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睡蓮  作者:
31/50

助っ人

ニット帽は苛立ちをつのらせた。


「お前らみたいな奴らに付き合ってる暇ねぇんだよ。どけ」


「こっちのセリフだっつーの!」


「じじい、どけ」


老師の横を通り過ぎるニット帽。


「おぬし」


立ち止まるニット帽。


「生き物が好きなんじゃな」


「何言ってやがる」


「ペットにでも餌をやる時間か。夕飯時じゃ」


「何が言いたい」


ニット帽が老師を睨みつける。それをみた洋一が慌てて駆け寄る。


「老師!こんな奴に関わったらろくなことになりませんよ!さっさとあの家に行きましょう」


「わしはな、どうもこの青年が悪い人間には見えんのじゃ」


「何言ってるんですか!老師も聞いてたでしょ?あの睨み方、言葉遣い、絶対悪い奴だって。なあ?和馬」


「俺はよくわかんねえ」


「お前は人を見る目ないからな。老師!あいつは悪い奴だから、バカにかまってないでさっさと家に行きましょう!」


洋一の言葉に穏やかだった老師の表情が曇った。


「お主は若いのう」


「どういうことですか?」


「お主は今、何度も人を傷つけた」


洋一は老師の言葉に息を飲んだ。何かを考えるように天を見る。


「・・・えーと」


「『こんな奴』『ろくなことにならない』『絶対悪い奴』『バカ』わしが記憶しとるだけでそれだけの暴言を吐いておったな」


「・・・それは」


「かたや、帽子の青年は、『お前らみたいな奴ら』の一言くらいじゃ。おぬしの方がよほど言葉遣いが悪いと思うぞ」


老師の言葉に何も言い返せない洋一。ニット帽はこの光景を不思議そうに見つめていた。


「愛とはなんじゃ?」


「・・・相手を想う心です」 

 

「では、これからどうする?」


洋一は和馬をちらっと見た後、ゆっくりニット帽に近づいて行った。

ニット帽は不機嫌そうに洋一を睨みつける。


「・・・あの、さっきは言い過ぎた。友達傷つけられそうで、つい」


「つい、なんだ?」


「・・・ごめん。暴言吐いて、あんたを傷つけて申し訳なかった」


洋一の言葉を聞いて老師は満足そうに微笑んだ。


「お前も謝れるんだな」


和馬が洋一の肩を優しく叩いた。


「お前より大人だからな」


「よく言うぜ。暴言野郎」


和馬は洋一は肩を組み楽しそうに微笑んだ。


「お前は、初めて笑ったな」


「は?そんなんじゃねぇし・・・」


「恥ずかしがっちゃって」


洋一と和馬はお互い顔を合わせた。すると和馬はニット帽に視線をうつした。


「なんか、こいつが傷つけたみたいで悪かったな。俺からも謝る。すまなかった。許してくれ」


ニット帽は相変わらず不機嫌そうな顔をしている。というよりも不思議そうな顔に近い。


「俺は別に傷ついてないぞ」






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