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睡蓮  作者:
38/50

正体

老師はゆっくり後ろに下がっていく。


「あとは任せた」


「いやいや、じいさん困るって」


「和馬、とにかく話をすすめないと・・・」


離れていく老師を見て孝之は不思議そうな顔をした。空手の勧誘ではないのか。


それを誤魔化すように和馬と洋一が間に入る。


「あ!そうだ。空手の話はまた今度にして他にご兄弟はおられますか?」


「兄弟?妹しか居ないけど」

 

「妹しかいない?さっき大学生くらいの女の人、居ましたよね?」


洋一のその言葉に孝之の目が変わった。


「やっぱりあんたらあの子と何かあるんだな」  


「え?」


「あの子には指一本触れさせない」


その言葉に和馬と洋一は、この男が女の子を拉致していると確信した。


「女の子とどんな関係ですか?」


和馬が問いただす。


「それをあなた方に言う必要あるんですか」


「言いたくない事情があんのかよ!」


おもわず和馬が声を荒げる。


「脅しには屈しない。なぜなら私は警察官だからだ」


「警察?」


和馬は洋一と目を合わせた。それならちょうど良かった。むしろ二人は安心した。

しかし、本当にこの男は警察官だろうかという疑念が湧いた。明らかにそんなオーラはない。


「警察手帳持ってます?」


和馬の質問に孝之は少したじろいだ。


「け、警察手帳は今ない・・・あとで写メ送る」


「ねえ?孝之。まだ話してるの?」


そこへ母親の桜子が玄関にやってきた。


「あら、どうも初めまして。どちらさん?」


「・・・あっ、空手の勧誘です」


洋一は思わずそう言ってしまった。


「母さん!騙されたらだめだ。こいつら智ちゃんを狙ってる。


「どういうこと?」


「最初は妹をおとりに使っていたが自我がないとわかると今度は智ちゃんだ。あれだ、智ちゃんが言ってたストーカーだ!」


「あっ、あの子が言ってた」


「警察に連絡して!」


「わ、わかったわ!」


「ち、ちょっと待って!」


和馬と洋一は慌てて玄関を登っていった。


「ストーカーって!俺たちはそのストーカーから彼女を守りにきたんだ!ストーカーはお前だろ!」


「何言ってんだ!ストーカーにストーカー呼ばわりされる筋合いはない!」


「いや!だから俺たちは違うんだって!」


「部屋に勝手に上がるな!ストーカーども!あっ!智ちゃん逃げてー!」


「えっ」


「こいつらストーカーだ!家がばれた!」


「だから俺たちは違うって!」


一同がリビングに現れると智子は怯えた目で孝之を見つめた。その後ろに映るニット帽の男を見て大きく叫んだ。


「きゃーーー!」





 

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