すれ違い
「和馬!大丈夫だったか!」
「ああ、洋一。このとおりだ。心配かけたな」
洋一は和馬に駆け寄った。
「しかし、どうなってんだよ。この状況」
「あ、ああ。俺もよくわからんのだが、お前と西門寺が外に出た後、急に向井がお茶でも飲もうと言いだして」
和馬は向井を見ながら続けた。
「それで、おばさんがお茶の支度しようとしたんだけど向井が「自分がやります」って言うもんだから、変だなーとは思ったんだけど。みんな向井が出したお茶を飲んだんだ。そしたら女子の三人だけ気絶した」
「お前も飲んだんだろ?」
「あ、ああ・・・」
首を傾げながら洋一と和馬は向井を見た。
「変態野郎」
「誰が変態野郎だ!」
和馬は洋一に包丁を渡して向井の胸ぐらをつかんだ。
「犯罪野郎に変態と呼ばれる筋合いはねぇ!」
「なんでお前だけ睡眠薬が効かないんだよ。ちくしょう!俺の計画じゃ全員眠らせて計画練るつもりだったのに」
「それは俺に言われてもな」
「まあ、いい。これで俺の計画は失敗だ。これから豚箱に行くさ。まあ、でもな、刑務所は雨風しのげて三食飯付きでテレビも見れるっていうから快適っちゃあ快適かな」
「こいつ嬉しそうだな」
洋一はあきれた様子で向井を見つめる。
「変態野郎だ!おかげで俺は殺されかけた」
「まあ、いいじゃん。無事だったんだし。ね?みんな」
洋一は玄関先にいる山村、マイケル、西門寺、響子を見た。
智子、桜子、美弥も安堵した表情をしている。
「さて、どうする?」
洋一は和馬に尋ねた。
「警察に突き出すしかないだろ。こいつら二人」
「ストーカー野郎と、拉致野郎ってか」
洋一は納得したように山村を見つめた。
「ああ、連絡済みだ。まもなく来るだろう」
山村はそう言って縛られた西門寺を見た。
「あの・・・」
智子がニット帽の西門寺を見てそう言った。
「もしかして、お兄ちゃん?」
智子の言葉に一同は目を丸めた。
「あ、いや、俺は君のお兄ちゃんではない。確かに妹は探しているが」
「あたしよ!恵美!」
智子は自分を指差し『恵美』と名乗った。
「恵美って俺の妹の名前をなんで知ってる」
「だって妹だもん。そのニットの帽子ずっと気になってて。お兄ちゃんでしょ?西門寺なんて苗字そうないよ!」
「でも、俺の妹は君のような魅力的な子ではない」
「魅力的ってお兄ちゃん照れるじゃん」
智子は西門寺に近づいていく。
「ちょっと大丈夫なの?ほんとに」
洋一が心配そうに声をかける。
「ええ、兄ですから。あっ!洋一さんでしたっけ?お話しできてよかったです。好きでした。一目惚れってやつです」
「はあ?」
「あっ!でも、今は好きじゃないですから大丈夫です。他に好きな人ができたから」
智子はそう言って孝之を見た。
「お前じゃねぇから」
「そんな言い方・・・救世主だぞ」
智子は孝之を無視するように西門寺に向かっていく。目の前に立つとこう言った。
「お兄ちゃん久しぶりだね」
「君は・・・」
「忘れちゃった?色々いじっちゃったから。少し痩せたし」
「お前はあのドブスデブ恵美なのか?あの、ドブスデブ恵美」
「もう昔の呼び方やめてよー。トラウマなんだから」
西門寺はじっと智子を見つめた。そして確信するように頷いた。
「あごの下のホクロはとらなかったみたいだな」
西門寺も同じところにあるホクロを見せた。
「お兄ちゃん」
「恵美・・・」




