エッセイ10
辺りは真っ暗になっていた。
「先生まだいるかな?」
「ここがどこかもわかんねえよ」
和馬と洋一は顔を見合わせた。
一体自分たちは何をやっているのだろう。
ストーカーに追いかけられていた女の子を助けるため和馬は足を進めた。そのサポートに洋一も同行した。そもそもそう誘導したのは洋一が先生と呼ぶ老人だろう。
その老人に結果の報告をするため戻ってきたのに、この場所がどこなのかもわからない。
「光のさすほうに道は開かれる」
後ろから声がした。
振り返った洋一はその声の主を凝視して嬉しそうに微笑んだ。
「先生!」
「だいぶ待たされたの」
「どうしてここに?」
「心配で後をつけとったんじゃ」
和馬と洋一は顔を見合わせ軽く微笑んだ。
「そうそう。ストーカーにあっていた女子高生なんですが、実は誤解だったみたいなんです。なんでも女子高生はストーカーにあっている子を追いかけていたみたいで、ストーカーしてた眼鏡男はその理由を聞きたくて女子高生をおいかけていたみたいです」
「お前、説明下手か!」
和馬は思わず首を突っ込んだ。
「つまり、女子高生はストーカーされてなかった。ただ」
「なんじゃ?」
「もしかしたら本当にストーカーされていた奴がいたかもしれない」
和馬は低いトーンで言いながら頭を掻いた。
「お主なら今の状況どうする?」
老人のいたずらっぽい顔に和馬は洋一に視線を移すとため息を吐いた。洋一もいたずらな顔をした。
「・・・もどるか」
当然ストーカーされていた子の安否が気になる。
「先生も来るだろ?」
「わしは気分じゃ」
「自由だな。相変わらず。いいねえ。そういう生き方好きだ」
洋一は嬉しそうに和馬と老人に挟まれながら歩き出した。
「ところでさっきからずっとこちらを見ている男は誰じゃ?お主たちの知り合いか?」
和馬と洋一は顔を見合わせた。他に誰が居るというのだ。
「後ろでじっと、わしらを見ておるだろ。ほれニットの帽子をかぶっておる」
「ニット帽?」
和馬と洋一は同時にそう言った。
振り返ると見覚えのないニット帽の男が微かな街灯に照らされこちらをじっとこちらを見つめていた。