもんね」「ママ、昨日もチャーハンだったよ」「そりゃ喜んでくれるなら」「オムライスわぁ?」


9.井戸端会議の三人組。年齢層はバラバラだ。高校生、大学生、老人?これは新手のおやじ狩り?いや特殊詐欺?それならお年寄りは被害者だ。しかし様子がおかしい。お年寄りには余裕すら感じる。では、師弟関係か?しかし、何を教えている?まさかこれから特殊詐欺を実行するつもりか。年寄り指導の?


10.「あっ!よかったらどうぞ。中に入ってください」「あ、でも・・・」「いいんです。何かあったんでしょ?顔を見たらわかる」「あ・・・すみません。お邪魔します」「狭い家ですけどゆっくりしてください。母親が買い物から帰ってきたと思って」「あ、ああ、すみません・・・」「いいんです。で?」


11.もう暗くなってきたな。うん?ニット帽の男をさっきのサラリーマンがまだ追いかけてる。女子高生どこ行った?ニット帽が追いかけていた女の子は?これは競歩鬼ごっこ?今はそういうのが流行ってるのか?人と違うことをすると注目を集められるってことか。インフルエンサーのさきがけ。なるほど。


12.私はゆっくりと彼女に近づいていく。なんで怪しんでいるんだ?困った人間を助けよとする人間にその目はあまりにもひどすぎる。なんとしても事情を聞かなければ。彼女は恐怖で身動きがとれないようだ。あと五メートルほど。事情を聴いて君の力になりたい。大丈夫だ。きっと大丈夫だよ。






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