闇
1.「なんだよ」「ここで何をしてるんだい?」「はあ?関係ねえだろ」「確かにそうだが、そうでもないかしれない」「何言ってんだ、じじい」「なぜ私をじじいと呼ぶ?」「じじいじゃねーのか?」「じじいとはお爺さんのことだろ?」「そうだけど、質問に質問で返すなよ。うぜーな」
2.「逃げ足の速い奴だな」「逃げてるんじゃなくて追いかけてるのよ」「あぁ、そうだった。追いかけてる奴を追いかけてるんだよな」「私達もストーカーみたいじゃない?」「いや、これは正義の為にやっている。一人の女性を救えるかもしれない」「そうよね。でもバレないようにしないと」
3.「うぜーとは?」「いや、だからなんていうか、ほっといてくれよってこと」「それはあまりにも無関心ではないか。愛がない」「愛って・・・」「この国には愛が足りていない」「なにいってんだ。いいからもうほっといてくれ。俺は忙しいんだ」「そんな風には見えなかったがね」
4.「あの!」「なにかね?」「さっきから見てたんですけど。お二人はお知り合いですか?」「知り合いなわけねぇーだろ。こんなじじい」「そんな失礼な言い方はよくない。お年寄りはうやまわないと」「その通りじゃ。ところで君は?」「あ、いえ。さっきちょろっと見かけて、なんかいいなあーと思って」
5.まだついてくる。一体、何?怖い。誰か助けて。あれ?ここどこだろう?急いで歩いてきたから道に迷っちゃったじゃん。どうしよう・・・。とにかく何処かに隠れなきゃ。住宅街だからお店もないし・・・。あー、もうどうしたらいいの。あいつまだ追いかけてくるよ。どうしょう。
6.何故そこまでして逃げる。俺は何もしない。ただ気持ちを伝えたいだけだ。可愛いですね。趣味はなんですか。お名前聞いてもいいですか。どこに住んでるんですか。好きなペットはなんですか。好きな映画はなんですか。好きな音楽はなんですか。もし、よかったら付き合ってもらえませんか。それだけだ。
7.「パパ!距離が縮まってきたし、そろろろ声かけたら?」「そ、そうだな。なんて声かければいいんだ・・・」「市役所勤めなんだからこういうの慣れてないの?公務員なんだから」「いや、警察官じゃなんだ。俺はわからないよ」「頼りない」「よ、よし、じゃあ・・・任せとけ」
8.「あ、あの・・・あとは大丈夫ですので」「さっきの二人変でしたね。その後、また別の二人がついて行ってる」「ま、まあ・・・私には関係ないことですから」「ついて行ってみませんか?」「え?」「絶対あの人たち怪しいですよ」「ママー帰ろう」「そ、そうよね。すみませんが私達は失礼します」
9.「あの!ご自宅まで送って行きますよ。私もそちらの方向なので」「ママ、この人こわい」「そ、そうよね。あの、お気遣いは嬉しいのですが他によるところがありますので・・・」「どこに行かれるんですか?」「それは言う必要あるんですか?」「いいえ、言いたくなければ結構です」
10.玄関を開ける音が聞こえた。母親と妹が買い物から帰ってきたのか?まあいい。どうせまたチャーハンと卵スープだろ。ワンパターンなんだよな。いつも。あ!そうだ。毎日チャーハンとかけまして、はい、かけまして、夏の終わりととく。その心はあきが来るでしょう・・・。つまんねー。
11.空から金が降ってこないかなー。なんてあるわけないよな。うん?あいつ何見てんだ?女?それを追いかけてる奴がいる。奴から逃げてるのか?うん?そいつらを追いかけてる別の奴らがいる。女子高生とサラリーマン?援助交際か?女はその手があるからな。いいよなー女は。
12.しばらく後をつけてみよう。何かのトラブルに巻き込まれているのかもしれない。好奇心は恐怖心に勝ると誰かが言っていた。私は得体のしれない恐怖心を感じていたが、それ以上に好奇心が勝っていた。女の子は何をそんなに慌てて逃げているのか?それが妙に気になった。