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睡蓮  作者:
36/50

誤解

「あの!」


第一声は和馬だった。


「突然、お邪魔してすみません・・・」


ぎょうぎょうしく和馬はそう言った。孝之は警戒した顔で和馬を見つめる。


「まずはご用件をお話しください」


すっかり警察官の口調だ。


「あ、あの・・・知り合いがこの家に入っていくのを見まして」


「お知り合いですか。どういった」


凛とした対応をする孝之に和馬はたじろいだ。たまらず洋一と目を合わす。

洋一も不安な様子で首を傾げた。


「御用がないのでしたら、このへんで」


孝之は勝ち誇ったような目で扉に手を当てる。


「ちょっとまてい!」


扉を閉めようとする孝之の耳に老師の声がとびこんだ。


「話があると言っておろう!」


一同がびっくりした顔で老師を見つめている。

孝之だけが冷静な顔で老師を見つめる。想定内だった。


「おじいさん。なにかご用ですか」


「話があるんじゃ」


「ですから、ご用件をおっしゃってください」


和馬と洋一の影に隠れていた老師がヒョンッと最前列に顔を出した。

孝之はいよいよ直接対決だと息をのんだ。


「娘があるであろう」


老師のその言葉に孝之は黙った。


「どうなんじゃ」


老師が詰め寄る。

想定外の質問に孝之は動揺した。宗教の勧誘になぜ妹が関与しているのか不明だった。


「妹となんの関係がある」


「妹?」


一同は首を傾げた。


「なあ?和馬。ストーカーされていた女の子って妹だったのかな?」


「そうだとしたら、俺たちはとんだ勘違いをしてたかもしれない。あいつはストーカーじゃなく兄貴だったってことだ」


「なんだよ。マジかよ。ストーカーから逃げ切って、ただ帰宅しただけじゃねぇか」


「まだわかんないだろ。嘘ついてるかもしれないし」


和馬と洋一が小声で話していた。その様子を見て老師が続けた。


「と、とりあえず、娘さんの姿が見たいのじゃが」


「そんな権利あんたにないだろ」


「なに、実はわしは空手の師範での。護身用に若い女の子に空手を教えておるのじゃ。最近は治安も悪くなってきとるでの」


「空手?宗教の勧誘じゃないのか?」


「なんじゃ、それは」


「あっ!いや、俺はてっきり宗教の勧誘だと思ってたからさ。てっ、ことはさ、後ろにいるのはみんな生徒さん?」


「まあ、そんかとこじゃ」


「あ!ハハっ。なんだ。なら最初から言ってくださいよ。空手なら俺も好きだし。妹にはちょっと早い気がするけど、今はキッズファイターも多いし。興味あるかも。聞いてみるよ。ちょっと待ってて!」


「キッズファイター?」


老師は和馬たちを見た。


「そんなに若かったのか?」


「・・・いや、大学生くらいだった思う」


「どういうことじゃ」


和馬と洋一は首を傾げた。






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