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睡蓮  作者:
12/50

エッセイ5

「こりゃひどい。あいつに文句言わなきゃな」


「いいよ別に」


「よくないよ。立派な傷害だ」


洋一はめんどくさそうに眉間にしわをよせる和馬の腕をとった。先ほどの場所に引き返すように歩き始める。


「お前の方が力強いよ。新しいあざつきそう・・・」


遠めでも一件の家を見つめている不自然な集団が見える。ギャルの女子高生だけがこの異様な光景に気づいているのか、その場から離れようとしているがスーツ姿の父親は微動だにしない。


「パパなんなの、この家。もう帰ろうよ」


「いや、この家にストーカーにあっている女の子がいるはずだ」


「なんでわかるの?」


「実は彼女がこの家に入っていくのを見たんだ」


スーツ姿の男はその家の玄関に足を進めた。後を追うようにハンサム男、眼鏡着物男と続いていく。


「ちょっとみんな・・・」


「ここはきっと彼女の家だ」


ハンサム男がつぶやく。


「は?なぜわかる?」


「ごま油を買っている人をみてね」


「彼女は買い物袋なんて持っていなかったぞ」


「何を言っている。可愛いお子さんと一緒に買い物に行っていたさ」


「子供?どうみたって大学生くらいの女の子だ。子供なんていなかった。誰と間違えてる」


「君こそ誰と間違えているんだ?」


「あのちょっといいですか・・・」


「黙れ!眼鏡」


眼鏡着物男はスーツ姿の男とハンサム男に一喝された。


「申し訳ない。少し言い方がきつかったね。謝るよ。すまなかった」


「いえ、別にわたしは・・・」


「君も謝ったらどうだ?眼鏡の彼は恐喝の被害者になりかけた。憐れむべきだ」


「こいつのどこがだ。娘をストーカーしてた男だぞ」


「だからそれは誤解ですって・・・」


スーツ姿の男は話の辻褄を合せるのに戸惑っていた。


「あ、ああ。そうだった。彼は確かに何も悪くない。しかし、ストーカーにあっていた女の子は確かにこの家に入っていった」


「ストーカーにあっていた女の子?ああ、もしかしてニット帽に追いかけられていた子か」


「そうだ。君も見たのか?」


「ああ。彼女の卵を踏みつぶした奴だからね。忘れるわけない。そうか。彼女はこの家に隠れているのか。もしかしたらニット帽も一緒に」


「それはない」


食い気味にスーツ姿の男は首を振った。


「私が見たのは彼女だけだ」


ハンサム男は頭に手を当てて考え込むように家を見つめた。


「彼女の家にその女の子が逃げ込んだ・・・と、いうことは」 


「さっきから彼女彼女って誰のこと言っているんだ」


「あっ・・・それは内緒だ。プライベートなことだからね」


「別に興味はないが」


スーツ姿の男は不愛想に振り返ると、和馬と洋一が不機嫌そうな顔でこちらに向かってくるのが見えた。


「あれ?さっきの子たちだ。どうしたんだろう」






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