桜子の話
私の話を聞いてください。
私は世間ではいう普通の主婦。
週三日のスーパーのレジ打ち。
旦那は食品メーカーに勤める営業マン。
子供は息子と娘がいる。
四人家族だ。
特に生活面での不自由はない。
大学生の息子は自由気ままな生き方をしているし、小学生の娘はまだまだ甘えたい年頃だが、最近はませている。
これも子供の成長だと嬉しく思う。
娘がテレビを見てアイドルに憧れるように、私も若い頃はアイドルに憧れた。
芸能人と付き合ったり、帽子とマスクをしないと街を歩けないような人気者に憧れた。
スカウトされようと原宿を右往左往したが、かすりもしなかった。
ならばと芸能プロダクションに入ろうと履歴書を送るも落選ばかり。
特技を身につけようと歌とダンスのスクールに通うため、お金を貯めた。
最初のバイトから何十年経つのだろう。
それが今のスーパーだ。
そこで彼と出会い、恋に落ちた。
子供ができた。
夢は捨てた。
さらにお金が必要になった。
現実的なお金が。
キャバクラが効率よく稼げると聞いて、夜はキャバクラで働き始めた。
アイドルを目指そうと奮起していた時とは比べものにならないほど人気がでた。
私には色気があるらしい。
わかる人にはわかるという色気。
よくわからない。
その中の一人がかなり私に入れ込んだ。
毎日通ってくれてシャンパンをバンバン入れてくれる俗に言う太客だ。
稼げた。
生活は楽になった。
だけど代償も払うことになった。
身体を求められた。
彼は独身、私は既婚者だった。
リスクがあった。
それでも家族のためには仕方なかった。
夫よ。
すまない。
何度か交わった。
いつしか彼は居なくなった。
息子も大きくなった。
娘もそこまで手がかからない。
キャバクラを辞めて五年がたった。
キャバクラ時代の太客とはもう繋がっていない。
ふと目の前に派手な女子高生がいる。
彼女はまだまだこれからだ。
たくさん恋をして、傷ついて、大人になっていくんだろう。
それは隣にいる娘にもいえることだ。
彼女は将来どうなるんだろう。
アイドルになったりして。
それはそれでいい。
でも、時々むなしくなる。
私の人生はこれで終わりなのだろうか。
俗に言う幸せな家庭。
確かにそうだけど、本当にこれでいいのだろうか。
また、恋がしたいのか。




