問題
洋一が玄関を開けると和馬の声が聞こえた。
「おい!洋一か?助けてくれー!」
洋一が慌てた様子で声のするリビングに向かう。
ロープで西門寺をしっかり固定している山村もつられるように足早に後を追う。
ギャルの響子だけは玄関ごしで様子を伺っていた。
「和馬!どうした」
そう言ってリビングにやってきた洋一の目に飛び込んできたのは、床に倒れている桜子と美弥、智子。包丁を突きつけられている和馬の姿だった。
「こっちへ来るなよ」
向井は不適な笑みで洋一を見つめる。
「運がいいんだか、悪いんだか。せっかく逃げられたチャンスを逃すとは運のない奴だ。あ!これはシャレじゃないぞ。『逃げる』と『逃す』って」
「シャレにもなってねぇよ。クソ野郎」
和馬が自分に向けられた包丁を睨みつけながら言った。
「・・・ちょっと。状況がのみこめないんだけど。和馬、どういうこと?」
「説明してる暇ない。このクソ野郎をどうにかしてくれ」
和馬の声は徐々にかすれていく。
片方は包丁、もう片方は腕で首をしめられているのだ。
洋一は西門寺に視線を送る。
「やべー奴って、このことだったのか・・・」
西門寺は静かに頷く。
「あの・・・どうしましょう?」
山村を見てとっさに助けを求める洋一。山村はロープをハンサムのマイケルに渡して頭をに手を置いた。どうすべきか思考しているのだ。
「ね?パパあたしの言った通り。やばいって言ったじゃん」
「・・・響子、ずいぶん落ち着いてるな」
「ああ。あたしこういうの慣れてるし。オヤジに包丁なんかは突きつけられたことあるからさ」
「は?」
「あっ・・・例えばの話よ。あっ、いや、例えばっていうか想像上の話ね。夢の中の話ってこと・・・」
響子は動揺した様子で視線を外した。
「警察電話しよーと・・・」
「あ、ああ、それがいい」
山村は頷きながら和馬と向井を見つめた。
「で、どういう状況なんだ?」
洋一に問いかける。
「・・・俺もわからん。おそらく西門寺のが詳しいはずだ。なあ?」
「俺は知らん」
「知らんことないだろ。あいつはやべー奴って言ってたじゃないか」
「交換条件だ」
「はあ?」
「この状況が知りたければ俺を解放しろ」
「そんなことできるわけねぇだろ!」
「じゃあ話さん」
洋一は山村と顔を合わせた。どうするか迷っていたのだ。
「あそこで倒れているのはここの住民かい?」
山村にロープで縛られている西門寺の後ろで男の声がする。
それがマイケルの第一声だった。




