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睡蓮  作者:
20/50

老師の話

わしの話をしたい。


わしは山奥で空手の師範をしておった。

なぜ山奥で空手を教えるかって?

やぼなことを聞くでないわ。

そこに山があるからじゃ。

山は厳しい。

自然は厳しい。

その世界を若い奴らに教えなければならん。

教えたとてなんになるわけでもないが。

平和な世の中だ。

昔と比べて争い事は減った。

肩がぶつかっただけでケンカが始まる時代は終わったようじゃ。

武道は衰退し始めた。

エンターテイメントに成り下がった。

真剣勝負。

生きるか死ぬか。

そんな世界ではなくなった。

楽しいか。

笑えるか。

その価値観を否定するつもりはない。

ただ、ちと平和ボケしすぎているのではないか。

もう少し緊張感がほしい。

だからわしは下界に降りてきた。

山にだってTVくらいあるさ。

今の時代をわからぬ年寄りだとおもうでない。

ただ、生身の状態が知りたい。

ライブ感を味わいたい。

だからわしは下界に降りようと思った。

森のマイナスイオンで肌ツヤはすこぶる良いわ。

おなごにモテモテロッケンローかもしれんの。

この街はゴミゴミしておる。

みんなが自分のことで精一杯に見えるわ。

さっそく気性の荒そうな若者が真面目そうな紳士に肩をぶつけおったわい。

ケンカが始まるかの?

いや、そうではない。

何事もないように過ぎ去ったわい。

紳士が我慢したのかの。

顔は怒りで満ちているが。

この世界は平和なようでどこか寂しいのう。

明らかにあの気性の荒そうな若者が悪いのだが、ああいう若者は実は優しい人間が多い。

わしが育て上げた弟子にもああいう若者がほとんどじゃ。

はぐれもの。

ふりょうひん。

いや、そうではない。

本当は、はぐれものにされた。

ふりょうひんにされた。

可哀想な被害者なのだ。

本当はそのことを年長者が教えてやらねばならないのだが、この世の中はみんな自分のことで精一杯に見える。

それはなぜじゃろうか。

愛を再確認する時代にきたようじゃ。

肩をぶつけた二人。

戦争をしかけた青年。

戦争を必死にとめた紳士。

ここまでは紳士が徳を積んだように見える。

しかし、どうも紳士の怒りの表情に違和感を覚える。

偽りの正義ならば考えものだ。

悪しき惰性の先に愛は存在しないのじゃ。

人を想ってこその愛じゃ。





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