エッセイ4
「この家は・・・」
ごま油を漂わせている家を全員が凝視した。ハンサムな男は和馬の腕を離しその家を見つめていた。
「律子さん・・・」
掴まれていた手を大事そうに抱えながら和馬はハンサムな男から距離をとる。
「帰ろうぜ」
和馬は洋一にそう言うと、
「あ、ああ」
とごま油の家に背を向けた。
「あの!」
女子高生が二人に声をかけた。
「あの、助けてくれてありがとう・・・」
「ああ、別にいいよ」
「人助けってなんかかっこいいじゃん」
洋一が人懐っこく笑う。
「そんなんじゃねえよ」
和馬は照れくさそうに腕を抱えながら後ろを見ていた。
「こいつ照れてます」
「そんなんじゃねぇって!行くぞ。じいさん待ってるから」
「ああ!そうだった!」
洋一は女子高生に手を振り、スーツ姿の男を見た。スーツ姿の男はごま油の家を凝視している。
「娘さん無事でよかったですね」
洋一の言葉にスーツ姿の男はふと我に返った。
「あ、ああ・・・ありがとう」
ハンサムな男もスーツ姿の男も眼鏡着物男もごま油の家を凝視している。
「和馬、あの家そんなに珍しいのかな?」
「腹減ってるだけだろ」
二人はごま油の家に背を向け歩き出した。
「ギャルのわりにはしっかりしてる子だったね」
「人を見た目で判断するな。時代遅れな奴だな」
歳のわりに意外とまともなことを言う和馬に洋一は鼻の穴を膨らませた。
「あの子に惚れちゃったのね」
「そんなんじゃねえよ」
「正直に言ったら?ねぇ、楽になるよ」
「そんなんじゃねえって言ってんだろ!」
「赤くなってんぞ」
「お前ボコすぞ!」
「例え冗談だとしても傷害で警察に突き出すぞ」
洋一の言葉に和馬はそれ以上言えずに腕を大事そうに抱えた。
「そんなに強く握られたのか?」
「たいしたことねえよ」
洋一は立ち止まって和馬の手を掴んだ。
「何すんだよ」
「ちょっとだけよー」
「気持ち悪りいこと言うな!」
洋一は和馬の袖をめくりおさえていた場所を凝視した。手のあとがくっきりわかるほど内出血している状態に洋一は目を尖らせた。