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睡蓮  作者:
19/50

山村の話

私の話を聞いてほしい。


私は市役所に勤めている公務員だ。

市民のために毎日汗水垂らして働いている。

大学を出て安定した仕事に就こうと思った。

父親も母親も市役所勤めの公務員だったから、おのずとその道しかないと思った。

そんな仕事楽しいのか?

そんな声もあったが気にしない。

安定した生活。

安定した老後。

それがよりよく生きる人生だと教わった。

冒険なんてしない。

冒険というものは捨て身の覚悟が必要だ。

つまりは失うものがない人間の唯一残された逃げ道とでも言っておこう。

私にはそんなギャンブル的な生き方はできない。

地に足つけて石橋を叩いて渡る。

それがよりよく生きる人生ではないか。

娘にも恵まれた。

三十歳でマイホームも購入した。

今の生活に不満はない。

就職時こそ理想とのギャップに苦労はしたものの、二十年以上勤めて、今では市民の為という正義感より波風を立たせないという保守的な考え方を受け入れている。

いかに目立たないかが重要だ。

高校生になった娘にもいずれは大学に入って公務員になってもらいたい。

今は容姿も派手だが私もそこまで硬い男ではない。

一生に一度の青春を謳歌してもらいたいとも思っている。

だから今はうるさく言うつもりはないが、やがて正しい道に修正してやるつもりだ。

大事なのは環境。

ろくでもない友人。

いや、まだ友人ならいい。

ろくでもない男に引っかかるのだけは勘弁してほしい。

ほら、今、目の前を歩いている不良にすらなりきれない中途半端な男のような。

彼は高校生かな?

まあ、どうでもいい。

娘と関わりさえしなければ興味はない。

やばい。

目が合いそうだ。

無視して過ぎ去ろう。

痛い。

肩をぶつけられた。

謝りもしない。

やはりこういう人間がこの社会をだめにするんだ。

いつの時代もこういう連中が社会をだめにする。

親は何も言わないのだろうか。

私だったら腐った根性を叩き直してやりたいところだ。

まあ、そんな人間と関わること自体無駄なのだが。

私もそれほど暇じゃない。

さっさと家に帰ろう。

しかし世の中というものはつくづく不平等だ。

私のような真面目にコツコツやってきた人間がああいう連中と同じ土俵にいなければならない。

たまにああいう連中に頭を下げないといけないと思うとつくづく不平等な世の中に思えてならない。

若い時はそんな葛藤と戦っていたが今はなんとも思わないように努力している。

仕事だ。

割り切れ。

あと二十年もしたら奴らは消えているさ。







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