愛
今まで玄関の隅にいた響子がリビングに駆け寄ってきた。
「なんか兄と妹の久々の再会っていいねー。なんか泣けるー」
西門寺と智子を見つめる響子。
「お兄ちゃんもちょっと痩せたんじゃない?」
「あ、ああ。まあな。お前本当に恵美なんだな・・・その声が懐かしい・・・」
「うん。久しぶりだね。私も色々あって、顔も変えたし、家柄も違うから」
「今までどこにいた」
「それはまた今度話すね。ここではちょっと・・・」
「そうだな・・・」
「でも、とてもいい家よ。大学にも行かせてもらってる。血のつながりはないけど、本当の家族みたいに仲良くやれてる」
「なんで居なくなった?」
「それはいいたくない・・・というより、あの家に居る意味がわからなかっただけ。きっとそんなこと言ってる私の気持ちもお兄ちゃんからしたら意味不明なんだよね・・・理由もなく居なくなりたいって誰にでもあることなの。まあ、あんまり深く考えないで。私は元気だから」
二人の話を静かに聞く一同。
「ちょっと何言ってるかわからないぞ。あの子」
響子がふと父親をみた。
「パパ!」
驚く山村。
「この人のロープほどいてあげて!」
「しかし・・・」
「いや、あきらか兄妹でしょ?ストーカーじゃないの。ロープほどいて」
響子の言葉に戸惑う山村。
「ロープほどいてあげてください。お騒がせしてすみませんでした」
智子はそう言って頭を下げた。山村は智子に促されるままロープをほどく。
「本当に兄妹なんだろうな」
山村は最後の念をおす。
「どう見たって兄妹だろ。さっさとほどけ」
西門寺はイライラした様子で山村を睨みつける。
「パパ!」
「なんだ?」
ロープをほどいた山村に響子が声をかけた。
「実は隠してることがあるの。今の女の子の話聞いて。ジーンときて・・・あたしは恵まれてるって思ったの。彼女の事情はよくわからないけど、あたしは彼女に比べたら恵まれてるなって思ったの。だから、ごめんなさい」
山村は頭を傾げた。
娘は何を言い出したのだろうと思った。
「だからあたり正直に話すね。あたし、パパ活してるの。パパの上司と」
山村は言葉を失った。
彼女は何を言い出したのだろうと全員が思っただろう。
「パパ活?」
和馬がおそらく無意識につぶやいた。
「パパ活って『売り』だよな。売春ってやつ?」
「いや、パパ活にも色々ある。ただ、金関係はあるだろう」
「あいつも、やべー奴だったんだ。この家にまともな奴はいないのか」
洋一はあきれたように山村と響子を見つめた。
山村はおもむろに重い口を開いた。
「知ってたよ。響子。すべてな」
「知ってたって。おっさん」
和馬が山村に問いかける。
「それが親子関係の直感って奴だよ」
和馬は納得したように頷いた。その光景を見て洋一は首をかしげながら考え込んだ後、再びこう言った。
「親父もやべー奴じゃん」




