その先の未来
「君は運命の人だ。俺が三十五年もの間、女と関わらなかったのは君と出会うためだったんだ。わかるかい?この俺の気持ちが。ずっと君に会いたかったんだ。探していたんだよ。ずっとね。君の家もわかった。俺は世界一運の良い人間だ」
西門寺はゆっくり智子に近づいていく。
「・・・いや、助けて、孝之さん・・・助けて」
智子の声は徐々にかすれていく。
「そ、そうは言われましても・・・包丁持ってるし・・・あれ通販で買っためちゃめちゃ切れ味バツグンのやつだから刺されたらひとたまりもないぞ・・・」
孝之は小刻みに震えながら和馬と洋一を見つめた。
和馬と洋一もどうすることもできず、ただこの状況を見つめていた。
「なあ、西門寺。落ち着けよ。は、話し会おう。彼女の気持ちも聞かないと・・・」
「彼女の気持ち?そんなものはない!ただ、俺が彼女を幸せにする。それだけだ」
「そんな自分勝手な言い分はないだろう!彼女にも好きな人がいるかもしれない」
和馬の問いに智子は一瞬、孝之を見た。
洋一のひざにしがみついて震えている孝之に幻滅していく自分の気持ちを感じていた。
その横で必死にストーカーを説得している和馬を見て智子の胸は高鳴った。
「なあ、西門寺。そんなぶっそうなもの捨てて話し合おう。俺も話聞くから」
「うるせぇ!俺は彼女と結婚する。三十五年もの間、この瞬間のために生きてきたんだ。邪魔するな!」
西門寺は和馬の説得にも応じず、智子の目の前にやってきた。
「近くで見ると思ったより可愛いなぁ」
唇を舐めながら近づく西門寺。
恐怖のあまり声も出ない智子。
西門寺が智子の体に触れようとした瞬間、トンッと包丁の落ちる音が聞こえた。
「あ?」
西門寺の視線の先に人影が映った。
不敵な笑みを浮かべながら向井が落ちた包丁をつかむ。
「俺の存在感の無さが、存在感なのよ。お嬢さん。お逃げなさい」
「・・・あ、ありがとう」
「向井」
「あいつ、やるな」
和馬と洋一は誇らしそうに向井を見つめた。
智子は慌てて和馬たちの元に駆け寄る。部屋の隅に隠れていた桜子と美弥も安堵の表情を見せた。
「きさま!そくも俺の邪魔を!」
「なに言ってんの。あんた、やり方がダサいんだよ」
「なんだと!」
「効率も悪い。リスクが高いわりにリターンが少ない。女なんて世の中にたくさんいるんだよ」
「俺はあの子じゃなきゃダメなんだ!」
「もっとその先を見ないと」
向井の表情が険しくなった。
「西門寺、扉閉めてきて」
向井が西門寺に指示する。
「俺になに指図してん」
西門寺がそう言いかけた途端、向井は包丁を突きつけた。
「怖いでしょ。君がやろうとしたのはこういうこと」
「お前、なにを」
「ガッポリ稼いでやる」
向井はその場にいた全員を不敵に見つめた。




