おわりのはじまり
「律子さん・・・」
マイケルがそうつぶやいたのは、洋一が山村親子を見て愕然とした直後だった。
「律子さん、僕を覚えていますか?」
ソファーに腰かけている桜子にゆっくり近づいていくマイケル。
「ママー!この人さっき話しかけてきた変な人?」
娘の美弥が不思議そうな顔をした。桜子もまるで不審者を見るような目でマイケルを見つめる。
「やはり覚えていませんか。あなたの卵焼きは今も忘れられない」
「卵焼き?私が作ったのかしら?」
「そうです。お店に持ってきてくれた」
「お店?」
「ジャパニーズバーです」
桜子は少し考え込んだ後、ハッとしたように顔を上げた。
「キャバクラ時代のお客さん?」
「ママ、キャバクラってなに?」
「あ、ああ・・・みーちゃん、ちょっとお兄ちゃんと遊んできてくれる?」
「うん」
「孝之、ちょっとみーちゃんの相手してあげて」
「えーやだよー。空手家になる将来をあきらめたダメ娘と、ストーカーからかくまってあげた恩を仇で返す失礼整形女の相手はこりごりだ」
「失礼整形女って私のことですか・・・」
「貴様!人の妹を!刺してやろうか」
「警察呼んでやろうか!」
孝之と西門寺は胸ぐらを掴み合っている。
あきれたようにこの光景を見ていた和馬と洋一は玄関を見た。
「もう帰るか。じいさん外で待ってるんだろ?」
「あ!忘れてた!そうだよ。早くもどらなきゃ」
マイケルが桜子を見つめる。
「律子さん。またあなたの卵焼きを食べさせてもらえますか?」
「マイケル?」
「そう!マイケルです」
「なに!久しぶりじゃん!元気だった?うちが知らない間になんかまたイケメンになったんじゃない?え?でもさ、久しぶりだよねー。今、仕事何してるの?孝之、美弥の相手してて。卵焼き今から作るわね。あ!卵ないんだった。卵買ってこないと。あ!チャーハン食べる?」
「母さん。キャラ変わった・・・」
「ねぇ?みんなチャーハン食べていかない?まだ余ってるの」
和馬と洋一も気づけば空腹だった。
「チャーハンか・・・」
「食べてくか」
「うん」
「老師、呼んでくるよ」
洋一はそう言って玄関に向かった。
「あたしたちも食べていっていいですか?」
響子は桜子にそう言った。
「こらこら、ご迷惑になるだろう」
「いいんです。私も料理好きで今日は夫も帰ってくるの遅いですし」
山村のお腹がなった。
「パパ、お腹空いてるじゃん」
「・・・い、いや」
「じゃあ、マイケルとお嬢さんとパパ、青年二人と兄妹の七人分でいいかしら?うちの子たちはもう食べたから」
「俺も食べていいのか?」
「黙れ!拉致監禁野郎」
「おばさん。私はご馳走になりましたよ」
「あ、ああ。そうだったわね。失礼整形女」
「そんな言い方・・・」
「じゃあ、六人分ね。少し待っててね。あっ!テキトーにくつろいでてください」
一同は桜子にうながされるままソファーや椅子に腰掛けた。
しばらくしてインターホンが鳴った。




