違和感
ニット帽が口を開いた。
「ストーカーにあっていた女の子は小学生くらいの女の子だったってことか?」
「いや、それは違う。大学生くらいの子だ。ちょうど洋一と同じ歳くらいだ」
和馬は洋一を見つめた。洋一は首を傾げる。
「でも、あいつ妹って言ってたよな。最初に居留守つかってた時にいた子は大学生くらいだったけど」
「小学生ではないよな」
「そうそう。なのになんであいつ、その子をキッズファイターっていうんだよ。大人じゃんか」
一同が困惑していると、まるでバカを見るような目で向井が口を出した。
「みんな何か勘違いしてない?」
「どういうことじゃ」
老師が首を傾げた。
「いや、だからね。老師が最初に『娘がいるだろ?』って聞いたじゃん。それで奴は『いる』と答えた。キッズファイターにするつもりの妹だ。つまり、奴は自分の『妹』と老師の『娘』を同一人物だと、思ってる」
「俺たちもそう思ってるけど」
「そこが罠なんだよ。奴のリアクションからして嘘をついてるようには見えない。おそらく本当に妹がいるんだろう。おそらく小学生くらいの女の子だ。でも、その子は俺たちが探しているストーカーにあった子ではない」
「どういうこと?確かにこの家にストーカー被害にあった女の子は居たぞ」
「それが勘違いの元なんだよ。つまり、奴の妹と、ストーカー被害にあった女子大生は同時にこの家にいるということだ」
「ややこしいな」
「老師の『娘が居るだろう』というニュアンスに対して奴は素直に娘とは捉えず、『この家の娘』というフィルターを通した。奴はまだ若そうだから自分の娘ではなく、この家の娘と捉えたのはそう不思議ではない。だから奴は自分の妹を老師の言う娘に変換してるわけだ。だから今から来るのは小学生の妹だ」
「てっ、ことは俺たちが探してる、ストーカーされていた大学生はもうこの家には居ないってことか?」
「それはわからない。もし、居ないとしたら、奴はストーカーでもないし、拉致していたわけでもない。どういう関係かはわからないが、居ないのであれば無事に逃げられたのだろう」
向井の解説により一同は納得したような、してないような複雑な顔になった。
「悪い悪い。おまたせしました。妹です」
「美弥です」
一同は言葉を失った。
「・・・美弥ちゃん」
「あはは。美弥ちゃんね」
「空手は興味あるかな」
「ない」
美弥はくまのぬいぐるみを片手に孝之にしがみついた。
「お前、人形の腕を引きちぎって遊んでただろ。空手に向いてるって」
「いやだー」
「すみません。わがままな妹で。この家の一人娘でして」




