助っ人
ニット帽は苛立ちをつのらせた。
「お前らみたいな奴らに付き合ってる暇ねぇんだよ。どけ」
「こっちのセリフだっつーの!」
「じじい、どけ」
老師の横を通り過ぎるニット帽。
「おぬし」
立ち止まるニット帽。
「生き物が好きなんじゃな」
「何言ってやがる」
「ペットにでも餌をやる時間か。夕飯時じゃ」
「何が言いたい」
ニット帽が老師を睨みつける。それをみた洋一が慌てて駆け寄る。
「老師!こんな奴に関わったらろくなことになりませんよ!さっさとあの家に行きましょう」
「わしはな、どうもこの青年が悪い人間には見えんのじゃ」
「何言ってるんですか!老師も聞いてたでしょ?あの睨み方、言葉遣い、絶対悪い奴だって。なあ?和馬」
「俺はよくわかんねえ」
「お前は人を見る目ないからな。老師!あいつは悪い奴だから、バカにかまってないでさっさと家に行きましょう!」
洋一の言葉に穏やかだった老師の表情が曇った。
「お主は若いのう」
「どういうことですか?」
「お主は今、何度も人を傷つけた」
洋一は老師の言葉に息を飲んだ。何かを考えるように天を見る。
「・・・えーと」
「『こんな奴』『ろくなことにならない』『絶対悪い奴』『バカ』わしが記憶しとるだけでそれだけの暴言を吐いておったな」
「・・・それは」
「かたや、帽子の青年は、『お前らみたいな奴ら』の一言くらいじゃ。おぬしの方がよほど言葉遣いが悪いと思うぞ」
老師の言葉に何も言い返せない洋一。ニット帽はこの光景を不思議そうに見つめていた。
「愛とはなんじゃ?」
「・・・相手を想う心です」
「では、これからどうする?」
洋一は和馬をちらっと見た後、ゆっくりニット帽に近づいて行った。
ニット帽は不機嫌そうに洋一を睨みつける。
「・・・あの、さっきは言い過ぎた。友達傷つけられそうで、つい」
「つい、なんだ?」
「・・・ごめん。暴言吐いて、あんたを傷つけて申し訳なかった」
洋一の言葉を聞いて老師は満足そうに微笑んだ。
「お前も謝れるんだな」
和馬が洋一の肩を優しく叩いた。
「お前より大人だからな」
「よく言うぜ。暴言野郎」
和馬は洋一は肩を組み楽しそうに微笑んだ。
「お前は、初めて笑ったな」
「は?そんなんじゃねぇし・・・」
「恥ずかしがっちゃって」
洋一と和馬はお互い顔を合わせた。すると和馬はニット帽に視線をうつした。
「なんか、こいつが傷つけたみたいで悪かったな。俺からも謝る。すまなかった。許してくれ」
ニット帽は相変わらず不機嫌そうな顔をしている。というよりも不思議そうな顔に近い。
「俺は別に傷ついてないぞ」




