真実
「あいつらまだいるかな?」
「もういないんじゃない?」
「孝之、いつまでこうしてるの?重いんだけど」
「あ、ああ、悪い・・・。母親に乗っかっていた」
「あの・・・。私は大丈夫ですから、もうそろそろ帰らないと」
「いや、ここで帰すわけにはいかない。なんかあったらこの家の責任になるから」
「孝之、ちょっと様子見てこれば?」
「ママーもうかくれんぼあきたー」
「そうよね?みーちゃん。ほら孝之見に行ってよ」
「ったく仕方ねーな。この家はわがまま人間ばかりだ」
孝之は渋々玄関に向かう。
「ごめんなさいね。変な子で」
「・・・あっ、いいえ。助けてもらってますので」
「なにか予定があるの?」
「あ、いいえ。少し見たいテレビがあっただけですから」
「あら、そう。なら良かった。そんなことくらいで早く帰りたいなんてよく言えたわね。私の若い頃なんてそんなこと思ってても恥ずかしくて言えなかったわよ。やっぱり今の子は少し変わってるわね」
「は、はあ・・・」
智子は内心動揺していた。
目の前の主婦に対しての好感度がどんどん下がっていくからだ。
それは孝之に対しても同じだった。この家の人間が変わっているのか、はたまた自分が変わっているのか、そのはざまで葛藤していた。
「あいつら、居ないみたいだ」
リビングに戻ってきた孝之は智子達を机の下から出るように指示した。
「こんな狭いところに追いこまわれて・・・。智子ちゃん帰る支度してね」
「・・・あ、はい。すみません」
「じゃ、行こか」
孝之は智子の手を掴んだ。
「え?」
慌てて手を離す智子。
「あ、すまない。嫌だった?」
「あ、嫌っていうか・・・。急だったからびっくりして」
「そっか」
智子の気持ちはなぜか急上昇した。
「なに?」
「あっ・・・いや、別に」
内心、高鳴る自分の鼓動が信じられなかった。
こんな人間に好意を持つなどありえなかった。しかし、今の智子にとって手を握られた瞬間のドキドキ感は言いようもない幸福感だった。
「なに?行かないの?」
「あっ・・・行きます」
その言葉が自分でも恥ずかしかった。行きます、という言葉がアニメオタクの妄想女をさらに興奮させた。
「イキますって私・・・」
妄想女の妄想は止まらない。
「気をつけてねー」
桜子が優しく手を振った瞬間、またインターホンが鳴った。




